6 / 20
1
打ち出の小槌
しおりを挟む
少年が目を輝かせながら、父親に尋ねた。
「ねえ、父さん。幸せに暮らすにはどうしたらいいと思う? 」
「それは、何でも手に入る身分になることだなあ」
「そのためにはどうしたらいいのかなあ」
「まあ、勉強して頭が良くなることだなあ。いい大学にはいる。そして、物を作る会社に入り、画期的な物を発明するんだ。すると、それが売れてどんどんお金が入ってくる。お金が入れば何でも買えるから何不自由なく暮らせるってえ訳だ。分かったか? 」
「分かったよ。勉強して天才になるよ」
「おお、いい意気込みだ。そ、そうだな。そのくらい夢を大きく持たなければ駄目だ。そうだ、父さんはあんまり勉強しなかったからな。お陰で会社に入っても何も作れなかった。だから、給料も安いし、みんなに何かといろいろ不自由をかけてしまっている。本当にすまんなあ…… って、オイ何を言わせるのだ」
父親の話を聞いた少年は、一生懸命勉強をした。そして、幾つかの製品を発明し、富と名声を得ていった。
少年も年を取りやがて老人になったころ、自分でも驚く発明をした。それは打ち出の小槌だった。一振りすると願ったものを何でも打ち出すことができた。大判小判はもちろん、ダイヤモンド、金塊、なんでも地上の物質を打ち出すことができた。人々は昔話でしか聞いたことのない打ち出の小槌の発明に驚いた。
「父さん、ついに僕は父さんが言う画期的な発明をしたよ」
老人は父親と話した若かりしころを思い出し、打ち出の小槌を振り上げた。山吹色に光り輝く金塊が出てきた。振れば振るだけ出てきた。しかし、老人には金塊は重くて手に持つことすらできなかった。老人は考えて軽くて価値のあるダイヤモンドにした。たくさんのダイヤモンドを出した。早速宝石店によろけながらたどり着いた。
「どうだい? このダイヤ。ワシが作ったのだぞ」
老人のせいで、この後、ダイヤの価格が暴落して全く価値はなくなった。
彼は部屋の中の金塊がじゃまなので、運送業者に運ばせることにした。運送業者がやってきた。
「どうだい? すごい金塊だろ。ワシが作ったのだぞ」
その後、金塊の相場が大暴落して全く価値がなくなった。老人は考えた。価値のある物は作りすぎると価値がなくなる。
彼は手っ取り早くお金を出すことを思いついた。1時間降り続け、彼の周りには1万円札の山ができた。早速手提げ鞄に詰め込んで玄関を出た。
庭にパトカーが数台止まっていた。
「おお、警察が警備に来てくれたのか」
「はい、博士、また貴金属を作られたのですか? 」
彼は警官に愛想を振る舞いながら鞄のファスナーを開いた。
「どうだい、すごい札束だろ? ワシの発明で作ったのだぞ」
その場で、彼は通貨偽造の罪で現行犯逮捕されたのだった。
「ねえ、父さん。幸せに暮らすにはどうしたらいいと思う? 」
「それは、何でも手に入る身分になることだなあ」
「そのためにはどうしたらいいのかなあ」
「まあ、勉強して頭が良くなることだなあ。いい大学にはいる。そして、物を作る会社に入り、画期的な物を発明するんだ。すると、それが売れてどんどんお金が入ってくる。お金が入れば何でも買えるから何不自由なく暮らせるってえ訳だ。分かったか? 」
「分かったよ。勉強して天才になるよ」
「おお、いい意気込みだ。そ、そうだな。そのくらい夢を大きく持たなければ駄目だ。そうだ、父さんはあんまり勉強しなかったからな。お陰で会社に入っても何も作れなかった。だから、給料も安いし、みんなに何かといろいろ不自由をかけてしまっている。本当にすまんなあ…… って、オイ何を言わせるのだ」
父親の話を聞いた少年は、一生懸命勉強をした。そして、幾つかの製品を発明し、富と名声を得ていった。
少年も年を取りやがて老人になったころ、自分でも驚く発明をした。それは打ち出の小槌だった。一振りすると願ったものを何でも打ち出すことができた。大判小判はもちろん、ダイヤモンド、金塊、なんでも地上の物質を打ち出すことができた。人々は昔話でしか聞いたことのない打ち出の小槌の発明に驚いた。
「父さん、ついに僕は父さんが言う画期的な発明をしたよ」
老人は父親と話した若かりしころを思い出し、打ち出の小槌を振り上げた。山吹色に光り輝く金塊が出てきた。振れば振るだけ出てきた。しかし、老人には金塊は重くて手に持つことすらできなかった。老人は考えて軽くて価値のあるダイヤモンドにした。たくさんのダイヤモンドを出した。早速宝石店によろけながらたどり着いた。
「どうだい? このダイヤ。ワシが作ったのだぞ」
老人のせいで、この後、ダイヤの価格が暴落して全く価値はなくなった。
彼は部屋の中の金塊がじゃまなので、運送業者に運ばせることにした。運送業者がやってきた。
「どうだい? すごい金塊だろ。ワシが作ったのだぞ」
その後、金塊の相場が大暴落して全く価値がなくなった。老人は考えた。価値のある物は作りすぎると価値がなくなる。
彼は手っ取り早くお金を出すことを思いついた。1時間降り続け、彼の周りには1万円札の山ができた。早速手提げ鞄に詰め込んで玄関を出た。
庭にパトカーが数台止まっていた。
「おお、警察が警備に来てくれたのか」
「はい、博士、また貴金属を作られたのですか? 」
彼は警官に愛想を振る舞いながら鞄のファスナーを開いた。
「どうだい、すごい札束だろ? ワシの発明で作ったのだぞ」
その場で、彼は通貨偽造の罪で現行犯逮捕されたのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
窓野枠 短編傑作集 1
窓野枠
大衆娯楽
日常、何処にでもありそうな、なさそうな、そんなショートショートを書き綴りました。窓野枠 オリジナル作品となります。「クスッ」と笑える作風に仕上げているつもりです。この本の作品20編をお読みになりましたら、次巻も、閲覧のほど、よろしくお願いいたします。
窓野枠 短編傑作集 9
窓野枠
大衆娯楽
日常、どこにでもありそうな、なさそうな、そんなショートショートを書きつづりました。窓野枠 オリジナル作品となります。「クスッ」と笑える作風に仕上げているつもりです。この本の作品20編をお読みになりましたら、次巻も、閲覧のほど、よろしくお願いいたします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる