蜃気楼の女

窓野枠

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第36章 橋本浩一の記憶

3話

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 この女の子の出現を契機に、橋本は悪い事件を解決できる予感がした。彼女から後光が見えた。取材をし、たくさんの学識者に会っている橋本も言葉を飲むほど、極上の美しさを際立たせるような後光が少女から差していた。外見的な美しさだけではない、内面からあふれた知性や教養を周囲に放つオーラという光が醸し出されている。橋本には彼女が神社仏閣で見る仏様や観音様のように見えた。橋本は少女を見つめながら、股間に痛みを感じた。橋本は自分に驚いた。仏様や観音様に見えた彼女を見て、あろうことか欲情していた。股間の分身が勃起し、それがズボンを押し上げているので、窮屈で痛い。これほどの興奮は初めてのことだった。女子児童を見て欲情している自分に驚くが、さらに、仏様や観音様にも見えた人物を崇拝するどころか、性欲の対象に見ているのは狂っている。この破廉恥な性欲を隠すどころか、観音様に見えた彼女に対し、腰を前に突き出し、槍のように起立しているであろう心棒を彼女にみてもらいたい衝動に駆られた。
(俺は何をしているんだ? 変質者もいいところだ!)
 橋本は、自分の破廉恥な行動に驚いた。美少女は橋本の股間が興奮していることに気が付いたが、逃げるどころか、健康的な白い歯を見せ恥ずかしそうに目を股間に向けた。
「ンーー…… 」
 少女のうなり声にどんな意味があるのか。橋本は彼女が(ンー キャー 変態よぉー)と、叫び声を上げて逃げていく彼女を想像した。ところが、橋本の前に少しずつ歩いて来て、橋本の前で止まった。
 彼女は橋本の脇に垂らした手を両手で握り、自分の胸の前に引き寄せ、橋本の顔を見た。橋本は彼女のあまりに自然な動作にあがなえず、身を任せていた。
(この子は何をするつもりだ? こんな美少女なら何をされてもいい……)と、質実剛健を信条とする橋本を狂わせる妖艶な魅力も、少女にあった。
「おじさんの手って…… 暖かいね。こうして、おじさんの手を握って…… いたいな…… ずっと、こうして、おじさんのそばにいたいなぁ…… おじさんのこと、あたし…… 好きよ…… そのことは絶対、忘れないで……」
 彼女はそう言って、握った彼の手に力を入れてきた。橋本は初めて会う子に、手を握られて、好きだと告白をされて、どう答えたら良いか分からないでいた。この子、変じゃない、なんて、考えが全く起きなかった。自分のほうがよっぽど変になっていた。路上で会った女子高生に欲情しているなんて、性犯罪者もいいところだ。橋本はそんな動物的、野性的な衝動を持っていたことに驚いた。ずっと女の子を見つめていたいくらい、夢中で見つめていた。
「会ってすぐに変なことを言う女だ、って思いますよね。この女はおかしいと思いましたよね。でも、安心して、頭はかなりまともなほうだと思います。フフフゥ」
 はにかんだ少女はきっぱりと言い切った。
「ここの学園長からおじさんのこと、事前に詳しく聞いています。おじさんのこと、すべてを知っています。こうしていても、あたしはおじさんの思考を知ることができます。あたし、超能力者なの…… おじさんは、あたしを女性として認めてくれてますよね? それを理解したうえで、おじさんを好きだと告白しました。こうして、おじさんの手が離れないよう強く握っているのは、欲情しているおじさんにここであたしを抱いてくれてもいい、と思っているからです。だから、おじさんも自分のことを変に思わないでください。そういうおじさんが好きなんです。あたしはこの手は絶対、離しません…… おじさんも握っていてください……」
 そう言った女の子は橋本の胸に額を押しつけてきて、腕を背中に回すと、橋本を抱きしめた。さらに、橋本の怒張した心棒の上に、彼女の下腹部の柔らかい肉を押し付けてきた。橋本の心棒が柔らかな力で圧迫された。彼女の体からいい香りがしてくる。橋本は天にも昇る心地よさを感じていた。
(どうしたっていうんだ、この子は? 何で俺なんだ?)
 橋本が心の中で叫んだとき、彼女が言った。
「あたしも含めて、あたしの中のたくさんの遺伝子がおじさんを好きになるんです」
 橋本はあのときのことを思い出すと、今も、隣にいるように尚子の香りとぬくもりを感じた。思考が分かるとか、超能力者だとか、遺伝子がそうさせるとか、意味不明なことを言う変わった子だと思った。あの出会いは、生涯、どんなことが起きようとも、忘れることなどできない。彼女の名前は安田尚子だ。橋本はどんどん消える記憶の中で、何度も、尚子の名前を呼んだ。
(尚子のことは忘れない……)

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