幸せな報復

窓野枠

文字の大きさ
上 下
35 / 114
第11章 恵美の訪問

4

しおりを挟む
 そして、彼女の欲望は湧き上がり、それにともない未来に向かう幸せな展望がひらめいた。
 彼女は同じ幸せな顔を並べてみたらどちらがより幸せになれるか、比較したくなった。贅沢な願望だ。「両方見たら幸せ倍増パワーで体が破壊され死んでしまうかもしれない。とても危険すぎるわ」と彼女は心中でにこやかにつぶやく。そんなことを妄想する彼女は当初の目的どおり痴漢男に復しゅうすることが幸せに通じることを知った。
「毎日、二人の幸せな顔を見たいわ」
 彼女に乗り込んだ魔性の心が幸せの顔を欲した。幸せに相性というのがあるのか。二人の父子は恵美にとっての歪曲した幸福感に取り込まれていった。

  *

 大学4年生に進級した浩志は突然、1年の時から大学のアイドル的存在だった恵美と肩を並べ歩いている。3年前の彼には信じられないことだった。それだけに足らず、今度の日曜日、彼女を自宅へ招くことになっている。恵美を遠い存在に感じていた彼にはこれもまた信じられない現実だった。
「だれかの陰謀なの? それとも、僕に神様が舞い降りた?」
 浩志は独り言を口にした。陰謀でも神様が舞い降りた訳でもない。浩志は恵美に潜む魔性の虜になっただけだ。もちろん、彼は未来永劫、恵美が魔性と知る日は来ない。恵美は浩志に秘密を作ることでさらなる幸せを感じた。
「秘密にするからいいんじゃないの?」
 恵美はつぶやくと同時、父子の幸せスマイルを想像した。

  *

 浩志の大学の期末試験が終了し、いよいよ夏休みに入ろうとしていた。同居している勘太郎と浩志が一日のうちで顔を合わせるのは朝の数分というすれ違い生活だった。浩志は勘太郎が出勤を早くすることになった理由を知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...