2 / 18
2 入院決定
しおりを挟む
尊敬すべき主君と同僚の眼前で倒れたロードリックは、そのまま城下町の大病院に担ぎ込まれるという失態を演じることになった。
近頃胃痛がひどくなってきたと思ってはいたが、まさか倒れるに至ってしまうとは。
マクシミリアンが帰ってくるまでの仮の領主になって以来、破天荒な部下たちも随分と協力してくれるようになったものの、騎士団長の業務と並行するにはいかんせん仕事量が多過ぎた。寝る間も惜しんで過ごしたこの数ヶ月、鍛錬に時間を割くこともできずに体重が落ちたような気はしていたのだ。
薬剤師のリシャールにも胃の痛みが取れないなら病院に行ったほうが良いと言われていたのに、後回しにした結果がこれだ。
「胃潰瘍ですね」
白く塗られた病室にて医師から告げられた診断結果は予想通りのものだった。
「毒でも盛られたのかと思ったぞ……」
ベッドで上体を起こした姿勢を取るロードリックの側で、腕を組んで仁王立ちになったマクシミリアンが安堵のため息をつく。
今の病室にはこの三人しかいない。先程まで室内には部下たちがひしめいていたのだが、やかましくて敵わなかったので追い出したのだ。
黒髪を七三分けにした四十絡みの医師は、眼鏡の奥の瞳を瞬かせてから淡々と言った。
「原因はストレスです。それに過労。勤務事情を確認させていただきましたが、常人がこなせる仕事量ではありません。抱えたご心労も並大抵のものではないはずです」
医師の目線は物怖じすることなく、我が領主を責める色を宿していた。
マクシミリアンが沈痛な面持ちで黙り込む。治癒魔法で痛みから解放されたロードリックは既に元気を取り戻していたので、とにかく居た堪れない気持ちになった。
「チェンバーズ騎士団長閣下。とにかく、貴方は入院して安静にせねばなりません。
仕事のことは忘れ、此度の謀反についても考えることなく、うすぼんやりとして毎日を過ごすのです」
「う、うすぼんやり……この私が、うすぼんやり……?」
「のんべんだらりでも結構ですよ。聞けば治癒魔法と薬に頼り、騙し騙し業務を続けてきたとか。
病とは原因を根絶しなければ再発するものなのです。
まずはストレスを取り除いて心身を休め、胃に空いた大穴を塞いでしまわなければ」
医師の言うことは紛れもない正論だったので、ロードリックもまた黙り込むしかなかった。
だがしかし、彼の言い分を実行するとなると、本当にしばらくの間は何もせずに過ごす羽目になってしまう。領主の仕事はマクシミリアンが帰ってきたから良いとしても、黒豹騎士団長の仕事は誰がこなすと言うのか。
「今、騎士団長の仕事は誰がこなすのか、とお考えでしたね?」
「何故それを!?」
なんなのだこの医師は。まさか他人の心が読めるとでも言うのだろうか。
「病人の考えることなど大概想像がつきます。いいですかチェンバーズ騎士団長閣下。貴方、こんなことを続けていたら死にますよ」
「死っ……!?」
医師のあまりの言い様にロードリックは絶句した。
それは流石にないだろうと笑い飛ばしたい気持ちで一杯なのに、医師の表情は大真面目だ。
「治癒魔法は便利ですが、自身の自己回復機能を増幅させているに過ぎません。
故に限界には個人差があり、その限界を超えているからこそ吐血をするほど重症化したのです。
要は無茶をしすぎ、ご自分のお力を過信しすぎです。そのような認識では幾度も再発を繰り返すでしょうね」
凄まじいまでの正論にぐうの音も出ないロードリックだが、それでも首を縦には振らなかった。
せっかくマクシミリアンが戻ってきたと言うのに、これでは迷惑をかけてしまう。謀反では何の役にも立てなかったのだから、せめていつものように仕事をしてこれからも恩を返したい。
ロードリックは反論の口を開きかけたのだが、それよりも先に話し始めたのは他でもないマクシミリアンだった。
「話はよくわかった。先生の言う通り、この俺が責任を持って療養させよう」
「マクシミリアン様……!?」
マクシミリアンは揺るがぬ意思を赤い瞳に宿しているようだった。いや、そんなに深刻そうな顔をしないで欲しい。死ぬとか何とか言われはしたが、疲れが胃に出やすいだけで不治の病でもなんでもないのだ。
「マクシミリアン様、私は平気です。今はもうこの通り元気ですし、通院すればどうとでも」
「駄目だ、先生がゆっくり養生しろと言っているんだ。大人しく言うことを聞け」
否を言い放った領主を前に、医師はここで初めて笑みを見せた。どうやら彼にとっては満足行く返答だったようで、ロードリックもまた主君に言い含められては頷くしかなかった。
「そうしていただくのが一番よろしい。領主様、騎士団長閣下をお借りしますよ」
「ああ頼む、先生。どうか治してやってくれ」
ロードリックの眼前で男二人が握手を交わす。こちらは納得しきっていないのだが、患者の考えは完全無視で良いのだろうか。
しかし医師が出ていった後にマクシミリアンが突如として頭を下げたので、ロードリックは黙している場合ではなくなってしまった。
「マクシミリアン様、何を……⁉︎」
「ロードリック、すまなかった。俺が弱かったばかりに、お前に計り知れないほどの苦労をかけてしまったんだな」
「そのようなことはありません! どうか、お顔をお上げください!」
そう、顔を上げてもらわなければ、ロードリックはまた胃が痛くなってくる。己が不甲斐ないが故に主人に頭を下げさせてしまった、その事実がもうしんどいのだ。
無意識に胃の辺りを抑えたのをマクシミリアンは見逃さなかったらしい。痛ましげに目を細めた美しき主君は、すぐに何かを決意したように頷いた。
「大丈夫だ。お前がいなくとも俺はちゃんとブラッドリー領を治めるし、もう間違いを起こしたりもしない」
「え」
何だろうか。そこまできっぱり言い切られると、それはそれで複雑なのだが。
「今まで無理ばかりさせてしまったな。取れなかったぶんの休暇を今取ると思って、どうかゆっくり過ごしてくれ。仕事のことなど気にするなよ、皆で何とかしてみせるさ」
「マクシミリアン様、しかし」
「また見舞いに来るよ。お前の屋敷にも俺から連絡しておく。欲しいものがあったら電話をくれればすぐに遣いを出すから、何も気にせず治療だけに専念すればいい。わかったな」
ものすごく慈愛の込められた優しい声で諭した末、マクシミリアンは静かに帰って行った。
まるで余命宣告された子供をあやすかのような対応だ。釈然としないものを抱えたロードリックは、うっすらとした痛みがぶり返した胃を抱えてベッドに横たわるのだった。
近頃胃痛がひどくなってきたと思ってはいたが、まさか倒れるに至ってしまうとは。
マクシミリアンが帰ってくるまでの仮の領主になって以来、破天荒な部下たちも随分と協力してくれるようになったものの、騎士団長の業務と並行するにはいかんせん仕事量が多過ぎた。寝る間も惜しんで過ごしたこの数ヶ月、鍛錬に時間を割くこともできずに体重が落ちたような気はしていたのだ。
薬剤師のリシャールにも胃の痛みが取れないなら病院に行ったほうが良いと言われていたのに、後回しにした結果がこれだ。
「胃潰瘍ですね」
白く塗られた病室にて医師から告げられた診断結果は予想通りのものだった。
「毒でも盛られたのかと思ったぞ……」
ベッドで上体を起こした姿勢を取るロードリックの側で、腕を組んで仁王立ちになったマクシミリアンが安堵のため息をつく。
今の病室にはこの三人しかいない。先程まで室内には部下たちがひしめいていたのだが、やかましくて敵わなかったので追い出したのだ。
黒髪を七三分けにした四十絡みの医師は、眼鏡の奥の瞳を瞬かせてから淡々と言った。
「原因はストレスです。それに過労。勤務事情を確認させていただきましたが、常人がこなせる仕事量ではありません。抱えたご心労も並大抵のものではないはずです」
医師の目線は物怖じすることなく、我が領主を責める色を宿していた。
マクシミリアンが沈痛な面持ちで黙り込む。治癒魔法で痛みから解放されたロードリックは既に元気を取り戻していたので、とにかく居た堪れない気持ちになった。
「チェンバーズ騎士団長閣下。とにかく、貴方は入院して安静にせねばなりません。
仕事のことは忘れ、此度の謀反についても考えることなく、うすぼんやりとして毎日を過ごすのです」
「う、うすぼんやり……この私が、うすぼんやり……?」
「のんべんだらりでも結構ですよ。聞けば治癒魔法と薬に頼り、騙し騙し業務を続けてきたとか。
病とは原因を根絶しなければ再発するものなのです。
まずはストレスを取り除いて心身を休め、胃に空いた大穴を塞いでしまわなければ」
医師の言うことは紛れもない正論だったので、ロードリックもまた黙り込むしかなかった。
だがしかし、彼の言い分を実行するとなると、本当にしばらくの間は何もせずに過ごす羽目になってしまう。領主の仕事はマクシミリアンが帰ってきたから良いとしても、黒豹騎士団長の仕事は誰がこなすと言うのか。
「今、騎士団長の仕事は誰がこなすのか、とお考えでしたね?」
「何故それを!?」
なんなのだこの医師は。まさか他人の心が読めるとでも言うのだろうか。
「病人の考えることなど大概想像がつきます。いいですかチェンバーズ騎士団長閣下。貴方、こんなことを続けていたら死にますよ」
「死っ……!?」
医師のあまりの言い様にロードリックは絶句した。
それは流石にないだろうと笑い飛ばしたい気持ちで一杯なのに、医師の表情は大真面目だ。
「治癒魔法は便利ですが、自身の自己回復機能を増幅させているに過ぎません。
故に限界には個人差があり、その限界を超えているからこそ吐血をするほど重症化したのです。
要は無茶をしすぎ、ご自分のお力を過信しすぎです。そのような認識では幾度も再発を繰り返すでしょうね」
凄まじいまでの正論にぐうの音も出ないロードリックだが、それでも首を縦には振らなかった。
せっかくマクシミリアンが戻ってきたと言うのに、これでは迷惑をかけてしまう。謀反では何の役にも立てなかったのだから、せめていつものように仕事をしてこれからも恩を返したい。
ロードリックは反論の口を開きかけたのだが、それよりも先に話し始めたのは他でもないマクシミリアンだった。
「話はよくわかった。先生の言う通り、この俺が責任を持って療養させよう」
「マクシミリアン様……!?」
マクシミリアンは揺るがぬ意思を赤い瞳に宿しているようだった。いや、そんなに深刻そうな顔をしないで欲しい。死ぬとか何とか言われはしたが、疲れが胃に出やすいだけで不治の病でもなんでもないのだ。
「マクシミリアン様、私は平気です。今はもうこの通り元気ですし、通院すればどうとでも」
「駄目だ、先生がゆっくり養生しろと言っているんだ。大人しく言うことを聞け」
否を言い放った領主を前に、医師はここで初めて笑みを見せた。どうやら彼にとっては満足行く返答だったようで、ロードリックもまた主君に言い含められては頷くしかなかった。
「そうしていただくのが一番よろしい。領主様、騎士団長閣下をお借りしますよ」
「ああ頼む、先生。どうか治してやってくれ」
ロードリックの眼前で男二人が握手を交わす。こちらは納得しきっていないのだが、患者の考えは完全無視で良いのだろうか。
しかし医師が出ていった後にマクシミリアンが突如として頭を下げたので、ロードリックは黙している場合ではなくなってしまった。
「マクシミリアン様、何を……⁉︎」
「ロードリック、すまなかった。俺が弱かったばかりに、お前に計り知れないほどの苦労をかけてしまったんだな」
「そのようなことはありません! どうか、お顔をお上げください!」
そう、顔を上げてもらわなければ、ロードリックはまた胃が痛くなってくる。己が不甲斐ないが故に主人に頭を下げさせてしまった、その事実がもうしんどいのだ。
無意識に胃の辺りを抑えたのをマクシミリアンは見逃さなかったらしい。痛ましげに目を細めた美しき主君は、すぐに何かを決意したように頷いた。
「大丈夫だ。お前がいなくとも俺はちゃんとブラッドリー領を治めるし、もう間違いを起こしたりもしない」
「え」
何だろうか。そこまできっぱり言い切られると、それはそれで複雑なのだが。
「今まで無理ばかりさせてしまったな。取れなかったぶんの休暇を今取ると思って、どうかゆっくり過ごしてくれ。仕事のことなど気にするなよ、皆で何とかしてみせるさ」
「マクシミリアン様、しかし」
「また見舞いに来るよ。お前の屋敷にも俺から連絡しておく。欲しいものがあったら電話をくれればすぐに遣いを出すから、何も気にせず治療だけに専念すればいい。わかったな」
ものすごく慈愛の込められた優しい声で諭した末、マクシミリアンは静かに帰って行った。
まるで余命宣告された子供をあやすかのような対応だ。釈然としないものを抱えたロードリックは、うっすらとした痛みがぶり返した胃を抱えてベッドに横たわるのだった。
1
お気に入りに追加
1,035
あなたにおすすめの小説
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
「番外編 相変わらずな日常」
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる