わたしの愛した世界

伏織

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一章

1-11

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「余計なお世話かもしれないけど、君の母親について色々調べたよ。

彼女は本当は息子が欲しかった。だが最初に産まれたのは君だった。君のことが疎ましい感情はあったけど、世間に“良い母親”の自分を見せたい気持ちからそれを抑圧してた。そして5年前、君の弟が産まれた。

君の父親の遺伝子と、元モデルである自分の遺伝子を合わせた、イケメンな息子を作るために仕方なく性を受け入れていたが、息子が産まれた以上もうそれは必要なくなったわけだ。
何より、君の父親は乱暴だからね。君もよくわかってる通り、ね」


かなり皮肉な口調で付け加えられた最後に、私も思わず鼻で笑った。確かに、父のそれは乱暴で、人を物のように扱う、独りよがりな行為だった。
少年の言おうとしていたことは、薄々分かった。つまり、母は父の相手をしたくないので、代わりに私を差し出したのだ。父が自分の意思で私を襲ったのではなく、母がそうするように言ったのだ。


「風俗に行くのは病気のリスクがあるし、君の父親は気に入った女しか抱かない人だからね。ーーーーこれだけ聞くと、いい男に感じてしまうね。これだけ聞くと」

「あなた、面白い人だね」

「........うわぁ。皮肉じゃなくて心から面白いと思ってるでしょ、その顔」

「うん」

「君も、かなり面白い人だよ、うん」


まぁ、とにかく、母は私を身代わりにした。しかし罪悪感は人並みにあったのだろう。私に見せた今までの彼女の態度は、嘘には見えなかった。もしあれも演技なら、とんだ悪女だ。
私が死ねば、また再び母は父の相手をするのかとは思うが、この表情から察するに恐らくそれも長くは続かないのだろう。父を殺すか、それとも他に身代わり
アテがあるのかも知れない。母には双子の妹がいる。彼女は実家で仕事もせず引きこもっているらしいが、母と顔が同じなので、きっと父は満足するだろう。

そして弟は、長男として可愛がられ、そして姉が「ベランダから落ちて死んだ」から、周囲に哀れまれて優しくされながら、生きていくのだろう。


諸悪の根源は母で、そして父はその傀儡と言ったところか。私は母にとっては産みたくなかった子供で、父への生贄として育てただけの娘だった。自分の母親は、悪意に満ちた願望や策略で生きている、とんでもない女だったということが、よくわかった。


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