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甘すぎる新婚生活

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「音羽」

 彼の切ない声音につられて、ゆっくりと視線を上げる。
 私をまっすぐに見つめる碧斗さんの瞳はいつも通りに穏やかで、少しだけ安堵した。

 けれどその奥に宿る熱に気づいてしまい、頬がジワリと熱くなる。

 笑みを深めた彼が私の頬をさらりとなでるから、つい目を閉じて首をすくめた。

 不意に腰に手を回し、碧斗さんの方へ引き寄せられる。
 驚いて目を見開いた私を間近から見おろしながら、もう片方の手を頬に添えてきた。

 少しでも身じろげば、口づけられてしまいそうだ。こんなに近づかれては、視線をどこに向けても彼から逃れられない。

「絶対に幸せにすると誓う」

 揺れる瞳で、碧斗さんを見つめ返す。
 そうまで言ってくれる彼に私も応えたいのに、胸がいっぱいで言葉にならない。代わりに、小さくうなずきながらゆっくりと瞬きをした。

 顎を掬って顔を上げさせられる。
 経験はないもののそうすべきだと悟ってそっと瞼を閉じると、タイミングを同じくして互いの唇が重なった。

 軽く押しつけられ、すぐに離されたかと思えば再び触れられる。
 角度を変えながら何度も繰り返し、不意に唇を啄まれて驚きで体を強張らせた。無意識のうちに、彼の腕をぎゅっと掴んでしまう。

 大丈夫だと私に言い聞かせるように、大きな手が背中を何度も行き来する。その温もりに安堵して、緊張が解れていった。

 舌で私の唇をつつき、開くように催促される。
 おずおずと小さく口を開けると、わずかな隙間から彼の舌がそろりと侵入してきた。

 碧斗さんは決して急かしはしない。
 熱い舌がゆっくりと歯列をなぞり、口内を少しずつ暴いていく。
 そうして最後に、逃げ腰になっていた私の舌を優しく絡めとった。

 舌の表面を擦り合わせながら、私からも絡めるように誘われる。
 結婚式の最中にようやくファーストキスを済ませたばかりで、どうしていいのかわかるはずもない。とにかく彼に促されるまま従った。

 息苦しくなる前に、一旦解放されてほっとする。
 けれどそれは一瞬で、再び口を塞がれた。

「ん……」

 私の意志に関係なく、鼻にかかった甘い声が漏れる。
 それが恥ずかしくて及び腰になると、背なかに添えられた手が優しく抱き直してくる。

 さっきよりもより大胆に舌を絡めとられる。
 静かな室内にはくちゅくちゅと水音が響き、羞恥と興奮を煽られた。

 口づけがこれほど心地よいなんて、初めて知った。
 次第に思考はぼやけていき、ただひたすら快感を追い求めてしまう。無意識のうちに、少しずつ自分からも舌を動かしていた。
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