幸せな報復

窓野枠

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第3章 田所恵美の通学

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 大学生3年生の田所恵美は就職活動と、4年生から始まる卒業研究の準備を進めていた。
 2月に入り、今までの学習スケジュールに期末テスト勉強も加わり、深夜まで学習に励んでいた。
 彼女は規則正しい生活しながら人生はリア充を信条にしてきた。ふしだらな行動は御法度、寝坊は言語道断、彼女の辞書にふしだら、寝坊なんて単語はなかった。規則正しい生活は彼女の全身にあふれ、いわゆる美ボディといわれる均整の取れた体型をしていた。髪はショートのボブにまとめ活動的な女性をデザインしていた。彼女の均整の取れた美ボディーはエアロビスクダンスで増強している。心も体も常にパワーアップに余念がなかった。
 3月になると、まもなく新年度。今は春休み。束の間、彼女は休息を楽しむべく起床時間を昼にして珍しく怠惰な時間を過ごした。もうじき、学生も終了だ。少しだけ息抜きしても罰は当たらないだろう、と思った。その一瞬の隙間にまるで何かが乗り移ったかのように黒い影がふっと彼女の体に入り込んだ。
新学期初日、4月8日、彼女は目覚まし時計の音がなったとき「もう5分だけ寝よう」と思った。勤勉、実直、鉄の女として生きた日々は、先日、入り込んだ黒い得体の知れない物体により崩壊の道に進む。まれに見る数奇な運命に導かれようとしていた。なぜ、彼女だったかは神のみぞ知るところだ。いや、彼女の未来に神は存在していない。これからの未来を体験する彼女は「この世には悪魔しかいない」と叫ぶに違いない。
 案の定、彼女の体内に寄生した物体はあと5分を30分にセットした。スマホの時間を見た彼女は遅刻に気付いた。布団から飛び起きた彼女はパジャマを脱ぎ捨て下着だけになった。均整の取れた裸体が光を放つ。彼女は紺色アンブレラスカートをはき、白の花柄を刺繍したワイシャツを着て、その上から焦げ茶のウエストコートを重ねた。遅刻しそうになりながらもファッションには気を使う鉄の女だった。電車に乗るまでの話ではあるが。
床に転がっていたメッセンジャーバッグに授業に使うテキストを入れるとボブヘアを手ぐしで整えるなり姿見の前でガッツポーズを決めた。
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