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第28章 決断
2話
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橋本の疑問に尚子は説明する。田所の進める教育改革には体に障害を持った人たちが生活しやすいように支援するため、Androidタイプのドールを開発している。精神的な支援に対し、物質的な支援である。ガンダムという漫画をヒントに、操作する人間がロボットの体内に入り、力を増幅させることが可能になる話である。その応用で、体に障害がある人に、そのパーツを装着する。その応用で、心、精神に障害を持った人も、脳の一部に、CPUを装着するのである。CPUとは中央演算解析装置といって、パソコンで使われる部品の名前である。いわゆる人間の脳と同じ機能をつかさどるパーツである部品の理論を、再生細胞脳に、電気信号を送り移植する。再生細胞で構成された脳の組織に電気的に記憶させることに成功したという。その開発のために尚子の超能力を使ったというのだ。田所平八郎はテクノロジーに注力した人で、学園では尚子に超能力を使って開発をするよう委ねられたという。橋本の言う花魁(おいらん)専攻学科なんて存在しないが、そんな秘密の開発をしていたことがうわさを生んだのではないか。部分的ではあるが、実用化のできる段階にきた。その初めての実用化検証が学園長と橋本になる、と尚子は言う。
「おい、冗談じゃないぞ! 俺を実験台にするつもりか?」
「その安全性の説明のため、これから明日にかけて、たっぷり時間を取りました。おじさんの脳なら理解が可能なはずです。それだけの能力があることは、すでに、3年前から学園長が検証して、お墨付きです。そして、あさっては学園長の意思を抽出した脳を、おじさんの脳に融合させます」
「おいおい、俺は零和のフランケンシュタインになるのか? 冗談じゃないぞ、まっぴら、ゴメンだぞ!」
「あたしから説明を聞いたおじさんは、あさってになれば、絶対拒みません…… すでに、検証済みです…… 」
そう言って、尚子は頬につけていた橋本の腕を離して橋本の顔を見つめた。
「おじさんは人のために死ぬことができる人なんです」
尚子はそう言って、橋本の背中に胸を押しつけ、しくしく、声を出しながら泣き始めた。
「おじさん、今夜、あたしと一緒に寝てください…… あっ…… 変なことをしたりしません、普通に寝てほしいの…… 今晩、友だちとして、あたしに正しい道に導いてくださる方と一緒に生きるスタートにしたいの…… あたしにもこれから生きる覚悟がほしいの…… お願いです……」
橋本はフリーライターとして生きてきた。いろんな著名人を取材し、その人の生き方を広めたい。そんな大きな志を抱く人を紹介し、読者の模範、参考、何かの力になれれば、そう思って取材してきた。それが、ここまで、他人の人生に加担していいのであろうか。俺はそんな大きな器ではない。
「おじさん、そう言う、人間だよ! あたしはそう思う。だから、一緒に寝てほしい!他人のままではない証を、今夜、ほしいんです…… そうでないと、もう、どうしていいのか…… あたし、何をよりどころにしていいのか、もう…… 分からないの……」
橋本は背中で涙を流しているであろう尚子を想像した。
「きみは俺の考えていることを読めるのか??」
「おじさん、ごめんなさい…… だめなら、もう、そんなことしませんから、だから、今夜だけ、あたしと寝てほしいの……もちろん、こうやって寄り添って寝るだけでいいのよ、おじさんに嫌われたくないから……さっきみたいに、変な気は、多分…… 起こさないと思うから」
橋本は背中の後ろで泣く尚子を見るために起き上がった。恥ずかしいのか、尚子は顔を手のひらで覆った。橋本は顔を覆っている尚子の手首をつかんで、顔から離した。橋本は尚子の顔を見ながらすぐ目の前に横たわった。尚子がすぐに橋本に覆い被さるように抱きついてきた。
「おじさん…… あったかいな…… うれしい…… な……」
尚子の声は小さく、今までの思いを訴えるにはあまりにもか細かった。ただ、泣いていた。そんな尚子の弱々しさを見た橋本は、この子を守ってあげようと、心から思った。この子の超能力はこの子が望んだ力ではないのだ。この子が一番、この力に恐怖している。制御のできない力に。
「おじさん、このまま……で……いて……」
「おい、冗談じゃないぞ! 俺を実験台にするつもりか?」
「その安全性の説明のため、これから明日にかけて、たっぷり時間を取りました。おじさんの脳なら理解が可能なはずです。それだけの能力があることは、すでに、3年前から学園長が検証して、お墨付きです。そして、あさっては学園長の意思を抽出した脳を、おじさんの脳に融合させます」
「おいおい、俺は零和のフランケンシュタインになるのか? 冗談じゃないぞ、まっぴら、ゴメンだぞ!」
「あたしから説明を聞いたおじさんは、あさってになれば、絶対拒みません…… すでに、検証済みです…… 」
そう言って、尚子は頬につけていた橋本の腕を離して橋本の顔を見つめた。
「おじさんは人のために死ぬことができる人なんです」
尚子はそう言って、橋本の背中に胸を押しつけ、しくしく、声を出しながら泣き始めた。
「おじさん、今夜、あたしと一緒に寝てください…… あっ…… 変なことをしたりしません、普通に寝てほしいの…… 今晩、友だちとして、あたしに正しい道に導いてくださる方と一緒に生きるスタートにしたいの…… あたしにもこれから生きる覚悟がほしいの…… お願いです……」
橋本はフリーライターとして生きてきた。いろんな著名人を取材し、その人の生き方を広めたい。そんな大きな志を抱く人を紹介し、読者の模範、参考、何かの力になれれば、そう思って取材してきた。それが、ここまで、他人の人生に加担していいのであろうか。俺はそんな大きな器ではない。
「おじさん、そう言う、人間だよ! あたしはそう思う。だから、一緒に寝てほしい!他人のままではない証を、今夜、ほしいんです…… そうでないと、もう、どうしていいのか…… あたし、何をよりどころにしていいのか、もう…… 分からないの……」
橋本は背中で涙を流しているであろう尚子を想像した。
「きみは俺の考えていることを読めるのか??」
「おじさん、ごめんなさい…… だめなら、もう、そんなことしませんから、だから、今夜だけ、あたしと寝てほしいの……もちろん、こうやって寄り添って寝るだけでいいのよ、おじさんに嫌われたくないから……さっきみたいに、変な気は、多分…… 起こさないと思うから」
橋本は背中の後ろで泣く尚子を見るために起き上がった。恥ずかしいのか、尚子は顔を手のひらで覆った。橋本は顔を覆っている尚子の手首をつかんで、顔から離した。橋本は尚子の顔を見ながらすぐ目の前に横たわった。尚子がすぐに橋本に覆い被さるように抱きついてきた。
「おじさん…… あったかいな…… うれしい…… な……」
尚子の声は小さく、今までの思いを訴えるにはあまりにもか細かった。ただ、泣いていた。そんな尚子の弱々しさを見た橋本は、この子を守ってあげようと、心から思った。この子の超能力はこの子が望んだ力ではないのだ。この子が一番、この力に恐怖している。制御のできない力に。
「おじさん、このまま……で……いて……」
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