48 / 119
第14章 家族
4
しおりを挟む
恵美が男をホームで初めて発見したとき、心臓が速まった。意識した途端、彼が隣に並んでいた列を外れ自分の並ぶ列に移動してきたのを見たとき、自分の心臓が爆発するほど速まり体が心臓の鼓動で揺れるように感じたほどだった。「えっ? なぜ、こちらへ並び直したの?」と思いつつ恵美は自分に好意を寄せてくれたのかしらと勝手に都合良く思った。だから、それを知りたくて、電車内でその彼になるべく少しずつ近づいたが、まさか、胸を合わせるほどに近づいてしまったのは予想外だった。しかし、それが彼女には良かった。彼が自分の体に触れてきた。痴漢である。全身に電気が走ったように快感が走った。過去の時のような嫌悪なんて微塵も感じなかった。見知らぬ男に体を触れられて喜びを感じてしまうなんて、すごいエッチな体だったなんて恥ずかしかった。それを思い出すたび、恵美は両腕で体を愛おしく抱きしめた。「あんたも女だったんだね……」と思うともっと気持ちが良くなっていった。体をなでられる彼女は電車という空間で男に抱きしめられているかのような想像をした。体の芯が受け入れ体制をしているのが自分でも理解できた。いつになく下着が染みていることを感じた。
彼女は畑野家の近所のスーパーで夕飯の食材を買って、午後2時、畑野家を訪問した。日没まで浩志と二人で研究をしてからキッチンで肩を並べて夕食の支度をした。
「畑野くんのお父さん、きょうは早く帰れるといいね……」
恵美は浩志に勘太郎の帰宅時間をそれとなく確認するが、浩志には分からないようだった。今まで父を待つことなく自分でやれることをやってきたのだろう。浩志は夕食の用意を彼女より手際よく作っていく。恵美は東京で一人暮らしを始めてから自炊を始めたが、自分一人だと思うとスーパーの惣菜で済ますことが多かった。だから、料理の腕なんて上達する訳がなかった。その分、彼女は大学の勉強とダンスサークルの活動に精を出した。
浩志の母親は彼が2歳の時交通事故死して以来、父子だけで生きてきた。自分とは生き方が違っていることを改めて知った。そんな誠実な生き方をしてきた彼がなぜあたしに痴漢をしたのか、恵美は疑問だった。ホームでなぜあたしの後ろに並んで接近してきたのか、と思いながらも恵美はうれしかった。自分の体に触れてくれた。恵美は触れてもらうことがうれしいことが自分ではないように感じた。以前のあたしなら相手の手首をねじ上げていた。それをせずに身を任せていた。あたしはなんて淫らなエッチな女だったの、と最初の数分は自分に嫌悪したほどだったが、その感じ方も電車が進むうちに嫌悪を感じなくなりもっと触れてほしくなっていく。エッチな自分が信じられなかった。最後、彼に全身を預けてもいいような快感で一杯になりそうだった。あんな満員電車で失神していたら大変だった、と思った。
彼女は畑野家の近所のスーパーで夕飯の食材を買って、午後2時、畑野家を訪問した。日没まで浩志と二人で研究をしてからキッチンで肩を並べて夕食の支度をした。
「畑野くんのお父さん、きょうは早く帰れるといいね……」
恵美は浩志に勘太郎の帰宅時間をそれとなく確認するが、浩志には分からないようだった。今まで父を待つことなく自分でやれることをやってきたのだろう。浩志は夕食の用意を彼女より手際よく作っていく。恵美は東京で一人暮らしを始めてから自炊を始めたが、自分一人だと思うとスーパーの惣菜で済ますことが多かった。だから、料理の腕なんて上達する訳がなかった。その分、彼女は大学の勉強とダンスサークルの活動に精を出した。
浩志の母親は彼が2歳の時交通事故死して以来、父子だけで生きてきた。自分とは生き方が違っていることを改めて知った。そんな誠実な生き方をしてきた彼がなぜあたしに痴漢をしたのか、恵美は疑問だった。ホームでなぜあたしの後ろに並んで接近してきたのか、と思いながらも恵美はうれしかった。自分の体に触れてくれた。恵美は触れてもらうことがうれしいことが自分ではないように感じた。以前のあたしなら相手の手首をねじ上げていた。それをせずに身を任せていた。あたしはなんて淫らなエッチな女だったの、と最初の数分は自分に嫌悪したほどだったが、その感じ方も電車が進むうちに嫌悪を感じなくなりもっと触れてほしくなっていく。エッチな自分が信じられなかった。最後、彼に全身を預けてもいいような快感で一杯になりそうだった。あんな満員電車で失神していたら大変だった、と思った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる