スパダリαは、番を囲う

梓月

文字の大きさ
上 下
2 / 9
第1章

普段の日常

しおりを挟む

———ザワザワ……ザワザワ……———

「あっ、そこの…ちょっと…」
「はい、少々お待ち下さい…」


はぁ……ヤバぃ………
早く、帰りたい……

湊音は、じっとりと汗ばみながら、フェロモンの渦巻く会場を進んでいた。



——————————————————————————————



「んじゃあ、バイト今日遅くなるから…待ってなくていいから、先に寝ててよ?この間みたいに、起きてないで…」
「はいはい…分かったから、気をつけて行っておいで……あっ、薬は持ったかい!?」
「ばぁちゃん、大丈夫!ちゃぁ~んと鞄に入ってるって!特に、今日はαとの接触が多くなるから、シフトに入る前にキッチリ飲んでから仕事するから」
ホッとした様子で、湊音をいつものように送り出し家へと入って行く。
それを見届け、バイトに足を向ける。


今日は、本当なら大学もバイトも休みの為、いつも自分の事を気にかけてくれている祖父母とゆっくり過ごそうとしていたのだが、バイト先の支配人にどうしてもと頭を下げられ、仕方なく急遽シフトに入る事になったのである。





「おや?…君はβだと思っていたんだけど、Ωだったんだね……」
「あ、はい…やはり、Ωだとこういった職種では雇っては頂けないでしょうか?」
「う~ん……まだ番にはなってないんだよねぇ?」
「……はい、なかなかご縁がなくて」
「え?そうなの?…いや、そんな事は無いと思うんだけどね?」
苦笑しながら答える湊音に、目を見開き心底驚いた様子の支配人に思わずクスクスと笑ってしまう。
「あ…すみませんっ!」
「いやいや、こちらこそ悪かったね立ち入った事聞いちゃって…でもまぁ、うん…全くΩが居ないって訳でも無いし、君人当たり良さそうだから、今回は採用って事で……」
「ほっ本当ですか!?」
「うん…いつから、シフトに入ってもらえるかな?」



思わず腰を浮かせ、詰め寄るように訊ねた湊音にニッコリと微笑み返し、その場で採用を告げる支配人にはその後も目にかけてもらっている。(ただ単に、危なっかしくて目が離せないだけかもしれないが……)
他の従業員達も優しくて、世間ではΩが理不尽な扱いを受けている事を忘れてしまいそうになる事もある。
特に湊音は、パッと見はそこら辺のβと変わりなく見えるが、Ωらしく発情期もあるしキチンと処方された抑制剤を持ち歩かなければ、気軽に外も歩けない。
この見た目で得なのは、首輪ネックガードを必ず着けないと危険なΩらしいΩとは違い、ちょっと外したとしてもよほどのことがない限り、襲われてうなじを噛まれる心配が少ないという事ぐらいだろうか。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!

白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿) 絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ アルファ専用風俗店で働くオメガの優。 働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。 それでも、アルファは番たいらしい なぜ、ここまでアルファは番たいのか…… ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです ※長編になるか短編になるかは未定です

婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。 そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。 それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。 しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。 ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。 前半は受け君がだいぶ不憫です。 他との絡みが少しだけあります。 あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。 ただの素人の小説です。 ご容赦ください。

富豪αと再会したら貧乏だったことをバラされて人生詰んだんだが

grotta
BL
小学生の頃「匂う」と嫌がらせしてきたアルファの和泉に大学で再会したオメガの美浜。 昔貧乏だった美浜は毒親や過去と決別して大学へ入学した。それなのに、和泉に昔貧乏だったことをあっさり暴露される。 普通の大学生になりたかったのに、なんでこいつ俺のこと邪魔すんだよ。 しかも新歓でお持ち帰りされてなぜかワンナイトしてしまい――? 「一回寝ただけで彼氏ヅラすんな!」 勘違いのすれ違い執着オメガバースSS ※攻め視点追加しました!

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版)

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

孤独を癒して

星屑
BL
運命の番として出会った2人。 「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、 デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。 *不定期更新。 *感想などいただけると励みになります。 *完結は絶対させます!

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

処理中です...