わたしの愛した世界

伏織

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九章

9-11

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「ハルノは本当は強い子なのに、弱いフリをしてる。あのいじめっ子にだって勝てるはずなのに、弱いフリをしてる」

「強くないよ」

「いや、強いよ」


ブランコに座る私に歩み寄り、見下ろしてくる。見上げると、夕方が近づく陽の光に、ミミの金髪が赤く染まっている。不思議な表情をしていて、私にはミミがどういう意図でそのような発言をしているのか、全く解らなかった。


急にミミのことが恐ろしくなった。身の危険からくるものではなく、理解が及ばない、得体の知れない物への恐怖だ。
思えば、最近引っ越してきた家の話も聞かないし、何よりミミのように金髪でフランス人形のような子供がいる家庭なら、すぐに近所の噂になるはずだ。当然大人たちが噂をすれば子どもたちも聞き耳を立てる。なので、今までミミの存在を知らなかったというのは、いささか違和感を覚える。


「ミミは、ここらへんに住んでるの?」

「そんなわけないでしょ。この国にすら住んでないよ」

「じゃあ、いつもはどこにいるの?」


今思えば、間抜けな質問だ。そうじゃないだろう、と当時の自分にツッコミを入れたくなる。しかし、ミミはその質問を笑ったりはしなかった。どうしてか、ギクリと、核心を突かれたような、戸惑った顔に見えた。


「ここじゃないところ」

「どこ?」

「……もう、自分は帰ることにするよ」


急に態度が変わったミミが、冷たい声でそう言った。そして背を向けると、公園の出口へ向かってスタスタと歩き出した。「待って!」ブランコを離れ、私もミミの後を追いかける。ミミは立ち止まると、肩越しに私を一瞥した。背を向けたまま、ミミは少し項垂れた。



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