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第25章 1週間前
2話
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田所は部屋のドアを見つめた。直後、ドアが開かれて山野櫻子が部屋に入ってきた。
正門前に立っていた橋本は平八郎に、突然、電話を切られ、舌鼓を打った。
「くそ、ふざけやがって、偽善者め!」
橋本は一眼レフカメラのモニターを再生した。画面に櫻子が写っている。櫻子が歩いている姿、門の前で考えている姿、意を決したような顔が大きく写っていた。
「しっかし、いい女だよな。こんないい女が後継者とは恐れ入ったな…… この美貌だものな、女子生徒を獲得するのにいい広告塔だ、しかし、中身はどうなのかねえ……こんな学校の後継者になるなんて、いかれた淫乱女に違いないな」
そのとき、橋本は背中を後ろから押され、びっくりして、1歩、慌てて離れてから振り返った。きれいな少女が立っていた。笑顔を振りまきながら橋本を見て笑っている。制服を着ているからこの学校の生徒だろう。美しい顔立ちを見つめると、どことなくかわいさもある。不思議なオーラを放つ少女だ。
「何? 何か僕に用かな?」
橋本は女子生徒を足下から頭まで目で追った。かなりの美少女である。
「おじさん、この学校のこと、調べているんですよね?」
「何? そんなことないよ、通りかかっただけさ。きみ、土曜日、今日は学校、昼でおしまいだろ? まだ、帰らないのか? 俺に何のよう? あっ、田所のさしがねか?」
「ウーーン、ちょっと違うような? でも、まあ、そんな感じです。おじさんのこと、学園長から詳しく聞いてます。おじさんみたいな、熱血おじさん、容姿もわりかし、タイプです。この学校の正しい教育方針を説明するように言われています。そんなことの前に、あたしと仲良くしませんか? おじさんさん、タイプだし……」
「はーん、どういうことだ? なんか、おじさん、呼ばわりされて、俺、まだ30代だぞ。まあ、きみからすれば、おじさんかもしれないけど、なんだ? 俺をたらし込めと田所に言われているわけ? あいつが考えそうなことだ。俺を仲間に引き入れろという魂胆か?」
橋本はそう言ってから、女子生徒をさらに見た。清楚な落ち着いた色合いの制服を着ているとはいえ、かなりのスタイルのいい子だった。橋本は田所が仲間に取り込めと指令するくらいだから、この美少女は花魁(おいらん)学科のハイレベル生徒に違いないと確信した。かなりのハイスペックな少女だろう。これはいい機会だ。この子を偽善教育者・田所糾弾の突破口にしよう、と瞬時に考えが及んだ。
「分かった。俺がきみの友だちになってやる。学校のことを洗いざらい話せ、いいか? きみ、名前、なんていうの?」
「橋本さん、友だちになってくれてありがとう。安田尚子って申します。この学園の2年生です。今後とも、どうかよろしくお願いします」
尚子は手をそろえて静かに頭を下げた。
「うんうん、そう、尚ちゃんっていうの? 俺の名前、田所から聞いているんだ」
「先ほども申し上げましたが、おじさんのこと、たくさん、聞いてますから、でも、橋本さんのこと、まだまだ、いっぱい教えてくださいね。これからは、私のこともいっぱい知ってください。友だちになってくださるんですよね、いっぱい、あたしのいろんなこと……知ってくれますか? あたし、友だち、少ないんです」
尚子は甘えるように橋本に向かって話した。橋本はその美しいまでにかわいい顔を見入ってしまう。とても高校2年生とは思えない妖艶さを秘めている。これも花魁(おいらん)学科の教育の成果だろうか。人を自分のとりこにさせるテクニックは恐ろしいものがある。今、橋本は実感した。
「じゃ、これから場所を変えて、学校のこと、聞かせてくれるかい?」
「はい、では、橋本さん、あたしに付いてきていただけますか?」
少女は橋本の右手を握って来た。橋本はびっくりした。この子は会ったばかりの男をすぐ信用するのか、と不信に思った。
「おじさん、あたし、他の人と同じで知らない人は警戒します。でも、さっきも申し上げましたけど、おじさんのこと、すごく知っています。首の後ろにほくろがあることも知ってます。これからあたしのうちに来てください」
正門前に立っていた橋本は平八郎に、突然、電話を切られ、舌鼓を打った。
「くそ、ふざけやがって、偽善者め!」
橋本は一眼レフカメラのモニターを再生した。画面に櫻子が写っている。櫻子が歩いている姿、門の前で考えている姿、意を決したような顔が大きく写っていた。
「しっかし、いい女だよな。こんないい女が後継者とは恐れ入ったな…… この美貌だものな、女子生徒を獲得するのにいい広告塔だ、しかし、中身はどうなのかねえ……こんな学校の後継者になるなんて、いかれた淫乱女に違いないな」
そのとき、橋本は背中を後ろから押され、びっくりして、1歩、慌てて離れてから振り返った。きれいな少女が立っていた。笑顔を振りまきながら橋本を見て笑っている。制服を着ているからこの学校の生徒だろう。美しい顔立ちを見つめると、どことなくかわいさもある。不思議なオーラを放つ少女だ。
「何? 何か僕に用かな?」
橋本は女子生徒を足下から頭まで目で追った。かなりの美少女である。
「おじさん、この学校のこと、調べているんですよね?」
「何? そんなことないよ、通りかかっただけさ。きみ、土曜日、今日は学校、昼でおしまいだろ? まだ、帰らないのか? 俺に何のよう? あっ、田所のさしがねか?」
「ウーーン、ちょっと違うような? でも、まあ、そんな感じです。おじさんのこと、学園長から詳しく聞いてます。おじさんみたいな、熱血おじさん、容姿もわりかし、タイプです。この学校の正しい教育方針を説明するように言われています。そんなことの前に、あたしと仲良くしませんか? おじさんさん、タイプだし……」
「はーん、どういうことだ? なんか、おじさん、呼ばわりされて、俺、まだ30代だぞ。まあ、きみからすれば、おじさんかもしれないけど、なんだ? 俺をたらし込めと田所に言われているわけ? あいつが考えそうなことだ。俺を仲間に引き入れろという魂胆か?」
橋本はそう言ってから、女子生徒をさらに見た。清楚な落ち着いた色合いの制服を着ているとはいえ、かなりのスタイルのいい子だった。橋本は田所が仲間に取り込めと指令するくらいだから、この美少女は花魁(おいらん)学科のハイレベル生徒に違いないと確信した。かなりのハイスペックな少女だろう。これはいい機会だ。この子を偽善教育者・田所糾弾の突破口にしよう、と瞬時に考えが及んだ。
「分かった。俺がきみの友だちになってやる。学校のことを洗いざらい話せ、いいか? きみ、名前、なんていうの?」
「橋本さん、友だちになってくれてありがとう。安田尚子って申します。この学園の2年生です。今後とも、どうかよろしくお願いします」
尚子は手をそろえて静かに頭を下げた。
「うんうん、そう、尚ちゃんっていうの? 俺の名前、田所から聞いているんだ」
「先ほども申し上げましたが、おじさんのこと、たくさん、聞いてますから、でも、橋本さんのこと、まだまだ、いっぱい教えてくださいね。これからは、私のこともいっぱい知ってください。友だちになってくださるんですよね、いっぱい、あたしのいろんなこと……知ってくれますか? あたし、友だち、少ないんです」
尚子は甘えるように橋本に向かって話した。橋本はその美しいまでにかわいい顔を見入ってしまう。とても高校2年生とは思えない妖艶さを秘めている。これも花魁(おいらん)学科の教育の成果だろうか。人を自分のとりこにさせるテクニックは恐ろしいものがある。今、橋本は実感した。
「じゃ、これから場所を変えて、学校のこと、聞かせてくれるかい?」
「はい、では、橋本さん、あたしに付いてきていただけますか?」
少女は橋本の右手を握って来た。橋本はびっくりした。この子は会ったばかりの男をすぐ信用するのか、と不信に思った。
「おじさん、あたし、他の人と同じで知らない人は警戒します。でも、さっきも申し上げましたけど、おじさんのこと、すごく知っています。首の後ろにほくろがあることも知ってます。これからあたしのうちに来てください」
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