わたしの愛した世界

伏織綾美

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六章

6-4

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「ところでライラさん、あの町の住人は良くこの山を越えて商売をしに行くと聞きました。どんなものを売るんですか?」

「ん?そうだなあ、そこらへんにゴロゴロ転がってる岩でつくった道具とか、ナイフ職人が作った作品と、後は野菜かな。重いものを運びやすいように、五年前くらいに道を作り直したんだけど、そんなに頻繁には行き来してないよ」

「ナイフ職人」

「うん、村のハズレに一人で暮らしてる偏屈な男。顔はかっこいいけど、まじで愛想悪い。宿屋のおじさんの弟でさ、おじさんがたまにあいつの代わりに売りに行くらしいよ」


誰の話かすぐに分かって、私は薄く笑った。きっと愛想の無さは彼なりの処世術で、自分が傷付かないように人を遠ざけようとしているのだろう。しかし、心のどこかで、人とつながることを望んでいるようにも感じた。

ライラはそんなクラウスさんのことがあまり好きではないようで、眉間にシワを寄せて吐き捨てるように言った。


「人に優しくできないやつは、一生一人ぼっちだからね。きっと死ぬときは一人だよ」


周りのそれよりも一際大きな樹木が、道の真ん中に生えているところに差し掛かった。
いや、実際はその樹木を避けて道の舗装がされている。このように道を作りたい気持ちも解る。これだけ立派な木は、切ってしまうのはもったいない。何かの神様でも宿ってそうだ。どこかの大きな岩なんかよりも、ずっと神秘的なものを秘めていた。

















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