わたしの愛した世界

八章

8-10

そんな少人数で、100人以上の人間を一気に殺すなんてとんでもない。かなりの執念を感じる。

ルークの張り付くような笑顔、顎にナイフを突き刺した感触が蘇る。脈打つ動脈の動きを、静かに手を濡らす血液の温かさを、私は思い出す。そして、森の中でライラの腕を抑えていた痩せっぽっちの男を思い出す。口を半開きにして、ルークを殺す私をぼんやり眺めていた。


「あいつ、殺しておけば良かったね」


逃げ出す男を、どのようにして殺しておくべきだったのかを、頭の中でシミュレーションをした。走って追いかけて背中にナイフを突き立てるか、それともナイフを投げるか。クロスの魔法で殺しておくのが一番楽だ。


「今更そんなこと言っても無意味だよ。今後彼らをどうするかだね」

「そんなの、殺せばいいでしょ」

「またそんなことを言う」


と、クロスは非難めいた声で言いながら、上目遣いで私を軽く睨みつけた。「そうやって殺してばかりだと、また同じことが起こるよ」軽はずみに人を殺すなんて、考えるなと。尤もな意見なのだが、そうは言っても相手が相手なのだ。大量殺人を平気でやらかすような相手に、そんな生温いやり方でいいのか。


「とにかく、一度私の家に帰りましょう。喧嘩はまた後にしてね」


穏やかに、そして有無を言わさぬ笑顔を浮かべてエリザが言う。彼女の静かな迫力に、私達は何も言えずに頷くだけだった。