わたしの愛した世界

伏織綾美

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十章

10-5

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顔を真赤にして椅子から立ち上がりそうな勢いのクロスに、寝ている間に見ていた夢について話し始めた。最初から最後まで、覚えている限りのことを懇切丁寧に話す。クロスの赤面はすぐに引っ込み、真面目な顔になって右手の拳で口元を隠した。


「で、そこで夢だって気づいたから、好き勝手暴れて来た」

「なんとなく想像はつくけど、一応何したのか教えてよ」

「父親をぶっ殺した」


軽くそう言うと、クロスは小さく皮肉めいた笑い声を発した。そして腕を組み、半目で私を見据えた。「そりゃあ、さぞスッキリしただろうねえ」


「まあね。父親の前に弟と母親も殺したから結構気分は落ちてたけど、父親殺したときにはテンション上がったよ」

「え、そこまでやる?夢とはいえ、弟と母親もって」

「父を殺すには、まず精神的に追い詰めたほうがいいかなって。
それに、私の家族はどのみち破綻するだろうから、全部消したほうがいいかなって」

「んー……、まあ、君がそう決めたんならいいんじゃないの。夢なんだし」

「全員殺した後は自殺した。そしたら目が覚めた」


いよいよクロスは黙り込んでしまい、何らかの反応を期待していた私は少し困った。もう話すことがない。何か難しいことを考えている、というよりは、そこまですることなかったんじゃないかなあ、という感じだ。私自身もあの方法は極端だと思ったが、それくらいインパクトがあることをして自分の脳をパニックにさせないと、目が覚めないと思ったのだ。

夢の中で意図的に目覚める様に促したくても、その方法がわからなかった。いつもは中途半端なところで目が覚めたりするのに、不思議なもんだ。


「目覚める事ができてよかったと思うけど、僕は今君にドン引きしてる」

「クロスくんならもっとうまくやれんのかい。さっき水を飲ませてくれたみたいに?」

「だからさあ!……いや、すまんかった」

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