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第32章 櫻子VS尚子
4話
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安田尚子は山野櫻子とAndroidがいると思われる寮の食堂へ向かった。尚子が寮の食堂の入り口の前で立ち止まると、櫻子とAndroidがテーブルの前にいるのを発見し、青ざめた。Androidは機能を停止し動きが止まったようで、腕が動作の途中のままの体勢で腰掛けていた。Androidに何かのトラブルが起きたようだ。本体である学園長の死亡から時間的に機能を停止するには速すぎる。その平八郎タイプAndroidに櫻子が懸命に話しかけていた。嫌な予感がした尚子は、機転を利かせ、自分のnaokoタイプAndroidを櫻子のところへ向かわせることにした。尚子はまだ会ったことのない櫻子が、心底、怖かった。尚子に防衛本能が働いた。食堂の入り口から来た道をきびすを返し、廊下を走った。
*
廊下を走ってきたnaokoタイプAndroidは、食堂の入り口からそっと静かに入り、櫻子と学園長がいるそばへ近づき、櫻子に向かって声を元気よく掛けた。
「へーい、櫻子さーん! はじめまして」
そう言って、笑顔を振りまく少女が誰か櫻子にはすぐ分かった。安田尚子だ。日本上陸3日目にしてついに尚子に対面した。櫻子は数秒尚子を凝視すると、ゆっくりした口調で話した。
「こ、これって…… もしか…… すると、あなた、平八郎さんを…… 操っていたの?」
櫻子は今までの平八郎が本当の姿ではなく、尚子に操作された平八郎だったのでは、と直感した。
「あんた、あたしが来ることを知って、学園長を操り、すべてを準備したの? あたしのことを知ってるの? あたしが日本に来た理由を知ってるの? あなた、何もの?」
反応しない平八郎の様子に気が動揺していた櫻子は、怪しげな登場をした尚子に矢継ぎ早に質問を浴びせた。そっと近づき、平八郎の後ろから顔だけで出していた尚子が、体を現した。尚子は濃紺のブレザーとグリーン地のチェック柄スカートを着ていた。膝上のスカートから出た生足はまだふっくらした少女の肉付きだ。ハイソックス、黒の革靴。この学園の制服か。おととい、この学園に到着したが、土日で授業が休みだったので学生を見ていない。ここへ来て初めて見た生徒が尚子が初めてとは驚いた。こんな感じの子がこの学園には集まっているのだろう。つまり、日本という国はこんなあどけない美少女がいる国だ。日本は平和な国だ。平和だから生への執着、闘争心がない。若ものは平和という恩恵を受けながら、惰性で怠惰に生きている。ずぼらで、ていたらく民族だ。
「あら、操っていたなんて。櫻子さまの魅力を学園長に詳しくお話ししただけです。今までの櫻子さまへの思いは、学園長の素直なお気持ちです」
「じゃ、何? この平八さんの今の状態は? 体が固まったままよ…… 電池の切れた唐変木の人形じゃないの? これってどういうこと? あんた、ちゃんと説明しなさい!」
櫻子は、尚子が平八郎の体を乗っ取り、今まで、唐変木学園長として行動させ、自分の心を平八郎を使って踊らせていた。そう思うと腹が煮えくり返ってきた。あたしの愛しい平八郎をどうしたの? 返事次第ではただでは済まないわ。櫻子の中で怒りがフツフツと、燃え上がってきた。
カタカタ、カタカタ、櫻子の立っている周辺の家具や装飾品がわずかに上下に振動し始めた。いくつかの椅子が床から離れ出し、空中に浮き始めた。それを見た尚子の顔が引きつった。
「ワワワ、ち、違います。櫻子さま、落ち着いてください。ご説明しますから。学園長のこと、あたしのこと、いろんなこと、誤解されたみたい。ごめんなさい。エエエーっと、こ、これから櫻子さまに見てもらったほうが早いと思います。百聞は一見にあらず、って言いますから、あたしに付いてきて見ていただけますか?」
怒りで頭がパニクになりかけた櫻子は、尚子の言うことを信用できなかった。目の前に腰掛けている学園長がこの部屋にいないような口調だ。移動するまでもなく、この部屋にいる平八郎の呪縛を尚子がとけばいいだけ。
しかし、なぜか、平八郎は両目を開いたまま、瞬きすらしない。椅子に座ったままだ。先ほどからの平八郎の状態に櫻子は疑問を抱き始めた。今までの平八郎がもう存在しない。嫌な予感が湧き上がるばかりだ。周辺の家具が、カタカタカタ、振動が大きくなり始めた。
「ワワワワーーー 櫻子さま、アアアアアアーーー どうか、お静まりください、お、お願いしますーー」
*
廊下を走ってきたnaokoタイプAndroidは、食堂の入り口からそっと静かに入り、櫻子と学園長がいるそばへ近づき、櫻子に向かって声を元気よく掛けた。
「へーい、櫻子さーん! はじめまして」
そう言って、笑顔を振りまく少女が誰か櫻子にはすぐ分かった。安田尚子だ。日本上陸3日目にしてついに尚子に対面した。櫻子は数秒尚子を凝視すると、ゆっくりした口調で話した。
「こ、これって…… もしか…… すると、あなた、平八郎さんを…… 操っていたの?」
櫻子は今までの平八郎が本当の姿ではなく、尚子に操作された平八郎だったのでは、と直感した。
「あんた、あたしが来ることを知って、学園長を操り、すべてを準備したの? あたしのことを知ってるの? あたしが日本に来た理由を知ってるの? あなた、何もの?」
反応しない平八郎の様子に気が動揺していた櫻子は、怪しげな登場をした尚子に矢継ぎ早に質問を浴びせた。そっと近づき、平八郎の後ろから顔だけで出していた尚子が、体を現した。尚子は濃紺のブレザーとグリーン地のチェック柄スカートを着ていた。膝上のスカートから出た生足はまだふっくらした少女の肉付きだ。ハイソックス、黒の革靴。この学園の制服か。おととい、この学園に到着したが、土日で授業が休みだったので学生を見ていない。ここへ来て初めて見た生徒が尚子が初めてとは驚いた。こんな感じの子がこの学園には集まっているのだろう。つまり、日本という国はこんなあどけない美少女がいる国だ。日本は平和な国だ。平和だから生への執着、闘争心がない。若ものは平和という恩恵を受けながら、惰性で怠惰に生きている。ずぼらで、ていたらく民族だ。
「あら、操っていたなんて。櫻子さまの魅力を学園長に詳しくお話ししただけです。今までの櫻子さまへの思いは、学園長の素直なお気持ちです」
「じゃ、何? この平八さんの今の状態は? 体が固まったままよ…… 電池の切れた唐変木の人形じゃないの? これってどういうこと? あんた、ちゃんと説明しなさい!」
櫻子は、尚子が平八郎の体を乗っ取り、今まで、唐変木学園長として行動させ、自分の心を平八郎を使って踊らせていた。そう思うと腹が煮えくり返ってきた。あたしの愛しい平八郎をどうしたの? 返事次第ではただでは済まないわ。櫻子の中で怒りがフツフツと、燃え上がってきた。
カタカタ、カタカタ、櫻子の立っている周辺の家具や装飾品がわずかに上下に振動し始めた。いくつかの椅子が床から離れ出し、空中に浮き始めた。それを見た尚子の顔が引きつった。
「ワワワ、ち、違います。櫻子さま、落ち着いてください。ご説明しますから。学園長のこと、あたしのこと、いろんなこと、誤解されたみたい。ごめんなさい。エエエーっと、こ、これから櫻子さまに見てもらったほうが早いと思います。百聞は一見にあらず、って言いますから、あたしに付いてきて見ていただけますか?」
怒りで頭がパニクになりかけた櫻子は、尚子の言うことを信用できなかった。目の前に腰掛けている学園長がこの部屋にいないような口調だ。移動するまでもなく、この部屋にいる平八郎の呪縛を尚子がとけばいいだけ。
しかし、なぜか、平八郎は両目を開いたまま、瞬きすらしない。椅子に座ったままだ。先ほどからの平八郎の状態に櫻子は疑問を抱き始めた。今までの平八郎がもう存在しない。嫌な予感が湧き上がるばかりだ。周辺の家具が、カタカタカタ、振動が大きくなり始めた。
「ワワワワーーー 櫻子さま、アアアアアアーーー どうか、お静まりください、お、お願いしますーー」
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