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三章
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しおりを挟むナイフを入手して、とりあえずの必要なものは手に入れた。予定外の時間のロスがあったため、空はすでに夕暮れになっている。
「マルト、ごめんね。説得するのに時間かかってしまって」荷物を持っていない方の手でマルトと手を繋ぎ、私達は町に戻る道を歩き出した。
「いいんだよ。叔父さんは頑固だから大変だったでしょ」
「うん。土下座した。土下座しすぎて三点倒立になった」
「さんてん........?なんか凄そうだね!
ーーーーあ!“神様”見せるんだった。ここからすぐ近くだからいこうよ」
神様、か。そう言えば見に行くって約束したな。時間は思ったより遅くなってしまったが、........彼女の両親にはしっかり謝らないとな。
「わかった。見に行こう」
「いこー!こっちだよ!」
ウキウキとした様子で私の手を引き、マルトは先程見掛けた樹木の方に向かって歩き出した。彼女の後ろ頭の綺麗な分け目や、プラプラと揺れるお下げ髪を眺めながら、私はぼんやりと後に続いた。
自分の手の中にある小さな手を、彼女のためにも振りほどいてあげたい。己の中に湧き上がるその衝動を抑えていいものか迷いながらも、繋いだ手は離さなかった。
樹木は周りの木々より何倍も大きく、そして太かった。天に向かって真っ直ぐと伸びる太い幹の頂点に、丸みのあるとても巨大な岩が上手いこと分かれた幹に引っかかった状態で乗っていた。見間違えかと思ったが、どうやら本当に乗っていたようだ。
「うわぁ、すごいね。どうしてこうなったの」
「ふふんっ」
マルトは私の手を離すと、両手を腰に当てて得意げに胸を張った。
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