わたしの愛した世界

伏織

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十章

10-12

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クロスはそこで、視線を落として少し申し訳なさそうな声を出した。


「厳密には、君が夢の中で起こした行動が重要だったんじゃないかなって、思うんだ」


曰く、あの“ねじ”は私の意識を奪い、永遠に夢の中に捕らえようとした。そうすれば、救世主無き世界は滅ぶだろう。そのために、私を再起不能にしようとした可能性があるそうだ。


「まぁ、これはあくまで状況から考えただけの、僕の推測に過ぎないけどね。
“ねじ”は、君の意識を閉じ込めて、絶対のどん底で死ぬまで眠らせるつもりだったんだと思う」


だからこそ、父親がいる、父親から陵辱を受け続けている状況を再現した。私はまんまと騙された。もちろん絶望した。苦しかった。だが、夢の中の達也と話すことで冷静になり、夢であることに気付いてしまった。

そして、絶望の象徴である父親や、母親、弟の達也を殺した。そして自分も死んだ。


「君が夢の中でやったことは、計らずも“ねじ”の術を解除したってわけだ」


あくまで仮説なんだけど、と前置きをして、クロスは簡潔に、簡単に見解を述べた。

“ねじ”は自らの身を守るため、“ねじ”を破壊できる存在である私に、眠りの檻に閉じ込める魔法を掛けた。彼が知ってる限り、人の眠りをコントロールする魔法では、出口が必要になる。つまり対象が目覚めるためのトリガーだ。

何故眠らせておきたい相手にかける魔法なのに、それが必要かというと、眠りというものはそもそも、目覚めることを前提として行われるものだからだ。そして不測の事態が起こってどうしても眠りの魔法を解除する場合、術者が対象の意識に侵入して、そのトリガーを壊さなくてはならないのだ。無理に起こそうとすると、対象の脳にダメージがおよぶ可能性があるのだ。それほどに、眠りの魔法は危険度の高いものだという。

術者が対象の夢を設計する際、眠りを解除するトリガーは本来対象が一番苦手とするものや、一番恐れているもの、またはとても大事にしているものを用いることが多い。故に、私の夢には父が、家族が出てきたのだ。私が一番恐れているもの、または絶望の象徴である。

ただ“ねじ”は想定していないことがあった。私が夢に閉じ込められたことに気付く可能性、そして父親に抵抗するという可能性である。(まあ、トリガーとして最も可能性が高いのは父親だが、ともすれば弟がそれだったという可能性もある。今となっては不明だけど)
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