スパダリαは、番を囲う

梓月

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第1章

出逢いと運命と……番と I ※R18

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「…んっ……っはぁ…やべ……部屋まで保つ…のか?」

龍哉と目が合い、多分ではあるが向こうも湊音に気付いた状態ではあったが、同僚に会場から出してもらえたのには助かった。しかし、支配人や同僚が湊音の為に、緊急避難用として確保してくれているのは、機密性が高くそしてあまり使用する人物が少ない《インペリアルスイートルーム》……つまりは、最上階にある部屋の一つだ。
しかし今の状態で、エレベーターに乗車するのは憚られた。何せ、薬で抑えられているとはいえ発情臭フェロモンがどんどんと強く出る様になって来ている。

「これで…行く……しか……」

湊音の視線の先には、非常階段の扉。もちろん、廊下のもっと奥には従業員用のエレベーターもあるのだが、そこに辿り着くまでにどうなるか分からない………。幸か不幸か、パーティ会場の階から部屋までは5階ほど……普段の湊音なら従業員用のエレベーターまで大急ぎで駆け込み、最上階まで上がっただろう。だが、この時の湊音は普段とは違い、脳の奥から溶け出す様なフワフワした思考回路で、真面ではなかった。そのまま、非常階段の扉を開けてふらつきながら最上階を目指し、上がって行った……………。






「はぁっ……はっ…あっ……」

しばらくして、何とか最上階には辿り着いたものの、いつも使っている部屋ではなく、その手前にある部屋の傍の壁にもたれながら震える足を叱咤し、少しでも早く部屋に向かおうとするが、力が入らない。とうとう、壁にもたれたままで廊下に蹲ってしまったのだった。

「んっ…あっ……だ…れか…もっ………」

生理的な涙を零しながら、誰も居ない廊下で1人助けを待つしか無かった。『支配人かスタッフに連絡しろ』とは言われたが、非常階段の途中で転びかけた時に落としてしまった様で、通信手段が何もない。途方に暮れながら、必死に発情期ヒートと思われる、身体の熱を持て余していると、どこからか会場で薫った龍哉の薫りが漂って来た。



ビックん⁉︎



「んあっ…⁉︎やっ……はぁ…ダメ……」

身体を熱に溶かされながら、ズリズリとその薫りから逃げるように、部屋の方へ進もうとする。


カツン…コツっ……カツン………


ゆっくりだが、確実に湊音の方へと身体を溶かす薫りが近付いてくる。湊音の身体はなαの薫りに震えが止まらず、もう下半身はぐずぐずになり涙は止まらなかった。



スッ……



「見つけた…俺の、運命………」


既に息も絶え絶えになっていた湊音の後ろから、身体を抱きしめた龍哉は廊下である事にも構わず自らの腕の中へと愛しいΩを囲い込んだ。








※長くなるので、ページを分けます。
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