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六章
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「なんのつもり?」
小一時間ほど下った頃に、山の麓が見えてきた。地図の通り、麓には一つの村があるようで、一筋の煙が登っているのが見えた。後三十分もあれば到着するほどの距離だ。
ライラが用を足しに行きたいとのことで、彼女が場を離れている間私達は水を飲みながら待っていた。そこでクロスが私に非難めいた目を向けた。
「あんなこと言って、本当にあの人がついて来たらどうするつもり?」
「それはそれで、構わないよ」
とは言ったものの、実際に彼女がついて来たら少し困る。なんというか、彼女はこちらの都合なんかお構いなしに、空気を壊し続けるような気がする。それのせいで苦労することもあるだろう。
だが、胸騒ぎがする。
「……なに?」
「いや、別に」
後ろを振り返る私を見て、訝しげに問うクロス。振り返っても、あるのは落ち葉で地面を覆われた森だけだった、遠くで何かが動いたような気がしたのだが、私の勘違いだったのかもしれない。
生暖かい風が頬を撫でる。得体の知れないものがすぐそばまで来ていて、私達を食おうとしている。早く逃げなくてはならない。
数分後、ライラは「あー!スッキリした!」と、快活な声で言いながら戻ってきた。そんな彼女をじっと見つめ、私は何も言えなかった。
「ん?どうしたの?」
少し高い頬骨、尖った顎。白い肌が日に照らされ、輝いて見えた。「なんでも無いです。急ぎましょう」喉の奥から熱いものが溢れ出しそうな、嫌なむかつきを感じながらも、なんとか冷静な声を作ってそう答えた。
小一時間ほど下った頃に、山の麓が見えてきた。地図の通り、麓には一つの村があるようで、一筋の煙が登っているのが見えた。後三十分もあれば到着するほどの距離だ。
ライラが用を足しに行きたいとのことで、彼女が場を離れている間私達は水を飲みながら待っていた。そこでクロスが私に非難めいた目を向けた。
「あんなこと言って、本当にあの人がついて来たらどうするつもり?」
「それはそれで、構わないよ」
とは言ったものの、実際に彼女がついて来たら少し困る。なんというか、彼女はこちらの都合なんかお構いなしに、空気を壊し続けるような気がする。それのせいで苦労することもあるだろう。
だが、胸騒ぎがする。
「……なに?」
「いや、別に」
後ろを振り返る私を見て、訝しげに問うクロス。振り返っても、あるのは落ち葉で地面を覆われた森だけだった、遠くで何かが動いたような気がしたのだが、私の勘違いだったのかもしれない。
生暖かい風が頬を撫でる。得体の知れないものがすぐそばまで来ていて、私達を食おうとしている。早く逃げなくてはならない。
数分後、ライラは「あー!スッキリした!」と、快活な声で言いながら戻ってきた。そんな彼女をじっと見つめ、私は何も言えなかった。
「ん?どうしたの?」
少し高い頬骨、尖った顎。白い肌が日に照らされ、輝いて見えた。「なんでも無いです。急ぎましょう」喉の奥から熱いものが溢れ出しそうな、嫌なむかつきを感じながらも、なんとか冷静な声を作ってそう答えた。
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