わたしの愛した世界

伏織

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九章

9-10

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その子、ミミはそう言うと、優雅な動作でお辞儀をしてみせた。両手をふわりと広げ、片足を曲げて、もう片方の足のつま先を地面にちょんとつける、外国人みたいなお辞儀だ。ミミは金髪で、それでいて顔立ちも日本人のそれとは違っていたので、その動作が非常に様になっていた。






それから母が迎えに来るまで、私はミミと遊んだ。ミミは私よりも少し年上で、この国とは違うところで生まれたそうだ。親は居ないそうで、年の割に大人びて見えたのは、きっと親が居ないことで苦労をしてきたからなのだろう。


「ハルノはいつも、一人で遊んでるの?」

「うん。誰も友だちになってくれないから」

「……じゃあ、自分と友達になってよ」


ブランコに揺られながら、ミミは明るい笑顔を向けてきた。生まれて初めて(実のところ、後にも先にもこのときだけ)言われた言葉に、私も嬉しくなって笑顔になった。「うん!友だちになる!」


「本当は公園なんて来たくないんだ」

「じゃあ、なんで来るの?」


なんで、と言われても。子供だった私には詳しいことはわからないが、母親がとにかく公園に行ってろと言うからなのだ。もちろん、いじめられるから行きたくないと、何度か言ったこともある。毎回、聞こえなかったフリをされた。


「あのいじめっ子と、なんで戦わないの」

「戦うの?」


物騒な言葉に、思わず鸚鵡返しをした。ブランコから飛び降りて、ミミは私を振り返って笑う。「そう。戦うの」その声は真っ直ぐ、私に向けられていた。


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