31 / 91
第二章 戴冠式の夜
4 パレードは華やぐ
しおりを挟む
特別に設えられた階段を登りきった先には、眼下に人波が渦巻いているように見えた。青々と晴れ渡る空の下、誰もが満面の笑みを浮かべ、新たな皇帝夫妻の誕生を祝福している。舞い散る紙吹雪に、菓子や軽食、そして酒を売り歩く商人達。ジャグリングを披露する芸人や、そこかしこで円を作って笑い合う人々もいて、ブリストルの街はまさしくお祭り騒ぎの様相を呈していた。
「皆さんパレードを見にこられたのですね。本当に楽しそうな雰囲気です」
「ええ、きっとこの国ももっと良くなるでしょう。僕ら貴族がそう感じている以上に、彼らは期待しているんですよ。さあ、どうぞ」
ルーカスが案内したのは貴賓席の中でも最前列の特等席だった。挨拶をしつつその席に収まるも、周りに座るのは政府の重鎮や高位貴族とその家族達で、一斉に彼らの視線が集まるのを感じてしまう。ルーカスはセラフィナの緊張を感じ取ってか、いたずらっぽく笑うと自らも腰掛けた。
「大丈夫、皆あなたが美しいので驚いているだけです。あなたは既にアイゼンフート家の者なのだから、堂々としていれば良いのですよ」
ルーカスの物言いは相変わらずだったが、分不相応に感じてしまうこの待遇も、彼の言葉によって少し気が楽になる。そう、自分は既にアイゼンフート家に入った身なのだから、侯爵夫人として初の公式行事の出席となるこの機会を失敗に終えるわけにはいかない。
「そうですね、しっかりしなければ」
「うーん、俺は本当のことを言ったまでだったんだけど、なんだか変に気負わせてしまったかな」
「何かおっしゃいましたか?」
「いいえ、何でも。ああほら、そろそろ始まるようですよ」
高らかに奏でられる行進曲とともに、パレードの最前列を飾ったのは軍楽隊だった。人々は大きな歓声を上げ、パレードの始まりを大いに盛り上がって歓迎した。その声に応えるよう胸を張った彼らが一斉に楽器を高く掲げると、ひときわ大きな歓声が轟く。赤い制服の列は誰一人として遅れをとることなく進み、統率されたその動きに楽器の重さは少しも感じられなかった。
「凄い。どれだけ練習なさったのでしょう」
「無論、死ぬほどしごかれてましたよ。ここへ来て練習風景を見た時、俺はアルデリー所属で良かったと心から思ったものです」
「ふふ、ご冗談を」
一見皇帝への不敬と取れるような台詞でも、ルーカスが言うと嫌味に聞こえないから不思議だ。そうして彼と会話しつつパレードを楽しんでいるうちに、遠くに濃紺の軍服を着込んだ一団が現れた。
その先頭で美しい青鹿毛の馬に跨るのは他ならぬランドルフだ。その姿は遠目からでも間違いようがないほど堂々として見え、セラフィナはその凛々しさに一瞬言葉を失ってしまった。
——何て立派で、素敵なんだろう。
感じ入るままにじっと彼の乗馬姿を見つめていたのだが、しばらくしてルーカスにも教えてあげなければと思いつき隣を振り仰いだ。彼は既に気付いていたようで、嬉しそうにパレードの先を見据えている。
「ランドルフ様がいらっしゃいましたね!」
「流石に目立ってますね。身内から見てもかっこいいな、あれは」
自慢げなルーカスの言葉に呼応するようにして、周囲の歓声も一際大きくなる。民衆たちが見つめる先は例外なく黒獅子将軍その人だ。
「おい、もしかしてあれって、黒獅子将軍じゃねえか?」
「ああ、あのおっかなそうな風貌は多分そうだな」
「うわあ、俺こんな近くで見んの初めてだ! かっけえ!」
「将軍様、かっこい——!」
「アイゼンフート将軍! よっ、ヴェーグラントの英雄!」
「黒獅子様、こっち見てくださーい!」
「将軍様——!」
彼らは一様に興奮気味で、懸命にランドルフに歓声を送っていた。しかし当の本人は答える気がないようで、無表情で正面を向いたまま周囲を警戒している様に見える。
「すごい人気ですね。英雄として有名でいらっしゃるのは存じておりましたが、それでも驚きました」
「声援の八割が男って所が兄さんらしいですけどね。四年前の大戦に勝つことができたのは、兄の力によるところが大きいですから。女性、特に貴族はあまりの戦果に畏怖の気持ちの方が大きいようですし、実際子供は兄を前にすると十中八九泣きますが、民衆はちゃんと本質を見ているんですよ」
「ルーカス様にとっては自慢のお兄さんというわけですね」
「ええ。立派すぎて…時々眩しすぎるくらいには」
誇らしげに兄を語るルーカスに微笑ましい気持ちになっていたセラフィナは、ふと彼の表情に陰りが見えた気がして首を傾げた。何か失言をしてしまっただろうか。
セラフィナの不安に気付いたのか、彼は取り繕うように笑みを浮かべたが、やはりいつもの陽気さは影を潜めているようだった。
「すみません。いや、兄は立派な人でしょう? 弟の俺が言うのもなんですけど」
「ええ、それはもう」
「俺は昔から何をやっても普通で、取り柄といったら人好きのする見た目くらいなものです。だから時々ですけど、なんで俺なんかが弟なんだろうって、思うことがあるわけですよ」
ルーカスは冗談とばかりに茶化して見せたが、その言葉の内容にセラフィナは率直な驚きを覚えていた。彼は明るく社交的で、いつも悩みなどないように振舞っているが、その心に苦しさを抱えていたのだろうか。
「なんてね。すみません、忘れてください」
「そんなことをお考えになっては、あまりに寂しいですよ」
「……え」
「ランドルフ様は、ルーカス様に家のことを任せられるので助かっていると仰っておられました。私にも姉がいますが、本当にいつも心配してくれていました。無償の愛を交わせない家族もいるでしょうが、お二人はそんなご関係ではないはずです。いつだって心配なさっているはずですよ。大事な弟さんですもの」
この兄弟は大人になるにつれ微妙な心のすれ違いが起きてしまったのではないか。セラフィナにはそう思えてならなかった。
いつかランドルフが言っていたのだ。心配くらいする、弟なのだからと。
「お二人は互いを支え合うことのできる仲のいいご兄弟です。誰が何と言おうと、私はそう思います」
言い切ってしまってから、ルーカスの驚きに彩られた表情を見てセラフィナはふと我に返った。
もしかして自分は今、とんでもなくでしゃばりなことを言ったのではないだろうか。
「も、申し訳ありませんルーカス様! 出過ぎたことを」
「いいえ、ありがとうございます。俺は今、兄のところに来てくれたのがあなたで良かったと、心の底から思いました」
ルーカスは今まで見たこともないような優しい笑みを浮かべていた。その表情はセラフィナの胸にストンと落ち、これが彼の本当の笑顔なのだと直感的に理解する。
信頼できる人物であることは初対面から解っていたが、今ようやく彼の心の片鱗に触れたような気がした。
「……と。話している間に、もう兄さんがすぐそばまで来ていますよ」
「大変! どちらですか?」
あわててルーカスの視線の先を辿ると、あと十メートルという距離に求めていた姿を見つけることができた。
しかし様子がおかしい。先程は真正面を向いていたはずなのに、なんだかこちらを見ているような。
「うん、これはなんともわかりやすい」
「え? 何がですか?」
「いえこちらの話です。それよりも手を振らなくていいんですか?」
「ああ、そうですね!」
貴賓席に座る貴族たちは騒ぎ立てる様な真似はしなかったが、知り合いに手を振ったりしてそれぞれ楽しんでいるようだ。ランドルフの様子を見るに反応が帰ってくることはないだろうが、それくらいのことは許されるかもしれない。
セラフィナは少し身を乗り出す様にして、はしたなくない程度に、しかし精一杯大きく手を振ってみた。
するとどうだろう。彼は微かな微笑を浮かべ、敬礼を返してくれたではないか。
同時に周囲からどよめきが起こる。「え、ちょっと何、笑うとああいう顔をされるのね?」「かっこよくない?」などと娘さん方が囁きあっているようだ。
女性や子供にウケが悪いとは彼本人の弁だが、やはりああして笑うととても柔らかく見えるし、本来の凛々しい目鼻立ちが強調されるように思う。イメージされているような冷酷な軍人などではなく、とても優しく誠実な人なのだから、誤解さえ解ければ今よりももっと人気になるだろう。そう、女性達にだって。
そこまで考えたところで、セラフィナは胸に生じた苦い痛みに首を傾げた。経験したことのない、何だかもやっとするようなこの痛みはいったい何なのだろう。
暫く考えて、気のせいだと断じることにした。妻の立場としては夫が好意的な評価を受けることに喜ぶべきで、嫌だなどと思って良いはずもないのだから。
「はは、何だよ兄さんったら、本当に清々しいほどわかりやすいんだから。ね、そう思いませんか?」
「すみません、何がでしょう?」
「……うん! これは先が長そうだ。頑張らないとね、兄さん」
「はい……?」
以降ルーカスはニヤニヤとした笑いを隠そうともせず、それは皇帝夫妻が登場するまで続いた。そしてパレードが終わりを迎えると、彼は「俺の役目は終わったので」と言い残して、慌ただしくアルデリーへの帰途に着いたのだった。
「皆さんパレードを見にこられたのですね。本当に楽しそうな雰囲気です」
「ええ、きっとこの国ももっと良くなるでしょう。僕ら貴族がそう感じている以上に、彼らは期待しているんですよ。さあ、どうぞ」
ルーカスが案内したのは貴賓席の中でも最前列の特等席だった。挨拶をしつつその席に収まるも、周りに座るのは政府の重鎮や高位貴族とその家族達で、一斉に彼らの視線が集まるのを感じてしまう。ルーカスはセラフィナの緊張を感じ取ってか、いたずらっぽく笑うと自らも腰掛けた。
「大丈夫、皆あなたが美しいので驚いているだけです。あなたは既にアイゼンフート家の者なのだから、堂々としていれば良いのですよ」
ルーカスの物言いは相変わらずだったが、分不相応に感じてしまうこの待遇も、彼の言葉によって少し気が楽になる。そう、自分は既にアイゼンフート家に入った身なのだから、侯爵夫人として初の公式行事の出席となるこの機会を失敗に終えるわけにはいかない。
「そうですね、しっかりしなければ」
「うーん、俺は本当のことを言ったまでだったんだけど、なんだか変に気負わせてしまったかな」
「何かおっしゃいましたか?」
「いいえ、何でも。ああほら、そろそろ始まるようですよ」
高らかに奏でられる行進曲とともに、パレードの最前列を飾ったのは軍楽隊だった。人々は大きな歓声を上げ、パレードの始まりを大いに盛り上がって歓迎した。その声に応えるよう胸を張った彼らが一斉に楽器を高く掲げると、ひときわ大きな歓声が轟く。赤い制服の列は誰一人として遅れをとることなく進み、統率されたその動きに楽器の重さは少しも感じられなかった。
「凄い。どれだけ練習なさったのでしょう」
「無論、死ぬほどしごかれてましたよ。ここへ来て練習風景を見た時、俺はアルデリー所属で良かったと心から思ったものです」
「ふふ、ご冗談を」
一見皇帝への不敬と取れるような台詞でも、ルーカスが言うと嫌味に聞こえないから不思議だ。そうして彼と会話しつつパレードを楽しんでいるうちに、遠くに濃紺の軍服を着込んだ一団が現れた。
その先頭で美しい青鹿毛の馬に跨るのは他ならぬランドルフだ。その姿は遠目からでも間違いようがないほど堂々として見え、セラフィナはその凛々しさに一瞬言葉を失ってしまった。
——何て立派で、素敵なんだろう。
感じ入るままにじっと彼の乗馬姿を見つめていたのだが、しばらくしてルーカスにも教えてあげなければと思いつき隣を振り仰いだ。彼は既に気付いていたようで、嬉しそうにパレードの先を見据えている。
「ランドルフ様がいらっしゃいましたね!」
「流石に目立ってますね。身内から見てもかっこいいな、あれは」
自慢げなルーカスの言葉に呼応するようにして、周囲の歓声も一際大きくなる。民衆たちが見つめる先は例外なく黒獅子将軍その人だ。
「おい、もしかしてあれって、黒獅子将軍じゃねえか?」
「ああ、あのおっかなそうな風貌は多分そうだな」
「うわあ、俺こんな近くで見んの初めてだ! かっけえ!」
「将軍様、かっこい——!」
「アイゼンフート将軍! よっ、ヴェーグラントの英雄!」
「黒獅子様、こっち見てくださーい!」
「将軍様——!」
彼らは一様に興奮気味で、懸命にランドルフに歓声を送っていた。しかし当の本人は答える気がないようで、無表情で正面を向いたまま周囲を警戒している様に見える。
「すごい人気ですね。英雄として有名でいらっしゃるのは存じておりましたが、それでも驚きました」
「声援の八割が男って所が兄さんらしいですけどね。四年前の大戦に勝つことができたのは、兄の力によるところが大きいですから。女性、特に貴族はあまりの戦果に畏怖の気持ちの方が大きいようですし、実際子供は兄を前にすると十中八九泣きますが、民衆はちゃんと本質を見ているんですよ」
「ルーカス様にとっては自慢のお兄さんというわけですね」
「ええ。立派すぎて…時々眩しすぎるくらいには」
誇らしげに兄を語るルーカスに微笑ましい気持ちになっていたセラフィナは、ふと彼の表情に陰りが見えた気がして首を傾げた。何か失言をしてしまっただろうか。
セラフィナの不安に気付いたのか、彼は取り繕うように笑みを浮かべたが、やはりいつもの陽気さは影を潜めているようだった。
「すみません。いや、兄は立派な人でしょう? 弟の俺が言うのもなんですけど」
「ええ、それはもう」
「俺は昔から何をやっても普通で、取り柄といったら人好きのする見た目くらいなものです。だから時々ですけど、なんで俺なんかが弟なんだろうって、思うことがあるわけですよ」
ルーカスは冗談とばかりに茶化して見せたが、その言葉の内容にセラフィナは率直な驚きを覚えていた。彼は明るく社交的で、いつも悩みなどないように振舞っているが、その心に苦しさを抱えていたのだろうか。
「なんてね。すみません、忘れてください」
「そんなことをお考えになっては、あまりに寂しいですよ」
「……え」
「ランドルフ様は、ルーカス様に家のことを任せられるので助かっていると仰っておられました。私にも姉がいますが、本当にいつも心配してくれていました。無償の愛を交わせない家族もいるでしょうが、お二人はそんなご関係ではないはずです。いつだって心配なさっているはずですよ。大事な弟さんですもの」
この兄弟は大人になるにつれ微妙な心のすれ違いが起きてしまったのではないか。セラフィナにはそう思えてならなかった。
いつかランドルフが言っていたのだ。心配くらいする、弟なのだからと。
「お二人は互いを支え合うことのできる仲のいいご兄弟です。誰が何と言おうと、私はそう思います」
言い切ってしまってから、ルーカスの驚きに彩られた表情を見てセラフィナはふと我に返った。
もしかして自分は今、とんでもなくでしゃばりなことを言ったのではないだろうか。
「も、申し訳ありませんルーカス様! 出過ぎたことを」
「いいえ、ありがとうございます。俺は今、兄のところに来てくれたのがあなたで良かったと、心の底から思いました」
ルーカスは今まで見たこともないような優しい笑みを浮かべていた。その表情はセラフィナの胸にストンと落ち、これが彼の本当の笑顔なのだと直感的に理解する。
信頼できる人物であることは初対面から解っていたが、今ようやく彼の心の片鱗に触れたような気がした。
「……と。話している間に、もう兄さんがすぐそばまで来ていますよ」
「大変! どちらですか?」
あわててルーカスの視線の先を辿ると、あと十メートルという距離に求めていた姿を見つけることができた。
しかし様子がおかしい。先程は真正面を向いていたはずなのに、なんだかこちらを見ているような。
「うん、これはなんともわかりやすい」
「え? 何がですか?」
「いえこちらの話です。それよりも手を振らなくていいんですか?」
「ああ、そうですね!」
貴賓席に座る貴族たちは騒ぎ立てる様な真似はしなかったが、知り合いに手を振ったりしてそれぞれ楽しんでいるようだ。ランドルフの様子を見るに反応が帰ってくることはないだろうが、それくらいのことは許されるかもしれない。
セラフィナは少し身を乗り出す様にして、はしたなくない程度に、しかし精一杯大きく手を振ってみた。
するとどうだろう。彼は微かな微笑を浮かべ、敬礼を返してくれたではないか。
同時に周囲からどよめきが起こる。「え、ちょっと何、笑うとああいう顔をされるのね?」「かっこよくない?」などと娘さん方が囁きあっているようだ。
女性や子供にウケが悪いとは彼本人の弁だが、やはりああして笑うととても柔らかく見えるし、本来の凛々しい目鼻立ちが強調されるように思う。イメージされているような冷酷な軍人などではなく、とても優しく誠実な人なのだから、誤解さえ解ければ今よりももっと人気になるだろう。そう、女性達にだって。
そこまで考えたところで、セラフィナは胸に生じた苦い痛みに首を傾げた。経験したことのない、何だかもやっとするようなこの痛みはいったい何なのだろう。
暫く考えて、気のせいだと断じることにした。妻の立場としては夫が好意的な評価を受けることに喜ぶべきで、嫌だなどと思って良いはずもないのだから。
「はは、何だよ兄さんったら、本当に清々しいほどわかりやすいんだから。ね、そう思いませんか?」
「すみません、何がでしょう?」
「……うん! これは先が長そうだ。頑張らないとね、兄さん」
「はい……?」
以降ルーカスはニヤニヤとした笑いを隠そうともせず、それは皇帝夫妻が登場するまで続いた。そしてパレードが終わりを迎えると、彼は「俺の役目は終わったので」と言い残して、慌ただしくアルデリーへの帰途に着いたのだった。
1
お気に入りに追加
1,524
あなたにおすすめの小説
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。
十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。
そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり──────
※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。
※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
「番外編 相変わらずな日常」
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる