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七章
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しおりを挟む「あら」エリザが壁に掛かった時計を見上げた。枝のモチーフの角度で時刻を計るという、不思議な時計だ。「もうすぐ2時間経つわよ。もういいんじゃないかしら」
「ねぇ、私も同行するわ。何かあったときに私みたいなおばあさんが居た方が、助かることもあるわよ」
「えっ........と」
靴を履き換えながら、エリザが私の顔を見上げた。固い決意を込めた、真っ直ぐな眼差しだった。
「私も自分勝手に言ってる訳じゃないのよ」
そう言って、彼女は私の前に来た。真面目な顔で私を見詰め、ふっくらとした両手を私の両肩に乗せた。先程までの優しいトーンとは違い、硬く緊張した声をしていた。
「なにか、気になることがあるんでしょ?嫌な感じが、するんでしょ?」
「................」
何故だかよく分からないけど、エリザの言葉に感情が高ぶる。喉の奥から熱いものが込み上げ、それが目を潤ませた。それを見たクロスが「えぇ........?」と声を漏らす。
馬鹿みたいに、次から次へと涙が零れた。足が震えた、手が震えた。一歩一歩を今まで確実に進んできたのに、どこかで選択肢を誤った。それ故の、この底知れない不安感なのだ。私はもう分かっていた。あの村では、既に何人かが殺されているだろう。
ライラも、もう死んでいるのだろう。
紛うことなく、私のせいで、罪もない人が殺された。見てないが、分かる。
あの女ももう近くには居ない。私達を探して、近隣の村や町を目指しているかもしれない。
あの女は一体何なのだ。何故私達を襲ったのだ。追っ手は全員で何名居るのだろう。
何かを間違えた。私はどこかで、過ちを侵した。何処だろう。何処だろう?
どうしてこうなったんだ?
「落ち着いてよ」
私とエリザの間を割って、クロスが入ってきた。「まだ分からないだろ。ちゃんと見て確認しよう」
「........うん」
「もし最悪の状況でも気にするな。君のせいじゃない」
「うん」
私のせいではない。果たして、そうだろうか?
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