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第7章 恵美の覚醒
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田所恵美は車内からホームにはき出されるよう降り立った。足がもつれてうまく歩けない。彼女はホームのあいているベンチに向かうと倒れ込んだ。ベンチに腰掛け呼吸を整えた。
彼女の体のほてりがなかなか静まらない。両腕を体に寄せて抱くようにうずくまった。体をすぼめて消えてしまいたい、と思った。彼女は電車内で手を握られるという痴漢行為を受けて動揺していた。彼女は痴漢されたことに動揺してのではなく、痴漢されたことに彼女の体が心地よく感じたことに驚いていた。それまで勉強一筋で生きてきた。それなのに、あの嫌らしい男に触れられていたい、と思ってしまった。自分が性欲を抑制していたことに気が付くと恥ずかしくて消えたくなった。そう思っていながら体の芯は力がみなぎっていた。性に目覚めた自分を発見した驚き。彼女は微笑むように顔を上げた。周囲を見回わしたが先ほどの中年の男性はすでにいなかった。
「あたし、なぜ? 彼を探しているの?」
彼女は男の手を欲して知らないうちに捜していることを恥ずかしく思った。しかし、あの男性ならいつまでも触れられていたい、と思っている自分にあきれた。
「あなた、あんなおじさんがタイプだったのね? いいわよー 触れてもらいなさいよ」
彼女は首を左右に振った。自分は真面目な女子大学生として生きてきた。そんな痴漢をされて感じてしまったなんて馬鹿なことがあるわけがないわ、と心中で叫んだ。
「そうねぇー 昨日までのあなたはね、そうだったわ」
彼女は先ほどから話しかけてくる声におびえた。
「あの喜びはあなたの本性でしょ? あなたって…… 恥ずかしい女よね? あんな周囲に人がいるのに感じてたんですものね? あたしには信じられないわ」
彼女はまた首を左右に勢いよく振った。
「馬鹿を言わないでよ。そんなんじゃないわ」
彼女は心中で叫んだが自分がむなしく思った。そうは言っても、先ほどまで電車内で中年の男性から散々体をなで回される感触を愛おしむように思い起こしていた。そんな些細なことだけでも自分の体の芯が上気した。とにかく、自分の体があの男性を受け入れたい、と思っていることは間違いなかった。その男性の容姿、体臭、行動を彼女の体が好意的に受け入れた。つまり、だれでもいいわけではなく彼だけに触れられたい、と欲求するのだ。今しがた触られた感触を思い起こすだけで心が歓喜してしまう。こんな衝撃は初めてだった。同級生ではなくて年の離れた中年の男性に好意を抱くなんて自分の思考が信じられなかった。意味もなく理由もなく、あの会ったばかりの男性が好きになっていた。ヒトメボレと言うのだろうか、と彼女は自問した。
「あたし、これからどうしたらいいの?」
彼女は自分に起きた現実に立っていられないくらい疲れた。彼女は登校することを忘れホームのベンチに座っていた。
彼女の体のほてりがなかなか静まらない。両腕を体に寄せて抱くようにうずくまった。体をすぼめて消えてしまいたい、と思った。彼女は電車内で手を握られるという痴漢行為を受けて動揺していた。彼女は痴漢されたことに動揺してのではなく、痴漢されたことに彼女の体が心地よく感じたことに驚いていた。それまで勉強一筋で生きてきた。それなのに、あの嫌らしい男に触れられていたい、と思ってしまった。自分が性欲を抑制していたことに気が付くと恥ずかしくて消えたくなった。そう思っていながら体の芯は力がみなぎっていた。性に目覚めた自分を発見した驚き。彼女は微笑むように顔を上げた。周囲を見回わしたが先ほどの中年の男性はすでにいなかった。
「あたし、なぜ? 彼を探しているの?」
彼女は男の手を欲して知らないうちに捜していることを恥ずかしく思った。しかし、あの男性ならいつまでも触れられていたい、と思っている自分にあきれた。
「あなた、あんなおじさんがタイプだったのね? いいわよー 触れてもらいなさいよ」
彼女は首を左右に振った。自分は真面目な女子大学生として生きてきた。そんな痴漢をされて感じてしまったなんて馬鹿なことがあるわけがないわ、と心中で叫んだ。
「そうねぇー 昨日までのあなたはね、そうだったわ」
彼女は先ほどから話しかけてくる声におびえた。
「あの喜びはあなたの本性でしょ? あなたって…… 恥ずかしい女よね? あんな周囲に人がいるのに感じてたんですものね? あたしには信じられないわ」
彼女はまた首を左右に勢いよく振った。
「馬鹿を言わないでよ。そんなんじゃないわ」
彼女は心中で叫んだが自分がむなしく思った。そうは言っても、先ほどまで電車内で中年の男性から散々体をなで回される感触を愛おしむように思い起こしていた。そんな些細なことだけでも自分の体の芯が上気した。とにかく、自分の体があの男性を受け入れたい、と思っていることは間違いなかった。その男性の容姿、体臭、行動を彼女の体が好意的に受け入れた。つまり、だれでもいいわけではなく彼だけに触れられたい、と欲求するのだ。今しがた触られた感触を思い起こすだけで心が歓喜してしまう。こんな衝撃は初めてだった。同級生ではなくて年の離れた中年の男性に好意を抱くなんて自分の思考が信じられなかった。意味もなく理由もなく、あの会ったばかりの男性が好きになっていた。ヒトメボレと言うのだろうか、と彼女は自問した。
「あたし、これからどうしたらいいの?」
彼女は自分に起きた現実に立っていられないくらい疲れた。彼女は登校することを忘れホームのベンチに座っていた。
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