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第1章
女皇 ジュリア
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明らかに不機嫌そうなジュリアの様子に コルタデソルトJrは焦ったように両手に伸ばして必死に手を振り否定をする
「い、いえ!滅相もございません!お休みのところ申し訳ありません!」
先ほどの口調とは違い、ハキハキと言葉を発している。やはり噂通り、権力者には擦り寄るタイプのようだ。ジュリアは、それをフンと鼻を鳴らしながら視線を横にずらして侍らせている男の一人の顎を撫でながら口を開く。
「……で。どういうこと?取り急ぎ報告したいという事は。私の時間を邪魔したのだから、相応のものでなければ許さないわよ」
ジュリアの言葉に、姿勢を正した彼は口を開き報告をしたのだった。彼が報告したのは以下の数点である。
・御伽噺の中でしか存在し得ないと言われていた闇属性と光属性を持つ二人が現れた
・測定用の水晶玉が示したBランク相当の能力の高さ
・ザーコとオークに喧嘩をふっかけられ戦う事になった末の結末
・その戦いの後に、オークが人間から獣に変化した事実
・今は、ロゼと行動している事
それを聞いているジュリアの顔色が徐々に真っ赤になり、まるで瞬間湯沸かし器のようになっていたのであった。
「……まずは、御伽噺でよく聞くモノが実際に現れるとはね。無論、Bランク相当という高ランクを持ってね。国としては、脅威である反面味方につければ心強いでしょう。ねぇ、光属性の騎士は顔は整っていたかしら」
突然向けられた想像外のセリフに彼はすぐには答えられなかった。
「は?」
一度で答えられなかった彼の態度にジュリアは、表情を豹変させ近くの青年の腹を蹴り上げる。その青年は呻くような声を上げて倒れこむが、彼女は気にした様子はなく近くの他の青年達はその様を痛々しい表情にて見下ろすが手を差し出すことはしない。
何故ならば、今下手に触れるならば彼女の怒りを買うことになり更に激昂した彼女の折檻が続いて時間が長続きするからである。
「その騎士は見目麗しく、美しいのかって、聞いてるのよ!この雑魚が。一度で聞き取れないのかしら!使えないわね!」
そう言いながら、ジュリアは立ち上がり先程蹴り上げた青年の背中を高いヒールで何度も踏みつける。青年な最早諦めたように抵抗すら見せず、折檻を受け続けている。それはまるで嵐が過ぎ去るのを頭を垂らして待っているかのようにだ。
その様に気がついたコルタデソルトJrは、慌てて口を開きジュリアの言葉に答えるのであった。
「落ち着きくださいませ、女皇様。非常に見目麗しく貴方様のお眼鏡に叶うかと思われます。お手元の水晶に後程、姿をお送りします」
その言葉が聞こえれば、途端にジュリアは振り向きニッコリと笑いながら先程足蹴にした青年の髪を労わるかの如くサラサラと撫でて先を促すように改めてコルタデソルトJrに視線を向ける。青年はボロボロの体ながらもジュリアの手に擦り寄る。
「あら、そう。是非お会いしてみたいわ。でも、その騎士は闇属性の女といるのよね。私を差し置いて、生意気だわ。この国に立ち入ったのだから全ては私のものなのに。お母様も嘆き悲しむに違いないわ。ふふっ。コルタデソルトJr、貴重なことを教えてくれた貴方に勅命よ」
ジュリアは、笑顔を崩さずにそんなことを言いながらコルタデソルトJrをまっすぐに見据える。対して、勅命を与えられるコルタデソルトJrはゆっくりと息を呑む。
「 最近、我が国に平和を乱す黒い女の魔王が生まれたそうなの。それは、白くて腕の立つ白い騎士を篭絡したそうなの。その魔王…いや魔女が我が国に於いて、貴方から見てそれが反乱の意思を示そうものなら、討伐対象に指定するわ。魔女を破壊し、貴方の裁量で処置を許可、煮るも焼くも貴方の好きにしなさい。貴方の性癖?趣味に付き合わせても構わないわ。私からは以上よ」
その言葉を聞いたコルタデソルトJrは途端に下卑た笑顔を浮かべ、ジュリアに一礼をし、ただ一言だけ「御意に」と告げて通信を打ち切る。
不穏な雰囲気が漂う中、コルタデソルトJrはニタリと粘っこく笑い口を開くのだ。
「女皇様、それは酷だというものです。然し乍ら、あの顔が絶望に染まり上がるのは私としても、甘美に違いありませんがねェ」
そう言ったコルタデソルトJrは、記録で見た少女の顔を思い浮かべながら来た道を戻り己の執務室へ戻っていくのであった。
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閲覧ありがとうございました。
今回は、カナ以外のsideを書き上げました。
また見て頂けると幸いです。
「い、いえ!滅相もございません!お休みのところ申し訳ありません!」
先ほどの口調とは違い、ハキハキと言葉を発している。やはり噂通り、権力者には擦り寄るタイプのようだ。ジュリアは、それをフンと鼻を鳴らしながら視線を横にずらして侍らせている男の一人の顎を撫でながら口を開く。
「……で。どういうこと?取り急ぎ報告したいという事は。私の時間を邪魔したのだから、相応のものでなければ許さないわよ」
ジュリアの言葉に、姿勢を正した彼は口を開き報告をしたのだった。彼が報告したのは以下の数点である。
・御伽噺の中でしか存在し得ないと言われていた闇属性と光属性を持つ二人が現れた
・測定用の水晶玉が示したBランク相当の能力の高さ
・ザーコとオークに喧嘩をふっかけられ戦う事になった末の結末
・その戦いの後に、オークが人間から獣に変化した事実
・今は、ロゼと行動している事
それを聞いているジュリアの顔色が徐々に真っ赤になり、まるで瞬間湯沸かし器のようになっていたのであった。
「……まずは、御伽噺でよく聞くモノが実際に現れるとはね。無論、Bランク相当という高ランクを持ってね。国としては、脅威である反面味方につければ心強いでしょう。ねぇ、光属性の騎士は顔は整っていたかしら」
突然向けられた想像外のセリフに彼はすぐには答えられなかった。
「は?」
一度で答えられなかった彼の態度にジュリアは、表情を豹変させ近くの青年の腹を蹴り上げる。その青年は呻くような声を上げて倒れこむが、彼女は気にした様子はなく近くの他の青年達はその様を痛々しい表情にて見下ろすが手を差し出すことはしない。
何故ならば、今下手に触れるならば彼女の怒りを買うことになり更に激昂した彼女の折檻が続いて時間が長続きするからである。
「その騎士は見目麗しく、美しいのかって、聞いてるのよ!この雑魚が。一度で聞き取れないのかしら!使えないわね!」
そう言いながら、ジュリアは立ち上がり先程蹴り上げた青年の背中を高いヒールで何度も踏みつける。青年な最早諦めたように抵抗すら見せず、折檻を受け続けている。それはまるで嵐が過ぎ去るのを頭を垂らして待っているかのようにだ。
その様に気がついたコルタデソルトJrは、慌てて口を開きジュリアの言葉に答えるのであった。
「落ち着きくださいませ、女皇様。非常に見目麗しく貴方様のお眼鏡に叶うかと思われます。お手元の水晶に後程、姿をお送りします」
その言葉が聞こえれば、途端にジュリアは振り向きニッコリと笑いながら先程足蹴にした青年の髪を労わるかの如くサラサラと撫でて先を促すように改めてコルタデソルトJrに視線を向ける。青年はボロボロの体ながらもジュリアの手に擦り寄る。
「あら、そう。是非お会いしてみたいわ。でも、その騎士は闇属性の女といるのよね。私を差し置いて、生意気だわ。この国に立ち入ったのだから全ては私のものなのに。お母様も嘆き悲しむに違いないわ。ふふっ。コルタデソルトJr、貴重なことを教えてくれた貴方に勅命よ」
ジュリアは、笑顔を崩さずにそんなことを言いながらコルタデソルトJrをまっすぐに見据える。対して、勅命を与えられるコルタデソルトJrはゆっくりと息を呑む。
「 最近、我が国に平和を乱す黒い女の魔王が生まれたそうなの。それは、白くて腕の立つ白い騎士を篭絡したそうなの。その魔王…いや魔女が我が国に於いて、貴方から見てそれが反乱の意思を示そうものなら、討伐対象に指定するわ。魔女を破壊し、貴方の裁量で処置を許可、煮るも焼くも貴方の好きにしなさい。貴方の性癖?趣味に付き合わせても構わないわ。私からは以上よ」
その言葉を聞いたコルタデソルトJrは途端に下卑た笑顔を浮かべ、ジュリアに一礼をし、ただ一言だけ「御意に」と告げて通信を打ち切る。
不穏な雰囲気が漂う中、コルタデソルトJrはニタリと粘っこく笑い口を開くのだ。
「女皇様、それは酷だというものです。然し乍ら、あの顔が絶望に染まり上がるのは私としても、甘美に違いありませんがねェ」
そう言ったコルタデソルトJrは、記録で見た少女の顔を思い浮かべながら来た道を戻り己の執務室へ戻っていくのであった。
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