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四章
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「あれか」何でもない事のような顔でそう言うが、耳朶が赤く染まっていた。「気にしないでいいよ、最近肌寒いし丁度良かった」
「そうか」
彼に対して、恋愛感情のようなものを抱いているのか?と己に問う。答えはもちろん、無い。少なくとも、今のところは。
ただ、私と同じく(かなりの程度の差があるが)家族に恵まれなかった人間として、仲間意識は感じている。あの添い寝は、とても恋人同士が互いを確かめるために行うものとは言いきれない。あれはただの、傷の舐め合いだった。
正直嫌ではなかったし、むしろまたしようと思っている自分がいる。それを口に出して彼に伝えるつもりは無いが、言ったとしても拒否されることはない、というのも分かっていた。自分と血の繋がった家族以上に、クロスと抱き合って眠ったときの温もりは心地良かった。我ながら理解できない感情すぎて、気持ち悪い。
気分と話題を変えるために、私は努めて明るい声で彼に話しかけた。
「ねえ、この世界にはどのくらいの国があるの?」
「そうだなあ、この国と同じくらいの規模のはざっと200。各地で市街地程度の規模の小さな国もごちゃごちゃあるから、全部で300近いんじゃないかな?正確な数は断言できない。ーーー絶えず変動してるから。
ただ、ここ一年でのそのうち約100は、もう滅んでしまった可能性が高いんだ。いくらなんでもこの数は異常だよ」
「それは、例の“ねじ”のせい?」
「否めないね。でも、中には戦争を常に行っている国もあるからね。来るべくして来た滅亡も中にはあるよ」
「もう一個質問」
「おう」
「どうしてクロスは滅んだ国の数や原因を、おおよその想像とはいえそんなに細かく話せるの?」
「国が滅んだら、一人で確認しに現地に向かって調べたから」
なるほど、そして、なんて行動力だ。思わず「……はぁ?」と声に出した私をチラリと見て、彼は話を続けた。
「そうか」
彼に対して、恋愛感情のようなものを抱いているのか?と己に問う。答えはもちろん、無い。少なくとも、今のところは。
ただ、私と同じく(かなりの程度の差があるが)家族に恵まれなかった人間として、仲間意識は感じている。あの添い寝は、とても恋人同士が互いを確かめるために行うものとは言いきれない。あれはただの、傷の舐め合いだった。
正直嫌ではなかったし、むしろまたしようと思っている自分がいる。それを口に出して彼に伝えるつもりは無いが、言ったとしても拒否されることはない、というのも分かっていた。自分と血の繋がった家族以上に、クロスと抱き合って眠ったときの温もりは心地良かった。我ながら理解できない感情すぎて、気持ち悪い。
気分と話題を変えるために、私は努めて明るい声で彼に話しかけた。
「ねえ、この世界にはどのくらいの国があるの?」
「そうだなあ、この国と同じくらいの規模のはざっと200。各地で市街地程度の規模の小さな国もごちゃごちゃあるから、全部で300近いんじゃないかな?正確な数は断言できない。ーーー絶えず変動してるから。
ただ、ここ一年でのそのうち約100は、もう滅んでしまった可能性が高いんだ。いくらなんでもこの数は異常だよ」
「それは、例の“ねじ”のせい?」
「否めないね。でも、中には戦争を常に行っている国もあるからね。来るべくして来た滅亡も中にはあるよ」
「もう一個質問」
「おう」
「どうしてクロスは滅んだ国の数や原因を、おおよその想像とはいえそんなに細かく話せるの?」
「国が滅んだら、一人で確認しに現地に向かって調べたから」
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