わたしの愛した世界

伏織綾美

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九章

9-6

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「君がもっといろいろなことを知ったら、いろいろなことを考えることができるようになるんだ。そうなるまでは、お姉ちゃんは何も話したくないんだ。なるべく正しい形で理解してほしいからね」

「……わかった。僕いっぱい頭良くなるよ。がんばるよ」


どこか不満そうな顔をしたが、私が涙を流しているのを見てすぐに、そう言ってみせた。本当にいい子だ。この子を幸せにするには、私は一体どう動けばいいのだろう。




「そういえば、お姉ちゃんは今の君と同じ位の歳の頃に、一回だけ遊んだ友達がいるんだ」

「一回だけ?」

「うん。どこの誰かも解らなかった。多分、もう二度と会えないと思うけど、あの子のことは一生忘れないと思う」


あの頃、私は周りの同い年の子達よりも体が小さく、よく他の子供からいじめられていた。

当時住んでいた家の近所には小さな公園があり、砂場とブランコがあるだけのものだった。近所に住んでいた子どもたちが毎日のように遊びに来ており、私もよく行っていた。
しかし遊び相手はおらず、一人でひたすら砂場で穴を掘ったり、他の子供達が遊ぶのをぼんやりと眺めているだけだった。


近所の子供達のボスのような女の子がおり、その子は体が大きくて暴力的で、周りの子を従えてよく気に入らない子をいじめていた。私はいじめられっ子の中でも特に、その子に嫌われていた。
その子の父親は一般企業のしがないサラリーマンで、母親は専業主婦をしていた。そしておそらくは母親が、他の家庭よりも金銭的に余裕のある私の家庭が気に入らなくて、その子に悪口でも吹き込んでいたのだろう。


「ハルノの家は人から巻き上げたお金で建てたってお母さんが言ってた」


などと、必ずと言っていいほど最後に「お母さんが言ってた」で終わる悪口を言われた。そして腰巾着たちを使って私に砂をかけたり、足を引っ掛けて転ばせたりしてきた。

そんなにいじめられるのだから、私も公園には行きたくなかった。だが、幼稚園から帰ると母は毎日のように「公園に行きなさい」と、水筒をもたせて聖母のような笑みで私を家から出す。彼女の有無を言わさぬ笑顔に気圧されて、私はいつも反抗できずに公園へ向かう。
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