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第31章 成功した発明と失敗した発明
3話
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心に隙間ができた男たちは | 蜃気楼《しんきろう》の女たちを思い、俺を拉致してくれ、と願うことがある。
しかし、 | 蜃気楼《しんきろう》の女が実際存在すると言うことは、誰にも知られていない。否、ひとりの男を除いて。その唯一の男というのが、安田尚子の父・安田仁だった。彼は | 蜃気楼《しんきろう》の女・ナルミを味方に付け、 | 蜃気楼《しんきろう》から抜けるため、二人は魔性力を使った。二人が合体することにより、強大な破壊的な魔性力を発生させた。その力は4人の女たちの力を合わせてもかなわない。それほど、強大になることをナルミは理解していなかった。気絶させるだけのつもりで使ったが、その洞窟にいたすべての生物を跡形もなく消し去ってしまった。その力の大きさを知っていたのはナルミの父だけだったのかもしれない。ナルミの父も拉致された隣国の男だった。彼は娘の幸せのために自らの命を捧げた。日本に逃げた二人は、後から自分たちの力を知り、罪悪感を抱いて生きた。だから、それ以後、二人とも、二人で合体して得られる殺傷力の強い魔性力を使うことはなかったし、使う気にもならなかった。安田やナルミが逃げ帰った頃の日本は、そんな魔性力を使うほど荒廃していなかったよき時代だった。
*
「ねえ、おじさん、体の調子はどう?」
顔を気にすることはないという尚子でさえも気になるほど、全くの別人になった橋本の顔を見つめた。顔が、いわゆる世間で言われるところのイケメン、男前、美男子という部類の人相に変貌していた。
「ああ、とても気持ちいいよ…… 尚子、すごいよ、また、いきそうだ」
「そこのことより、今はおじさんの体…… 特にお顔が変形しちゃった…… みたいなのね…… まあ、おじさんの場合、結果として、かなり変な具合に変形した、って言っていいのかなー? 上半身は今までより一回り筋肉もりもりだし…… もちろん、おじさんの下半身の筋肉、特に大臀筋(だいでんきん)も、そして、あたしだけのジュニアちゃんも、とっても元気そうだわ、今も、カチカチ、すごく固くていい感じよ…… 力が前より増したーーみたい? あたしの発明がここは大成功だったみたいな? お顔は大失敗だったかなー っていう感じーー? ……」
そう言った尚子はベッドから飛び降りて、脇机の引き出しから手鏡を引っ張り出して、橋本の顔の前に手鏡を差し出した。
「おじさん、まあ、見て…… 別人になってるのよ…… お顔をよく見て……」
橋本は尚子から顔の前に差し出された手鏡を手に持ち自分の顔にかざした。
「えっ? 何でこうなるの? どこの人?」
橋本は手鏡を見ながら、もう片方の手で、あごやほおを触ったり、つねってみたり、引っ張ってみたり、して確認した。
「こりゃ、どういうことだ? 俺の顔に違いないよ。皮膚は俺そのものだ…… 痛いし、ちゃんと感覚はあるぞ…… なあ、脳だけにメモリを移植するんだったよな?」
「う、うん、もちろん…… そ、そうよ、脳へ再生細胞を移植されるだけのはず…… よ…… でも…… なんか…… お顔の骨格、人相を変えてしまったみたい…… まじ、ミスった?」
そう言いながら、尚子は橋本の顔をのぞき込んでいる。
「フーン…… そうなんだ…… 俺は別にいいよ、これ、なかなか…… 男前だもの…… まるで美容整形したみたいなイケメンだな…… 俺、これ、いいよ、気に入ったな、この顔……」
少し喜び気味の橋本は自分の変形した顔に何の違和感も抱いていない。尚子には橋本がむしろ喜んでいるように見えた。
「おじさん、困ったわ、学園長のお顔って、鼻の飛び出た特殊なお顔なのよねー だから、今のAndroidもそのお顔に忠実に作ってあったのよねー どう、しようっかー?」
尚子は橋本の顔に顔を近づけて困った顔をして見せながら、橋本のほおを手のひらでなでた。
「でもー おじさんがこのお顔で良くても…… おじさん、こんなにお顔になっちゃったら、これから学園の女子に…… モテモテでー …… こ、困るよねー …… なんか、あたしも困るなー 」
「えっ、尚子は別に困ることなんてないだろ?」
しかし、 | 蜃気楼《しんきろう》の女が実際存在すると言うことは、誰にも知られていない。否、ひとりの男を除いて。その唯一の男というのが、安田尚子の父・安田仁だった。彼は | 蜃気楼《しんきろう》の女・ナルミを味方に付け、 | 蜃気楼《しんきろう》から抜けるため、二人は魔性力を使った。二人が合体することにより、強大な破壊的な魔性力を発生させた。その力は4人の女たちの力を合わせてもかなわない。それほど、強大になることをナルミは理解していなかった。気絶させるだけのつもりで使ったが、その洞窟にいたすべての生物を跡形もなく消し去ってしまった。その力の大きさを知っていたのはナルミの父だけだったのかもしれない。ナルミの父も拉致された隣国の男だった。彼は娘の幸せのために自らの命を捧げた。日本に逃げた二人は、後から自分たちの力を知り、罪悪感を抱いて生きた。だから、それ以後、二人とも、二人で合体して得られる殺傷力の強い魔性力を使うことはなかったし、使う気にもならなかった。安田やナルミが逃げ帰った頃の日本は、そんな魔性力を使うほど荒廃していなかったよき時代だった。
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「ねえ、おじさん、体の調子はどう?」
顔を気にすることはないという尚子でさえも気になるほど、全くの別人になった橋本の顔を見つめた。顔が、いわゆる世間で言われるところのイケメン、男前、美男子という部類の人相に変貌していた。
「ああ、とても気持ちいいよ…… 尚子、すごいよ、また、いきそうだ」
「そこのことより、今はおじさんの体…… 特にお顔が変形しちゃった…… みたいなのね…… まあ、おじさんの場合、結果として、かなり変な具合に変形した、って言っていいのかなー? 上半身は今までより一回り筋肉もりもりだし…… もちろん、おじさんの下半身の筋肉、特に大臀筋(だいでんきん)も、そして、あたしだけのジュニアちゃんも、とっても元気そうだわ、今も、カチカチ、すごく固くていい感じよ…… 力が前より増したーーみたい? あたしの発明がここは大成功だったみたいな? お顔は大失敗だったかなー っていう感じーー? ……」
そう言った尚子はベッドから飛び降りて、脇机の引き出しから手鏡を引っ張り出して、橋本の顔の前に手鏡を差し出した。
「おじさん、まあ、見て…… 別人になってるのよ…… お顔をよく見て……」
橋本は尚子から顔の前に差し出された手鏡を手に持ち自分の顔にかざした。
「えっ? 何でこうなるの? どこの人?」
橋本は手鏡を見ながら、もう片方の手で、あごやほおを触ったり、つねってみたり、引っ張ってみたり、して確認した。
「こりゃ、どういうことだ? 俺の顔に違いないよ。皮膚は俺そのものだ…… 痛いし、ちゃんと感覚はあるぞ…… なあ、脳だけにメモリを移植するんだったよな?」
「う、うん、もちろん…… そ、そうよ、脳へ再生細胞を移植されるだけのはず…… よ…… でも…… なんか…… お顔の骨格、人相を変えてしまったみたい…… まじ、ミスった?」
そう言いながら、尚子は橋本の顔をのぞき込んでいる。
「フーン…… そうなんだ…… 俺は別にいいよ、これ、なかなか…… 男前だもの…… まるで美容整形したみたいなイケメンだな…… 俺、これ、いいよ、気に入ったな、この顔……」
少し喜び気味の橋本は自分の変形した顔に何の違和感も抱いていない。尚子には橋本がむしろ喜んでいるように見えた。
「おじさん、困ったわ、学園長のお顔って、鼻の飛び出た特殊なお顔なのよねー だから、今のAndroidもそのお顔に忠実に作ってあったのよねー どう、しようっかー?」
尚子は橋本の顔に顔を近づけて困った顔をして見せながら、橋本のほおを手のひらでなでた。
「でもー おじさんがこのお顔で良くても…… おじさん、こんなにお顔になっちゃったら、これから学園の女子に…… モテモテでー …… こ、困るよねー …… なんか、あたしも困るなー 」
「えっ、尚子は別に困ることなんてないだろ?」
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