勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

外伝～始まりの世界～

外伝01

　勇者が召喚される前日の出来事。

「あの大司祭・・・、何を考えてるのやら」

　王都の王宮内部、広い庭が見える通路。そこに大臣らが会話をしていた。

「全くもって分かりません。前まで4人召喚すると言っておきながら、突如と5人と言っておられた。そして、質問すると『そのような事は一言も言っておりません』と言うものだ」
「何が彼を変えたのか、彼の身に何が起こったのか・・・」

　大臣らは昨日の会話を思い出しながら会話をしていた。王都の大臣は全員で12名いる。大司祭、召喚の儀式の中心人物である彼もその1人だ。
　彼らは政治を担当するために、騎士団などを命令する権限などはない。
　悩みながらも、そのような回答は一切分からなかった。

「まあまあ、考えても何も生まれないことです。ここは一度、冷静になってからお考えては？」

　3人いるうちの1人が、深く考える彼らへと声を掛ける。だが、その言葉は彼らに通じることなどなく、

「オーダム卿。そなたも考えてはくれぬか」
「ハハハ・・・、いいじゃないですか。1人増えた所で状況は良い方に動くかもしれませんよ？」
「そのような事は考えてないのですよ。大司祭が突如と言葉を変える・・・。今までそのような事あったでしょうか」

　そう、大司祭は今まで言葉を訂正するような事などなかった。長年彼を見てきた彼らは、それを見逃すことなどしなかった。

「もしかしたら、我々の聞き間違い・・・とかもありえるかもですよ」

　オーダムは笑いながら、彼らへと話を続けていく。

「それに我々だって、もうご老人。年もそれなりです」
「確かに、最近私は聞き間違いもよくするようになった」

　彼の言葉に理解したのか、1人の大臣が反応を示した。オーダム卿は両手を合わせた。

「この話はこれで終了・・・、それでいいですかね？」
「そうですな。それに、今後魔王軍の動きも気になることですし」

　明るい光が照らす通路。立ち止まっていた3人は歩き出した。