蜃気楼の女

窓野枠

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第26章 屈強の男・橋本浩一

3話

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 冷静に考えれば、いきなり自宅を訪問するなど非常識も甚だしい行動である。大抵取材はホテルのラウンジとか、部屋を借りて、カメラマンも同席して行うが通常だった。つい年の歯もいかない女学生だと高をくくった。なぜ、田所はそんな説明をこんな未熟な生徒にさせようと考えが及んだのか。やはり、尚子の父親の力を見せるためだろう。私にはこんな政府高官がバックに付いているのですよ。田所の声が聞こえてきそうだった。何に付け、田所の策略に結びつけてしまいいろいろ考えてしまうが、尚子に聞いた方が早そうだ。橋本は、尚子が取材をするために、なぜ自宅に誘ったのか、その真相を知りたかった。田所から話は聞いているとは言っても、全くの初対面の男を自宅に招くという美少女の目的を知りたかった。尚子みたいな少女が、橋本を自宅に誘い込んで思う存分にレイプする、という驚喜の理由に、橋本は全く思いもよらなかった。
 橋本は尚子の部屋に招き入れられた。6畳ほどの洋室でどこにでもありそうな部屋である。勉強机、椅子、本棚、シングルベッドだけの部屋であるが、少女らしい人形がたくさん置かれていた。壁にはドライフラワーが逆さまに敷き詰めるようにつり下げられていた。深く息を吸うとめまいを感じるほどいい香りだった。何かの匂いを消すような香り。香りを吸った橋本は社会的地位の抹殺どころか、物理的に抹殺されるのではないか、という不安を感じた。もしかすると、この部屋の死臭を消すため。  
「ねえ、友だちになったからって、いきなり、初めての異性を部屋に招くなんて、きみの本当の目的は何?」  
 橋本は尚子に聞いた。尚子は驚いた顔をした。  
「おじさん、友だちになってくれると言ったのに、嫌だった? ただ、尚子はおじさんが好きだから誰にも邪魔されたくなかったの、静かな部屋でおじさんとゆっくり触れあいたかっただけよ……」
  美少女である尚子から発せられる唇の動きを見つめていた橋本は、めくれ上がったピンクの下唇に吸い込まれていきそうで、身震いが起きた。尚子の心が分からず、つい疑心暗鬼から出た言葉だった。尚子の笑顔が消え、目に涙が潤んでいた。今にも泣き出しそうな顔になり、橋本は慌てた。こんな美少女を泣かせている俺は何を言っているんだ。橋本は今までの尚子への疑いを悔いた。
「悪かった、ごめん、謝る……」  
 そう言って、橋本は尚子の目から流れた涙を手の指で拭き取った。尚子は橋本の胸に顔を埋めてきた。  
「もう許さない! おじさん、許さない!」  
 尚子は橋本の胸に顔を押しつけ、両腕で橋本の腕の上から抱きしめて、埋めていた顔を見上げた。そして、橋本の行動を抑制しようと、念力を橋本の脳に向かって送った。  
「もう、あなたは動けない。あたしのなすがままになるのよ。これからあたしはあなたを犯すわ」  
 橋本の苦しむ顔を想像した尚子の股間からパンティーの許容量を超えたジュースが太ももを伝わって膝まで流れていた。  
「おじさん、気持ちよくしてあげる……」  
 尚子は橋本に宣言すると、橋本の唇にキスをしようとし、唇を近づけた。  
「それは友だち以上にならないのか?」  
 橋本は唇をずらした。尚子の唇が橋本の右頬にキスし、尚子は頬に唇を付けながら驚いた。  
「うそー、どうして、動けるの?」  
 尚子は唇を橋本から離し、橋本の顔を見つめた。橋本が首をかしげながら言った。  
「何? それ? どういうこと?」
  橋本は驚いている尚子の体を両手で抱えてから腕を伸ばし遠ざけた。
「それはこれからもっと知り合ってからのほうが良くないか? 俺にその気がないもの、ごめん……」  
 橋本は遠ざけた尚子の体をさらに押して離した。  
「そんな……あり得ないわ……」  
 尚子の満身の魔性念力が橋本には一切通じていない。進一のときと全く同じだ。相手の脳内の思考に入り込めるが、体の操作をすることは、尚子にはできない。尚子には大きな弱点があった。心から愛する人には肉体を操作する力が抑制された。愛する人を自分の思うままに操る。そんな非道なことに、良心のかしゃくが生じた。自分の愛した人には、その人の愛で、自分を愛してほしい。心から望んでいるからこそ、心のブレーキが本能的に働いた。レイプは鬼畜や悪魔たちのすることだ。魔性の女の血を受け継ぐ尚子に、日本人としての本能が、人間としての尊厳を失うな、と叫んでいた。
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