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七章
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「どうしたの?」廊下の角から、赤い水たまりのようなものが見える。猛烈にこの身を襲う嫌な予感に、唇を縫い付けられてしまったようだ。私は足を踏み出すことしかできなかった。エリザを押しのけ、ゆっくりと廊下を進む。
建てられて数年しか経っていない建物の廊下は、ホラー映画の様にギシギシ鳴る、ということはなかった。ただコツコツと靴の音が響いた。きっと響いているのは、私の頭の中だけなのだろう。
廊下の角を曲がると、手のひら程の大きさの血だまりがあった。そこから血を擦ったような筋が伸び、階段に向かっていた。階段にも、所々小さな血の跡があり、点々と、下に続いている。足跡が擦れたような跡になっているところもある。
血の跡を踏まないようにしながら、私は点々と続く血の跡を追って階段を降りた。階段の一番下のところからカウンターの中に向かって、引きずるような血の筋が伸びていた。
心臓が今までに無いほどの速さで脈打っている。口から飛び出してきそう、とはよく言ったものだ。まさにそのとおりではないか。立ち止まった私に追いついたエリザが、私の肩に柔らかい手をふわりと乗せた。
「大丈夫?私が確認しに行くね」
「いえ、ここにいて下さい。一人で行きます」
見ずともこの先の様子は予想がつくが、ちゃんと見ておかないといけない。それに、まだ息がある人も居るかもしれない。
カウンターの奥の二つある扉のうち、片方が開いているのが見えた。その先にはソファーやテーブルなどがあり、居間であることが分かった。血痕は開いている扉の前で途切れていた。
扉には、やたら大きなドアストッパーが付いていた。まるで女性の足のような形のそれは、白く、そして足首の近くに大きな切り傷があった。ここまでの血痕はあの切り傷からの出血なのだろう。ふくらはぎから上のほうは部屋の中に入っており、こちらからは血の枯れた白いふくらはぎと、捲れたスカートの裾だけが見えた。
私は一度エリザを振り返り、覚悟を決めてドアの中から部屋に入った。思っていた通り、部屋の入口で仰向けに倒れている女性の死体が転がっていた。その顔には見覚えがある。宿の奥さんだ。
建てられて数年しか経っていない建物の廊下は、ホラー映画の様にギシギシ鳴る、ということはなかった。ただコツコツと靴の音が響いた。きっと響いているのは、私の頭の中だけなのだろう。
廊下の角を曲がると、手のひら程の大きさの血だまりがあった。そこから血を擦ったような筋が伸び、階段に向かっていた。階段にも、所々小さな血の跡があり、点々と、下に続いている。足跡が擦れたような跡になっているところもある。
血の跡を踏まないようにしながら、私は点々と続く血の跡を追って階段を降りた。階段の一番下のところからカウンターの中に向かって、引きずるような血の筋が伸びていた。
心臓が今までに無いほどの速さで脈打っている。口から飛び出してきそう、とはよく言ったものだ。まさにそのとおりではないか。立ち止まった私に追いついたエリザが、私の肩に柔らかい手をふわりと乗せた。
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私は一度エリザを振り返り、覚悟を決めてドアの中から部屋に入った。思っていた通り、部屋の入口で仰向けに倒れている女性の死体が転がっていた。その顔には見覚えがある。宿の奥さんだ。
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