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こんばんは9時になりました
ニュースをお伝えします
今日未明 史草川の上流で男女3人の遺体が発見されました
遺体は死後数ヶ月経過していると見られ詳しい経緯を警察が捜査中です
では現場を中継で繋ぎたいと思います
現場の高藤さん
はい現場の高藤です
私は今遺体が発見された史草川に来ています
見えますでしょうか?
規制線の張られた奥のブルーシート
あちらで男性1人女性2人の遺体が発見されました
鮎釣りで史草川にこられた人達が重なりあった遺体を発見し警察に110番通報したとの事です
衣服など身につけておらず捜査関係者は身元調査は難航しそうだと話しています
それでは第一発言者の男性にお話を伺います
いや~びっくりしました
異様な光景でしたから
最初マネキンの不法投棄かと思いました
仲間が死体だと騒ぎましてね
慌てて110番したんですよ
現場からは以上です
高藤さんありがとうございました
さて次のニュースです
紀田さんいるんでしょ
家賃払ってくださいよ
もう3ヶ月たまってますよ!
紀田さん?紀田さん?
ちっうるさい…
鍵開けますよ‼︎
マジかよ
面倒くさい
「すんません」
「ほらいるじゃない」
「居留守なんて使わないでよ
もう今月入金してくれなかったら出ていってもらいますからね」
「はい、はい」
払えるならとっくに払ってるんだよ
電気も止まってる
ガスも止まってる
水道も止まってる
携帯も止まってる
ただ布団にうずくまって日々やり過ごす
腹が減る感覚も睡魔の感覚も息をしている感覚さえも欠落
生きているのかさえわからないような毎日
大学を辞めて5ヶ月
アルバイトを辞めて1ヶ月
金が底をついて1週間
公園の水で生き延びてる日々
死を目前にしているのに全く危機感がない
元々楽天的な性格
座右の銘はなるようになる
布団から出たついでに外に出た
季節はもう春
外の空気が和らいで頬を撫でる風が心地いい
太陽に当たったのは何日ぶりだろうか
少し汗ばんで着古したパーカーの袖をまくる
毛玉だらけのジャージのポケットを探ると電源の切れた携帯
携帯が使えれば今の生活から抜け出せるのに世の中の情報全てがこの小さな機械の中にある
目的なく歩いているようで足が向いたのは命綱 今の俺を救ってくれそうなのはこの場所しかない
「紀田くん久しぶりやね」
「お久しぶりです」
「どうしたんね…痩せてしもうて」
「シャワー浴びさせてもらって良いですか?」
「良いよ良いよ入りんさい」
「すいませんいつも甘えてしまって」
「遠慮しなさんな」
マイロの指摘通り俺は気のいい老人をカモにしてる。そんな気はないのにやってる事はタチの悪い詐欺師と変わらない
「お邪魔します」
申し訳なさそうなポーズを取ってドロドロの靴を脱ぐと勝手知ったる家の中をつま先だちで歩いた
「何か食べるよね?」
軽く頷く
厚かましい
わかっている
この老人が笑顔で迎えてくれるこの場所が最期の砦
込み上げてくる嗚咽をかき消すように熱いシャワーを浴びる
何も考えないようにする
風呂場から出ると柔軟剤でふかふかのバスタオルと新品の下着
空腹だった
汚いパーカーから携帯を取り出してしれっと充電を始める
人として間違っているとわかっているが藁に縋っているんだ
いい匂いにつられて腹がぐうぐうなって体が正直すぎて少し笑える
中林老人の作ってくれた肉じゃがを食べながら家を追い出されそうな事
親には頼れないこと
知らず泣きながら生きていることが辛いこと
中林老人は何も言わずに聞いて「ここに住んだらええ」と言って布団を引いてくれた
中林老人と出会ったのは大学を辞めた事がバレて親に仕送りを止めると言われ駅のベンチで途方に暮れていた日だ
「お兄ちゃんちょっと教えて欲しいんやけど」
よっぽど暇そうに見えたのか尋常じゃない感を醸し出してたのかそんな俺に中林老人が声をかけてきた
面倒くさい
とっさに顔を伏せ聞こえてないふりをしたが目の前に佇む老人の靴が美しく上等な革靴で興味が湧いた
こんな靴を履いているのはどんな人物なのか
歳の頃は70前後
肌艶が良い いいものを食べているんだろう
白髪混じりの髪を撫でつけて上品で物腰の柔らかい敵を作らないであろう笑みで俺を見下ろしている
目の奥は笑っていなかった
ゾクっと鳥肌がたつ
「お兄ちゃんちょっと教えて」
もう一度繰り返される言葉
「何すか?」
「これどこやろ?」
メモを渡されたが知らない場所だった
「すいません…わかりません」
「全くか?」
「全くです」
「そうか」
「お兄ちゃん携帯いうのあるやろ?ちょっと調べてくれんかな?」
正直面倒くさいとは思ったが目の奥が笑ってない上品で金持ちの老人には断れない押しがあった
「いいすよ」
携帯を取り出して渡された住所を打ち込む
地図アプリを確認すると案外近かった
駅から徒歩5分
「駅から近い言われたからタクシー乗るのも悪いなぁ思ったんやけどどうやろ?」
「徒歩5分って出てますけど暇なんで案内しましょうか?」
「本当か?悪いなぁごめんなぁ」
「いいすよ」と立ち上がる
地図に示された場所は山の手らしい
この老人が目指すこんな場所に何があるのか?
もしかすると謝礼でも貰えるかも知らないと打算的に考えた事
この老人に恩を売りたいと思った事
今日のシフトがなかったから本当に暇だった事
全てが自分の判断だったとその時の俺は思った
駅を出て歩き始める
老人は革靴をカツカツと響かせながらつかず離れず距離を取り聖の後を歩く
並んで歩けないほどの歩道では無い
並ばれても困るちゃ困るけど後ろを気にしながら歩くのは結構疲れた
「お兄ちゃん何歳?」
そして黙って歩くには厳しい
「21です」
「見たところ学生さん?」
「まぁはい」
「うちの孫も大学生や けど全く勉強しとらんわ」
「アルバイトとかしとる?」
「はい」
「どんな仕事?」
「コンビニの深夜です」
「そりゃ大変やな 働くのはどんな仕事も大変やけど夜中働くのはしんどいなぁ」
「平日の深夜はそんなに大変じゃないですよ」
「でも強盗とか来たら怖いがな」
「はぁまぁでもその分時給はいいんで」
「そうかぁ金稼ぐのはいつの時代も大変や
うちの孫はパソコンかちゃかちゃやって金稼いどるらしい
ようわからん怪しい奴やハハハ」
老人とは思えない良く通る声
「金は頭より体使って稼いだ方がありがたみがあるわな」
「どんな金でもありがたみはありますよ」
「ハハハそうだそうだ」
「悪いねこんな老人に付き合わせて
一人暮らしをしていると会話する事が楽しくてついついおしゃべりになってしまう
老人の戯言だから聞き流してくれるかな?」
老人はたわいの無い会話を続けたがり聖は曖昧な返事をする
先を歩く俺の微妙な表情が見えないから老人は息継ぎ以外はずっと喋りっぱなしだ
庭の桜に蕾ができた事
5年前に連れ合いが癌で死に一人暮らしだという事
たまに孫がやってくる事
冷蔵庫を新調した事
車の免許を返上した事
オレオレ詐欺が怖くて家の電話を解約した事
個人情報がダダ漏れだ
「お兄ちゃん何処ら辺に住んでる?」
俺の個人情報は保護されるべき
「私はね史草奥の方なんだよ」
「え?俺も史草です史草川の辺です」
「ほおそうかぁ世間は狭いね
案外すれ違っているかもしれないな」
声をかけられた片森の駅は史草から電車で15分だ
近くもないし遠くもない
偶然同じ地域に住んでいても特別不思議な事ではないが聖は老人を身近に感じた
史草奥は古くからの地主が多く立派な家が立ち並ぶエリアだ
住人しか踏み入れてはいけないオーラを放ちその閉塞感は異様で何処も立派な門があり高い塀に囲まれているイメージだ
庭に桜がある程大きな家にこの老人は1人で暮らしているのか
俺にはどんな暮らしぶりなのか想像できなかった
「ちょっと足にくるな」
老人が立ち止まる
緩やかに長い坂道
携帯に目をやるとこの先に目的地はあるはずだ
「この坂道の先を右手に曲がれば着きますよ」
「そうかそうかじゃ頑張らないとな」
「タクシー乗ればすぐでしたね」
「いやいやお兄ちゃんと話してこうやって坂道を登る事はいい経験だよ
この年になれば新しい経験はそんなにないから」
そういいながら知らない場所を探して歩くのか?金持ちの老人わ
黒塗りの大きな車が脇を通り過ぎて止まる
中からかしこまった男が降りてきて俺を跳ね除けてペコペコと頭を下げる
「中林さま!お迎えに上がりましたのに
すれ違いになりましたね 申し訳ございません」
「このお兄ちゃんに道案内してもらったから大丈夫だよ」
かしこまり男が俺を見る
「さぁさ車に」
「もうすぐそこだから歩くよ 兄ちゃんいいかな?」
「あっ俺はもうこれで」
「そんな事言わずにご飯まだだろ?
なんでも大層美味しいものを食べさせてくれるらしいからこれも縁だしご馳走するよ
でも」
かしこまり男は早く去れとでも言いたそうだ
「あの吉葉さまはもうおつきで五条さまは遅くなるとの事です」
「そうかい 五条は遅れるのかあいつはいつも遅刻する 私も時間ギリギリか?もう道はわかるから先に店に帰ってもう一人前用意してくれる?」
「はぁ」
まただこの老人のノーと言わせないオーラ
かしこまり男がすごすごと車に戻り車が発進すると中林老人は聖を追い抜いて坂道を登りきり手招きをして聖を待っている
「いいんすか?」
「いいよいいよ」
同意を得て坂を登り右手に目をやる
城か?立派な石垣と奥に伸びる石畳
暖簾も看板もない
ここがどんな所か?何も思い浮かばない
ただ自分とは一生縁のない場所という事はわかる
さっきのかしこまり男が門の前にスタンばってる
「ようこそおいでくださいました 中林様
お連れ様はどういたしましょうか?同じ部屋と言うわけにはいかないので」
場違いな俺
かしこまり男の眉が引き攣っているととびきりの赤美人が飛び出して来て俺を見た
「中林さん困らせるのはやめにして下さい」
赤いドレス赤い口紅赤い靴年齢不詳
「吉葉
こんなわかりにくい所に来れたのもこのお兄ちゃんのおかげなんだよ」
「タクシーに乗ればすぐなのに歩くなんて」
「とにかくこのお兄ちゃんにご馳走すると言ったんだから嘘はつけん」
「ご馳走は出来るはずよね?この人に失礼の無いようなおもてなしくらいできるわよね?」
「はい それはもちろんでございます」
「信用できんこいつの目は人を見下す目じゃ」
それは俺でもわかった
吉葉と呼ばれる美人がマジックのように何処からか携帯電話を取り出して何処かに電話する
「小中君?ちょっとエントランスまで出て来れる?
中林さんがお出迎えの人が信用出来ないってごねてるのよ…面倒くさいとは思うけどごめんなさい」
なんか偉い人が来るようだ
電話を切ったとたん壁だと思っていた場所つなぎ目の無い扉が開いて小中氏が現れる
忍者屋敷?
無言ではあるが深いお辞儀
一目で残高一億でも預金通帳を任せられそうな信用できる人物だと思えた
「この中林さんのおつれの方に失礼のないよう格別なおもてなしをお願いします」
中林老人も少し落ち着いたようで小中氏を見る
「かしこまりました」
低い声腹式呼吸
「なんかすいません」
恐縮しかない俺
「お兄ちゃんが謝る事なんか何もない」
いやいやすいません
「名前聞いていいかな?」
「はぁ紀田聖です」
「コウキいい名前やね
じゃキダコウキ君帰りは送ってもらいなさい」
「いやいやとんでもないです」
「かしこまりました」
「細田は中林様と吉葉様を
紀田様はこちらへ」
中林老人が軽く手を上げてまた別の壁扉へ
俺は小中の後に
つなぎ目のない壁から出現する扉が開くと8畳ぐらいの寿司カウンター付き部屋に出た
割腹のいいいかにも板前さんが軽く頭を下げる
「一応お任せで料理は出て来ますがなんでもお好きなものを注文してくださって構いませんよ
とりあえず2日この部屋を押さえておきますので ゆっくりとお過ごし下さいませ」
小中の話は素晴らしく魅力的な話だか聖は今出て来たであろう壁扉を凝視する
その視線に気づいて小中が嫌味のない紳士らしい笑みを浮かべた
「この扉は特別なんですよ
皆さん驚かれるんですが従業員のIDが反応して扉が開くんですよ
従業員の階級によって開く扉の数が違うんです
完全会員制クラブですからプライバシーが完全じゃないと困りますからね
この部屋の隣で一国の政治が行われてるかもしれませんよ」
そのスマイル冗談とは思えない
「紀田様ようこそ
秘密クラブ花水木へ」
秘密クラブ花水木
なんて隠秘な響き
聖は案内されるがままカウンター席に座りお絞りを受け取った
「お1人での食事は寂しいですか?お相手できる女性もお呼び出来ますがどうでしょうか?」
そりゃこの板前さん2人の空間は少々しんどい
でもホイホイそんな提案に乗るのも憚れる
「はぁ…?どうしましょうか?」
答えに困ったら質問に質問で返すことが1番の正解
「私にお任せ下さるという事でよろしいでしょうか?」
曖昧にうなづく
「それでは一旦私は退席させて頂きます」
つなぎ目のない壁の前に立ち失礼いたしますと聞こえた時には姿は無かった
「今日調理を担当いたします赤坂です
よろしくお願いします
では特にリクエストが無ければ調理を始めさせて頂きます
まずは付け出しと冷酒を」
底辺で生きているようなこんな人間にものすごく丁寧に接する事がかえって馬鹿にされているようで聖はあまり気分が良くなかったがカウンターの奥から女性が現れた事でそんな事はどうでも良くなってしまう
「高羽ですご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
小中さんナイスーと叫びたい
白のボウタイブラウスに黒のロングプリーツスカート
中肉中背少し明るめの肩までの髪と薄い化粧
美人というより可憐
同じくらいか少し年上
たいてい女性は何かしらの香りがするものだから聖は意味もなく深く息を吸ったが隣に座った高羽は無味無臭の空気をまとっている
ゴクリと喉が鳴った
軽く冷酒を持ち上げて「乾杯」と小さく笑う
何かよく分からない目の前に出されたものに手が震える
「紀田様何か飲みたいものがあれば遠慮なくおっしゃって下さいね」
「紀田様って…紀田君とかなんなら呼び捨てでいいっすよ」
「じゃコウキ何飲む?」
「ハハハハ振り幅ヤバいっすね」
何?最高に楽しいんですけど?
出される料理は美味いし高羽は可愛いし夢のような時間
道案内して良かった
「お兄ちゃん?紀田君?」
あの夢のような時間の1週間後いつまでもふわふわしていた俺は中林老人に会えるかもしれないと史草奥をフラついていた
声をかけられて振り返ると買い物袋を下げた中林老人がニコニコと立っている
偶然じゃないことはわかっているはず
「すいません
史草奥って聞いたので会えるかもと思ってふらついてました」
「おお そうなんか?それにしてもよう会えたな
この時間家からあんまり出んのやけどな」
「会えて良かったです
この間はご馳走様でした お礼を言わずに帰ってすいません
何が良いか分からなかったんですけど」
コンビニで調達して来た桜餅
「お礼なんか良いよ良いよそれにしてもうちの場所もわからんのに会えんかったらどうしたん?」
「史草奥ってことはわかってたんで表札探そうかと彷徨ってました」
「そうかそうかうちはまだ奥の方やから」
俺は中林老人の荷物を持ち中林老人の後に続いた
本当に奥の奥1番の一等地
ちなみに表札はかかってなかった
「入って入って
お客さん来るの久しぶりやからちょっと汚いなぁ」
長く広い廊下を進みながら俺から買い物袋を受け取ると突き当たりの和室に入り雑誌や新聞をたたんだ
「何かあるかなぁ
1人だから食べ物そんなに置いてないからなぁ 今日はシチューを作ろうと思ってだんだけど」
「お構いなく
お礼だけと思っていたのにいきなり来て家にまで上がってしまってすいません」
「ええよええよ暇老人やからなぁ嬉しいわ
ご飯食べていき
何がええかな寿司か?この前も寿司やったな」
中林老人が携帯を握りしめなぜか今どき珍しい電話帳を開きながら思案しているとドカドカと廊下を走ってくる音が聞こえた
「誰?」
誰?
「あんた誰?」
「あっ俺は紀田というもので」
「何?なんか用?」
「嫌この間ご馳走になってお礼を兼ねて訪ねて来て」
「用済んだら帰って」
「まぁ落ち着けやマイロ」
「落ち着いてられるか!老人の親切に漬け込もうとする輩を見逃すわけにはいかんやろ!」
イヤイヤ
「まあまあ一旦落ち着いて話を聞きなさい
このお兄ちゃんにえらい世話になったんだよ」
「こいつめちゃくちゃ怪しい」
イヤイヤ
「こちら紀田聖君やこいつは中林マイロ
朝堂大学の2年生一浪しとるから21やな」
「そんなことまで言わんでいいやろ!」
「何か宅配してもらおうかと思ってるんやけど何がええかな?マイロ」
「町村のうなぎ」
即答
「あゝうなぎかぁでも今時期のうなぎは養殖もんや」
うなぎ食べたい俺もうなぎ食べたい
顔に出てたか?マイロと目があった
「衣笠の天ぷらでもいい」
「おお天ぷらいいなぁ久しく食べてないわ
紀田くんてんぷらでええか?」
「何でも…っていうかまたご馳走になるの悪いので自分の分は払います」
「あんたそんな事言っていいわけ?」
マイロがニヤニヤしながら俺を見る
その笑顔にびびった
財布には泣け無しの一万いや桜餅買ったから9500
この9500円で後2週間生活するはずだった
夢の時間を思い出す
そうだあの店で普通に食事する人間の天ぷらはいくらなんだ?そんな事を考えているうちに中林老人は天ぷら屋に電話していつものと言う
いつものっていくらだ⁉︎
また夢を見た
あの天ぷら美味しかったな
結局奢ってもらったからいくらだったのかは知らない
いやこれは夢なのか現実なのかわからない
そもそも俺は生きてるのか?
いや存在しているのか?
ニュースをお伝えします
今日未明 史草川の上流で男女3人の遺体が発見されました
遺体は死後数ヶ月経過していると見られ詳しい経緯を警察が捜査中です
では現場を中継で繋ぎたいと思います
現場の高藤さん
はい現場の高藤です
私は今遺体が発見された史草川に来ています
見えますでしょうか?
規制線の張られた奥のブルーシート
あちらで男性1人女性2人の遺体が発見されました
鮎釣りで史草川にこられた人達が重なりあった遺体を発見し警察に110番通報したとの事です
衣服など身につけておらず捜査関係者は身元調査は難航しそうだと話しています
それでは第一発言者の男性にお話を伺います
いや~びっくりしました
異様な光景でしたから
最初マネキンの不法投棄かと思いました
仲間が死体だと騒ぎましてね
慌てて110番したんですよ
現場からは以上です
高藤さんありがとうございました
さて次のニュースです
紀田さんいるんでしょ
家賃払ってくださいよ
もう3ヶ月たまってますよ!
紀田さん?紀田さん?
ちっうるさい…
鍵開けますよ‼︎
マジかよ
面倒くさい
「すんません」
「ほらいるじゃない」
「居留守なんて使わないでよ
もう今月入金してくれなかったら出ていってもらいますからね」
「はい、はい」
払えるならとっくに払ってるんだよ
電気も止まってる
ガスも止まってる
水道も止まってる
携帯も止まってる
ただ布団にうずくまって日々やり過ごす
腹が減る感覚も睡魔の感覚も息をしている感覚さえも欠落
生きているのかさえわからないような毎日
大学を辞めて5ヶ月
アルバイトを辞めて1ヶ月
金が底をついて1週間
公園の水で生き延びてる日々
死を目前にしているのに全く危機感がない
元々楽天的な性格
座右の銘はなるようになる
布団から出たついでに外に出た
季節はもう春
外の空気が和らいで頬を撫でる風が心地いい
太陽に当たったのは何日ぶりだろうか
少し汗ばんで着古したパーカーの袖をまくる
毛玉だらけのジャージのポケットを探ると電源の切れた携帯
携帯が使えれば今の生活から抜け出せるのに世の中の情報全てがこの小さな機械の中にある
目的なく歩いているようで足が向いたのは命綱 今の俺を救ってくれそうなのはこの場所しかない
「紀田くん久しぶりやね」
「お久しぶりです」
「どうしたんね…痩せてしもうて」
「シャワー浴びさせてもらって良いですか?」
「良いよ良いよ入りんさい」
「すいませんいつも甘えてしまって」
「遠慮しなさんな」
マイロの指摘通り俺は気のいい老人をカモにしてる。そんな気はないのにやってる事はタチの悪い詐欺師と変わらない
「お邪魔します」
申し訳なさそうなポーズを取ってドロドロの靴を脱ぐと勝手知ったる家の中をつま先だちで歩いた
「何か食べるよね?」
軽く頷く
厚かましい
わかっている
この老人が笑顔で迎えてくれるこの場所が最期の砦
込み上げてくる嗚咽をかき消すように熱いシャワーを浴びる
何も考えないようにする
風呂場から出ると柔軟剤でふかふかのバスタオルと新品の下着
空腹だった
汚いパーカーから携帯を取り出してしれっと充電を始める
人として間違っているとわかっているが藁に縋っているんだ
いい匂いにつられて腹がぐうぐうなって体が正直すぎて少し笑える
中林老人の作ってくれた肉じゃがを食べながら家を追い出されそうな事
親には頼れないこと
知らず泣きながら生きていることが辛いこと
中林老人は何も言わずに聞いて「ここに住んだらええ」と言って布団を引いてくれた
中林老人と出会ったのは大学を辞めた事がバレて親に仕送りを止めると言われ駅のベンチで途方に暮れていた日だ
「お兄ちゃんちょっと教えて欲しいんやけど」
よっぽど暇そうに見えたのか尋常じゃない感を醸し出してたのかそんな俺に中林老人が声をかけてきた
面倒くさい
とっさに顔を伏せ聞こえてないふりをしたが目の前に佇む老人の靴が美しく上等な革靴で興味が湧いた
こんな靴を履いているのはどんな人物なのか
歳の頃は70前後
肌艶が良い いいものを食べているんだろう
白髪混じりの髪を撫でつけて上品で物腰の柔らかい敵を作らないであろう笑みで俺を見下ろしている
目の奥は笑っていなかった
ゾクっと鳥肌がたつ
「お兄ちゃんちょっと教えて」
もう一度繰り返される言葉
「何すか?」
「これどこやろ?」
メモを渡されたが知らない場所だった
「すいません…わかりません」
「全くか?」
「全くです」
「そうか」
「お兄ちゃん携帯いうのあるやろ?ちょっと調べてくれんかな?」
正直面倒くさいとは思ったが目の奥が笑ってない上品で金持ちの老人には断れない押しがあった
「いいすよ」
携帯を取り出して渡された住所を打ち込む
地図アプリを確認すると案外近かった
駅から徒歩5分
「駅から近い言われたからタクシー乗るのも悪いなぁ思ったんやけどどうやろ?」
「徒歩5分って出てますけど暇なんで案内しましょうか?」
「本当か?悪いなぁごめんなぁ」
「いいすよ」と立ち上がる
地図に示された場所は山の手らしい
この老人が目指すこんな場所に何があるのか?
もしかすると謝礼でも貰えるかも知らないと打算的に考えた事
この老人に恩を売りたいと思った事
今日のシフトがなかったから本当に暇だった事
全てが自分の判断だったとその時の俺は思った
駅を出て歩き始める
老人は革靴をカツカツと響かせながらつかず離れず距離を取り聖の後を歩く
並んで歩けないほどの歩道では無い
並ばれても困るちゃ困るけど後ろを気にしながら歩くのは結構疲れた
「お兄ちゃん何歳?」
そして黙って歩くには厳しい
「21です」
「見たところ学生さん?」
「まぁはい」
「うちの孫も大学生や けど全く勉強しとらんわ」
「アルバイトとかしとる?」
「はい」
「どんな仕事?」
「コンビニの深夜です」
「そりゃ大変やな 働くのはどんな仕事も大変やけど夜中働くのはしんどいなぁ」
「平日の深夜はそんなに大変じゃないですよ」
「でも強盗とか来たら怖いがな」
「はぁまぁでもその分時給はいいんで」
「そうかぁ金稼ぐのはいつの時代も大変や
うちの孫はパソコンかちゃかちゃやって金稼いどるらしい
ようわからん怪しい奴やハハハ」
老人とは思えない良く通る声
「金は頭より体使って稼いだ方がありがたみがあるわな」
「どんな金でもありがたみはありますよ」
「ハハハそうだそうだ」
「悪いねこんな老人に付き合わせて
一人暮らしをしていると会話する事が楽しくてついついおしゃべりになってしまう
老人の戯言だから聞き流してくれるかな?」
老人はたわいの無い会話を続けたがり聖は曖昧な返事をする
先を歩く俺の微妙な表情が見えないから老人は息継ぎ以外はずっと喋りっぱなしだ
庭の桜に蕾ができた事
5年前に連れ合いが癌で死に一人暮らしだという事
たまに孫がやってくる事
冷蔵庫を新調した事
車の免許を返上した事
オレオレ詐欺が怖くて家の電話を解約した事
個人情報がダダ漏れだ
「お兄ちゃん何処ら辺に住んでる?」
俺の個人情報は保護されるべき
「私はね史草奥の方なんだよ」
「え?俺も史草です史草川の辺です」
「ほおそうかぁ世間は狭いね
案外すれ違っているかもしれないな」
声をかけられた片森の駅は史草から電車で15分だ
近くもないし遠くもない
偶然同じ地域に住んでいても特別不思議な事ではないが聖は老人を身近に感じた
史草奥は古くからの地主が多く立派な家が立ち並ぶエリアだ
住人しか踏み入れてはいけないオーラを放ちその閉塞感は異様で何処も立派な門があり高い塀に囲まれているイメージだ
庭に桜がある程大きな家にこの老人は1人で暮らしているのか
俺にはどんな暮らしぶりなのか想像できなかった
「ちょっと足にくるな」
老人が立ち止まる
緩やかに長い坂道
携帯に目をやるとこの先に目的地はあるはずだ
「この坂道の先を右手に曲がれば着きますよ」
「そうかそうかじゃ頑張らないとな」
「タクシー乗ればすぐでしたね」
「いやいやお兄ちゃんと話してこうやって坂道を登る事はいい経験だよ
この年になれば新しい経験はそんなにないから」
そういいながら知らない場所を探して歩くのか?金持ちの老人わ
黒塗りの大きな車が脇を通り過ぎて止まる
中からかしこまった男が降りてきて俺を跳ね除けてペコペコと頭を下げる
「中林さま!お迎えに上がりましたのに
すれ違いになりましたね 申し訳ございません」
「このお兄ちゃんに道案内してもらったから大丈夫だよ」
かしこまり男が俺を見る
「さぁさ車に」
「もうすぐそこだから歩くよ 兄ちゃんいいかな?」
「あっ俺はもうこれで」
「そんな事言わずにご飯まだだろ?
なんでも大層美味しいものを食べさせてくれるらしいからこれも縁だしご馳走するよ
でも」
かしこまり男は早く去れとでも言いたそうだ
「あの吉葉さまはもうおつきで五条さまは遅くなるとの事です」
「そうかい 五条は遅れるのかあいつはいつも遅刻する 私も時間ギリギリか?もう道はわかるから先に店に帰ってもう一人前用意してくれる?」
「はぁ」
まただこの老人のノーと言わせないオーラ
かしこまり男がすごすごと車に戻り車が発進すると中林老人は聖を追い抜いて坂道を登りきり手招きをして聖を待っている
「いいんすか?」
「いいよいいよ」
同意を得て坂を登り右手に目をやる
城か?立派な石垣と奥に伸びる石畳
暖簾も看板もない
ここがどんな所か?何も思い浮かばない
ただ自分とは一生縁のない場所という事はわかる
さっきのかしこまり男が門の前にスタンばってる
「ようこそおいでくださいました 中林様
お連れ様はどういたしましょうか?同じ部屋と言うわけにはいかないので」
場違いな俺
かしこまり男の眉が引き攣っているととびきりの赤美人が飛び出して来て俺を見た
「中林さん困らせるのはやめにして下さい」
赤いドレス赤い口紅赤い靴年齢不詳
「吉葉
こんなわかりにくい所に来れたのもこのお兄ちゃんのおかげなんだよ」
「タクシーに乗ればすぐなのに歩くなんて」
「とにかくこのお兄ちゃんにご馳走すると言ったんだから嘘はつけん」
「ご馳走は出来るはずよね?この人に失礼の無いようなおもてなしくらいできるわよね?」
「はい それはもちろんでございます」
「信用できんこいつの目は人を見下す目じゃ」
それは俺でもわかった
吉葉と呼ばれる美人がマジックのように何処からか携帯電話を取り出して何処かに電話する
「小中君?ちょっとエントランスまで出て来れる?
中林さんがお出迎えの人が信用出来ないってごねてるのよ…面倒くさいとは思うけどごめんなさい」
なんか偉い人が来るようだ
電話を切ったとたん壁だと思っていた場所つなぎ目の無い扉が開いて小中氏が現れる
忍者屋敷?
無言ではあるが深いお辞儀
一目で残高一億でも預金通帳を任せられそうな信用できる人物だと思えた
「この中林さんのおつれの方に失礼のないよう格別なおもてなしをお願いします」
中林老人も少し落ち着いたようで小中氏を見る
「かしこまりました」
低い声腹式呼吸
「なんかすいません」
恐縮しかない俺
「お兄ちゃんが謝る事なんか何もない」
いやいやすいません
「名前聞いていいかな?」
「はぁ紀田聖です」
「コウキいい名前やね
じゃキダコウキ君帰りは送ってもらいなさい」
「いやいやとんでもないです」
「かしこまりました」
「細田は中林様と吉葉様を
紀田様はこちらへ」
中林老人が軽く手を上げてまた別の壁扉へ
俺は小中の後に
つなぎ目のない壁から出現する扉が開くと8畳ぐらいの寿司カウンター付き部屋に出た
割腹のいいいかにも板前さんが軽く頭を下げる
「一応お任せで料理は出て来ますがなんでもお好きなものを注文してくださって構いませんよ
とりあえず2日この部屋を押さえておきますので ゆっくりとお過ごし下さいませ」
小中の話は素晴らしく魅力的な話だか聖は今出て来たであろう壁扉を凝視する
その視線に気づいて小中が嫌味のない紳士らしい笑みを浮かべた
「この扉は特別なんですよ
皆さん驚かれるんですが従業員のIDが反応して扉が開くんですよ
従業員の階級によって開く扉の数が違うんです
完全会員制クラブですからプライバシーが完全じゃないと困りますからね
この部屋の隣で一国の政治が行われてるかもしれませんよ」
そのスマイル冗談とは思えない
「紀田様ようこそ
秘密クラブ花水木へ」
秘密クラブ花水木
なんて隠秘な響き
聖は案内されるがままカウンター席に座りお絞りを受け取った
「お1人での食事は寂しいですか?お相手できる女性もお呼び出来ますがどうでしょうか?」
そりゃこの板前さん2人の空間は少々しんどい
でもホイホイそんな提案に乗るのも憚れる
「はぁ…?どうしましょうか?」
答えに困ったら質問に質問で返すことが1番の正解
「私にお任せ下さるという事でよろしいでしょうか?」
曖昧にうなづく
「それでは一旦私は退席させて頂きます」
つなぎ目のない壁の前に立ち失礼いたしますと聞こえた時には姿は無かった
「今日調理を担当いたします赤坂です
よろしくお願いします
では特にリクエストが無ければ調理を始めさせて頂きます
まずは付け出しと冷酒を」
底辺で生きているようなこんな人間にものすごく丁寧に接する事がかえって馬鹿にされているようで聖はあまり気分が良くなかったがカウンターの奥から女性が現れた事でそんな事はどうでも良くなってしまう
「高羽ですご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
小中さんナイスーと叫びたい
白のボウタイブラウスに黒のロングプリーツスカート
中肉中背少し明るめの肩までの髪と薄い化粧
美人というより可憐
同じくらいか少し年上
たいてい女性は何かしらの香りがするものだから聖は意味もなく深く息を吸ったが隣に座った高羽は無味無臭の空気をまとっている
ゴクリと喉が鳴った
軽く冷酒を持ち上げて「乾杯」と小さく笑う
何かよく分からない目の前に出されたものに手が震える
「紀田様何か飲みたいものがあれば遠慮なくおっしゃって下さいね」
「紀田様って…紀田君とかなんなら呼び捨てでいいっすよ」
「じゃコウキ何飲む?」
「ハハハハ振り幅ヤバいっすね」
何?最高に楽しいんですけど?
出される料理は美味いし高羽は可愛いし夢のような時間
道案内して良かった
「お兄ちゃん?紀田君?」
あの夢のような時間の1週間後いつまでもふわふわしていた俺は中林老人に会えるかもしれないと史草奥をフラついていた
声をかけられて振り返ると買い物袋を下げた中林老人がニコニコと立っている
偶然じゃないことはわかっているはず
「すいません
史草奥って聞いたので会えるかもと思ってふらついてました」
「おお そうなんか?それにしてもよう会えたな
この時間家からあんまり出んのやけどな」
「会えて良かったです
この間はご馳走様でした お礼を言わずに帰ってすいません
何が良いか分からなかったんですけど」
コンビニで調達して来た桜餅
「お礼なんか良いよ良いよそれにしてもうちの場所もわからんのに会えんかったらどうしたん?」
「史草奥ってことはわかってたんで表札探そうかと彷徨ってました」
「そうかそうかうちはまだ奥の方やから」
俺は中林老人の荷物を持ち中林老人の後に続いた
本当に奥の奥1番の一等地
ちなみに表札はかかってなかった
「入って入って
お客さん来るの久しぶりやからちょっと汚いなぁ」
長く広い廊下を進みながら俺から買い物袋を受け取ると突き当たりの和室に入り雑誌や新聞をたたんだ
「何かあるかなぁ
1人だから食べ物そんなに置いてないからなぁ 今日はシチューを作ろうと思ってだんだけど」
「お構いなく
お礼だけと思っていたのにいきなり来て家にまで上がってしまってすいません」
「ええよええよ暇老人やからなぁ嬉しいわ
ご飯食べていき
何がええかな寿司か?この前も寿司やったな」
中林老人が携帯を握りしめなぜか今どき珍しい電話帳を開きながら思案しているとドカドカと廊下を走ってくる音が聞こえた
「誰?」
誰?
「あんた誰?」
「あっ俺は紀田というもので」
「何?なんか用?」
「嫌この間ご馳走になってお礼を兼ねて訪ねて来て」
「用済んだら帰って」
「まぁ落ち着けやマイロ」
「落ち着いてられるか!老人の親切に漬け込もうとする輩を見逃すわけにはいかんやろ!」
イヤイヤ
「まあまあ一旦落ち着いて話を聞きなさい
このお兄ちゃんにえらい世話になったんだよ」
「こいつめちゃくちゃ怪しい」
イヤイヤ
「こちら紀田聖君やこいつは中林マイロ
朝堂大学の2年生一浪しとるから21やな」
「そんなことまで言わんでいいやろ!」
「何か宅配してもらおうかと思ってるんやけど何がええかな?マイロ」
「町村のうなぎ」
即答
「あゝうなぎかぁでも今時期のうなぎは養殖もんや」
うなぎ食べたい俺もうなぎ食べたい
顔に出てたか?マイロと目があった
「衣笠の天ぷらでもいい」
「おお天ぷらいいなぁ久しく食べてないわ
紀田くんてんぷらでええか?」
「何でも…っていうかまたご馳走になるの悪いので自分の分は払います」
「あんたそんな事言っていいわけ?」
マイロがニヤニヤしながら俺を見る
その笑顔にびびった
財布には泣け無しの一万いや桜餅買ったから9500
この9500円で後2週間生活するはずだった
夢の時間を思い出す
そうだあの店で普通に食事する人間の天ぷらはいくらなんだ?そんな事を考えているうちに中林老人は天ぷら屋に電話していつものと言う
いつものっていくらだ⁉︎
また夢を見た
あの天ぷら美味しかったな
結局奢ってもらったからいくらだったのかは知らない
いやこれは夢なのか現実なのかわからない
そもそも俺は生きてるのか?
いや存在しているのか?
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