俺はエロゲだった

幕間 Ｇメール上のルキナ

　たぶん夜の１２時くらい……？
　こいちゃんが完全におうちからでていったのをちゃーんと確認してから、わたしはおふとんの中からでた。しゅたっ。
　わたしの寝たふりにも気づかないまぬけなこいちゃんはちょっとかわいいけど、いまはそんなことを言ってる場合じゃないのです。
　なんというか、ここ最近、こいちゃんがあやしい。
　けっきょくあのちょー美人な銀の人はなんだったのかこわくて聞けなかったのもそうだし。
　小説書いてるわけでもないのにパソコンいじってたり（しかもなんかコソコソして）。
　お仕事じゃなさそうな電話やメールがふえてたり。
　さっきもわざわざ部屋からでてたし、なんかわたしに聞かれたくないみたいなやな感じ。
　でさ、そんなことばっか見てるとさ、もう考えちゃうんだよ。やなこと。
　たとえばさ。
　そんなわけないんだけど、ゼッタイそんなわけないんだけど、でも、もしかしてこれって、浮気？　女？　ほかの女？　浮気？
　そんなふうに思っちゃうよ。
　やめてよ。
　いまだってわたしにないしょでこんな夜中にどっかいっちゃうし。
　こまるよ。
　こいちゃんがそんなことしないって信頼してるから、わたしは馬鹿なあいりでいれるのに。
　ねえ、もしあなたがそんなことをしちゃったら――私はもう、手段を選ばないよ？
「うっ……」
　わたしはちょっとあたまが痛くなって、よろけた。
　たぶん、こんな夜遅くまで起きてるからだ。はやく寝なきゃ。
　でも。その前にいっこだけ、やることがある。
　だってそのために寝た演技なんかして、こいちゃんをだましたんだから。
　またこいちゃんに演技してる。
　そう思うとさっきみたいに、もっかいあたまがズキズキしてきた。
　はやくおわらせなきゃ。
　わたしはそう思って、いそいでびゅうんとパソコンの電気をつけた。いつのまにかこいちゃんがもっていた、二台目のパソコンを。
　こんなのあやしすぎるもんね！
　こいちゃんがわたしになーんも言わないでパソコンなんか買うなんて！
　しかもわたしのまえでは使わないようにしてたし、なんかかくしてるみたいだった。
　あやしすぎるぜ、こいちゃん。
　そう思いながらパソコンがつくのをまってると、ロックとかなんもなしにいきなりホーム画面になった。
　パスワードとかはかけてないんだ……。無用心だなー。
　あいりを信頼してるのかー？　うれしいよー。んーーー。
　もーほんとそうゆうところだぞー、こいちゃーん？　かわいすぎるーー！　すき！
　……ってあぶにゃいあぶにゃい。
　あやうくこれで満足して寝ちゃうとこだったよ。
　ふあっ！？　もしやこいちゃんそこまで読んでたり！？　……って、ややや、こいちゃんってばあいりのことばかにしすぎでしょ！　しつれい！
　わたしは怒りにまかせて、ついたパソコンの画面の中でいちばんあやしい場所、メールのアイコンをクリックした。
　と思ったんだけど……。
　うーん、なんかゼンゼン使ってないって感じ。
　メールの件数も、そもそも５件とかしかなかった。
　それを見て思う。
　でもよかった。やっぱりわたしの考えすぎだったんだなーって。
　けど、それと同時に、見たくないものを見つけちゃった。
　――あれ？　これって、さっきの電話のすぐあとだよね？
　送信履歴にあった、４時間くらい前のメール。
　【企画書】って名前のファイルが添付されている。
　でも、それを見てお仕事だったんだーって安心はできなかった。
　だって、相手の名前が……。
　こいちゃんのいつもの担当の人じゃなくて。
　――たぶん、女の人だった。
　【枢木ルキナ】
「くー？　くぎぃー、るきな……？」
　
　わたしがその人と出会うのは、そのもうすこしあと。