わたしの愛した世界

伏織

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四章

4-15

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クロスが魔法で作った焚き火を前に、ゆっくりと地面にしゃがんだ。ウサギも横に並んで焚き火を見ている。まあ、切り替えよう。
私は腰のベルトのロープを手繰り寄せ、ウサギが逃げられないようにしっかりと握りしめた。もう片方の手で新品のナイフを鞘からゆっくりと引き抜き、ウサギの頭に刃先を向けた。


「無理そうなら僕がやろうか?」とクロスが言う前で、私はナイフの刃を躊躇いなくウサギの後ろから、首の後ろあたりに刺した。ウサギは短く鳴き声を上げ、前足をビクッと動かした。


「何が無理そうに見えた?」


見上げたクロスの顔は面白いほどに引きつっており、信じられない、と唇が動くのが分かった。私という人間に対しての嫌悪感がある様子ではないが、私が簡単に生き物の命を奪ったことに不安を覚えたようだ。

我ながら不思議に感じなくもない。このウサギを捕まえたときから、確実に生命を奪うビジョンが見えていた。どこからナイフを刺して殺すのかを、頭の中で何度も試した。そして実際に殺しても、気持ちはフラットなままだった。

生まれて初めて生命を奪い取った。そのことに何も感じない。先程クロスとの会話で「私は健全」だと返したが、果たして本当にそうだと言い切れるのだろうか。


「結界張ってくる」


硬い声で言い残し、クロスはその場から離れた。驚きと悲しみが入り混じったような複雑な彼の表情に、私の心まで傷付いた。生きる上で、人が他の生き物の命を奪うことはごく当然のことである。しかし、生まれて初めて生き物を殺したにしては、何も感じない。


「ーーーま、いっか。考えても仕方ない」


結局、こうなるのだが。考えてもすぐに答えが出ないのなら、今は保留にしておけばいいのだ。ただの感傷に浸る要素として、このことを深く考えてしまうことが問題だ。それはただの逃避であり、進歩にはなりえない。


よくわからないが、自分なりにウサギを解体しながら、なんとなく小声で歌を口ずさんだ。ウサギおいしい、かの山……。


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