【完結】執着系御曹司との甘く切ない政略結婚 ー愛した人は姉の婚約者でしたー

甘すぎる新婚生活

１５

　碧斗さんが興味深そうに聞いてくれるから、さらに話を続けた。

「それから、肝心なのが唇の形かな。楽器によっては、唇の厚みとか形状で向き不向きがあって」

　それがすべてではないものの、顧問の先生は重視していた。

「へえ」

　不意に私を抱き込む彼の腕に力がこもる。どうしたのかと、背後を振り返った。

「音羽の唇を、確認させてもらおうか」

　指で唇に触れられて、ピクリと肩が跳ねる。
　ふたりを取り巻く空気はいつの間にか甘美に染まり、ゴクリと喉を鳴らした。

「音羽」

　切なげな声音に、私の瞳が揺れる。

　顔を傾ける彼に合わせて目を閉じると、そっと口づけられた。
　繰り返し唇を食まれ、その間に彼の手が体のラインをなぞっていく。

　結婚式を挙げた夜以降、初めてだった私に無理はさせたくないからと、一度も抱かれていない。口づけられたり、抱きしめられながら眠ったりする程度でいた。

　慣れない私はそれだけでも緊張してしまうが、毎日触れられていれば次第にそれが当たり前の触れ合いになっていく。

　徐々に深くなる口づけに、もしかして今夜はと期待が膨らむ。
　どうしても恥ずかしさはあるが、好きな人には触れられれば幸せな気持ちになる。はしたなくも、むしろそうしてほしいと願ってしまう。

　彼に求められるほど自分は必要とされているのだと感じられて、心が満たされていくのを感じていた。

「はあ」

　ようやく解放されて、熱い吐息を漏らす。

「っ……んん」

　乱れてしまった呼吸が整うのも待たずに、再び口づけられた。
　少し無理な体制でいるのがもどかしくて、体を大きく捩り、彼の背に腕を回した。

　頭に手を回して私を支えた碧斗さんは、さらに快感を引き出すように、口内を舌で暴いていく。

　さっき飲んだアルコールの影響か、いつもより大胆な自分が顔を出す。
　普段は彼のリードについていくことしかできていなかったが、今夜は私からも積極的に舌を絡ませた。

　私に優しく触れていた碧斗さんの手に力こもり、急くような動きになる。
　優しさをかなぐり捨てた彼が、むさぼるように口づけてくる。そんな碧斗さんに、結局はついていくだけで精いっぱいになってしまった。

　混ざり合った唾液が口の端からあふれ出すのもかまわず没頭する。静まり返った室内にくちゅくちゅと水音が響き、興奮は否応なしに高まっていった。