わたしの愛した世界

伏織

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六章

6-11

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王様やその場に居た家来達は吹き飛ばされ、壁に頭を強打して脳みそが飛び出した者もいたという。謎の力で宙を舞った彼らは、何度も床や壁に叩きつけられ、血まみれになって死んだという。
王様は最後まで生かされたが、最終的には大きな車輪に全身を拘束されて四肢を粉々に砕かれ、頭を下にした状態で放置されて死亡した。車裂きという処刑方法だ。


魔法使いはその後行方知れずとなった。死亡したものとみなされているが、何百年にも渡り彼の後を継ぐ者と自称する魔法使いが度々現れては、この国に災いをもたらして来たという。
最後の災いは地震で、国全体が大きく崩壊下にも関わらず、周辺の国は無傷だったという。国中で大々的に魔法使い狩りが行われ、魔法使いや、そうでなくても中立な態度をとっていた者が大量に殺された。それ以降魔法使いは尾の国に現れなくなったという。


「……ねえ、クロスはこの本読んだことあるの?」

「面白く無いから最初の三ページしか読んでないよ」

「そっか。確かに退屈な本だよ」


最初の王様を殺した魔法使いは、モルドールという名前だと、最後のページに書いてあった。

どうやら、クロスの師匠はなかなかの有名人みたいだが、クロスはこの事実を知らないところを見ると、だいぶ丸くなったのだろうか。最も、この本の内容には大きな偏りがあるようだし、本当は悪い人ではないのかも知れない。
モルドールは四年前、この世界のすべての国を滅ぼす時限装置である“ねじ”を出現させた。どんな考えがあってこのような事をしたのか不明だが、クロスにすべてを託し、そして会ったこともない私にこの世界を託したのは、きっとこの世界を滅ぼしたいからでは無いはずだ。

そして自殺したのは、彼の中ではもう思い残すことがなかったからだろうか。


私が本を読んでいる間、どこからか取り出したティーセットで紅茶を嗜みながらスコーンをかじっていたクロスを見て、なんだか胸に熱いものがこみ上げるのを感じた。





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