ショートショートショート

22

ーーヒュッ













ーーバンッ













ーーヒュッ











ーーバンッ













誰もいないブルペンで無言で繰り返される白球のやり取り

一人が地を踏み締め、腕の筋肉と遠心力から繰り出されるソレを


遠距離に座る己がゆっくりと噛み締め、パンっと、軽い音と共に受け止める


「ナイスボール」

顔に被ったマスクを上げつつ、少しの山なりの放物線を描き、手首のスナップだけで飛ばした白球は

足元の土を片足で平しつづけるグローブへと吸い込まれーー

俯きがちにソレを受け取る。

指先で挟んだ白球を真横に揺らしゆっくりと正眼に構える様を見て、ニヤリと笑い座り込みながら、同じく真っ直ぐに相対する。


ーーヒュッ











ーーバンッ












「ナイスボール」











それ以上の会話すら不要











繰り返されるその行為は、春先へと繋がる











今はまだ冬


ただ、その先の季節につながるよう


ひとつ


また


ひとつ


積み上げていく。












「最後、真っ直ぐ」











「ナイスボール」











そうして、明日もまた、積み重ねていくのだ。


ーーfin