ストーカーと彼女

ココナッツ?

文字の大きさ
上 下
23 / 24

お夕飯の時間(後)

しおりを挟む
 

(彼女視点)


 成る程、成る程。
 彼が、ある程度の変態なのは分かった。
 変なところで意思が強いのも分かった。

 まぁ、それが分かったところでどうしようも無いのだけれど。

 彼が食器洗いをしようとしたのはいいのだけれども、私が彼を脅かした所為で彼の手が震えてきてしまってそれどころではない。
 仕方がないので、私は、彼がなんとか彼が食器洗いをしようとしている横で、食べ終わってからしようと思っていた話をし始めた。

「君が誰で、何処に勤めてるかって事に関しては、もう知ってる」
「へっ……」

 びっくりした様な怯えた様な顔をした彼に、私は素で話し掛ける。
 彼が完全な悪人で同情の余地の無い人ならば、私は猫を被ったまま彼で適当に遊んだ後、何処かに縛り付けて放置し、適当に遠くに逃げてしまおうかなどと考えていたのだが、流石にこの相手に、そこまで酷いことをする訳にもいかない。
 もしも、彼に関して、今後も関わっていくことを考えるのならば、私が猫を被っていたても仕方ないだろう。

「夜中に私の枕元に立っていたのは、君で間違いないね?」
「は……はぃ」

 尻すぼみになる声。
 私は、構わず彼に尋ねる。

「なんで、私のベッドの横に? どうやって?」
「そ……れは……」

 彼は、顰めっ面をして話そうとしない。
 私は容赦なく彼に伝えた。

「はっきり言って、そういうことをされるのは迷惑だ」
「す……すみません」
「「すみません」というのは、誰でも言える。例え、全く罪悪感の無い人でも言えてしまう。だから私は確証がほしい、確約が欲しい」

 私は彼に向き合う。

「自分の日常が安全だという、保証が欲しい。だから君に尋ねている。どうして、私のベットの横に毎晩毎晩立っていたのか、立てていたのか」

 こればっかりは真面目に聞かなくてはならない。
 私は彼をじっと見つめる。
 彼は、少し目を伏せると、彼自身の事情を話し始めた。

「……一目惚れでした。貴方が、あまりにも綺麗で、人間離れしていて、顔が見たくて。私の生きてる理由は、貴方にいつかあって、何か貴方の役に立つことをするといことでした」

 思ったより重い理由に、ちょっと引く。
 そんな私を見た彼が、陽気に笑った。

「へへ……気持ち悪いでしょう。でも、貴方が居てくれたお陰で、生きている理由が出来たんです。それくらいずっと、貴方のことが好きでした」
「……」
「一度だけ、貴方が鍵を落とした時があったんです。それで、スペアキーを作りました。監視カメラの位置を確認したり、家の図面を書いたりして、貴方の家に出入りすることが出来る様になりました。でも……」

 彼が、私の方をみる。
 彼は、こんな顔も出来るのかと思うくらい、優しく微笑んだ。

「そのスペアキーは、貴方に返さなくてはいけませんね」

 しょぼんとした、穏やかそうな、それでいて少し切なそうな顔をする。

 彼は、僅かに震える声で話し始める。

「私の……鍵の中で……一番、適当な作りの鍵が、貴方の家のスペアキーです……、持って行って下さ……」

 声は、徐々に、掠れて行く。
 痩せた頬から伝う涙が、ポトポトと、床に落ちる。

 ざーざーと音を立てる水道の栓を、私はキュッと閉じた。

「今度は、私の話を聞いてくれるか?」
「……?」
「私は、今まで恋人を作らずに生きてきた。誰か相手が居た事もなければ、誰か好きな人が出来たこともない」

 私は、彼の涙を拭う。

「だから興味があった。セックスってどんな具合なのか、どうやってするのか、どんな気持ちになるのか、誰かで試してみたかった。君からすれば最悪な事に、そこに丁度、都合のいい、襲っても問題にならなそうな男がいるじゃないか、と、白羽の矢が当たったのが君だ」

 彼は、びっくりした様な表情をしている。
 私は、くすくすっと、笑う。

「ひど……い」
「だから、この後一週間、私は君を私の悪趣味に強制的に付き合わせる事にした」
「えっ」
「そして、君に、私の八年分の不快感の代償を支払わせる。君がどんなに嫌がったとしても、君がどんなに辛く思ったとしても、私は、私の悪趣味に、君を付き合わせることを辞めない」

 私は、彼の片腕を掴み、強引に引き寄せる。
 そして、下から、彼の服に手を滑り込ませた。

「なん……やっ……」

 服の中で、彼の僅かに硬い乳頭を探しだし、乳輪に円を書くようになぞる。

「んっ……」

 そのまま、少しきつめに彼の硬い突起を摘むと、クリクリとそこを動かした。
 彼が私から目を逸らす。
 私が腰を抱えているので、それでも逃げる事の出来ない身体が痙攣する。

「それでちゃらにしよう。無かったことにする」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

彼氏が完璧すぎるから別れたい

しおだだ
恋愛
月奈(ユエナ)は恋人と別れたいと思っている。 なぜなら彼はイケメンでやさしくて有能だから。そんな相手は荷が重い。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい

青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。 ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。 嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。 王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥

女性執事は公爵に一夜の思い出を希う

石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。 けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。 それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。 本編4話、結婚式編10話です。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

処理中です...