14 / 176
一章
1-11
しおりを挟む
「余計なお世話かもしれないけど、君の母親について色々調べたよ。
彼女は本当は息子が欲しかった。だが最初に産まれたのは君だった。君のことが疎ましい感情はあったけど、世間に“良い母親”の自分を見せたい気持ちからそれを抑圧してた。そして5年前、君の弟が産まれた。
君の父親の遺伝子と、元モデルである自分の遺伝子を合わせた、イケメンな息子を作るために仕方なく性を受け入れていたが、息子が産まれた以上もうそれは必要なくなったわけだ。
何より、君の父親は乱暴だからね。君もよくわかってる通り、ね」
かなり皮肉な口調で付け加えられた最後に、私も思わず鼻で笑った。確かに、父のそれは乱暴で、人を物のように扱う、独りよがりな行為だった。
少年の言おうとしていたことは、薄々分かった。つまり、母は父の相手をしたくないので、代わりに私を差し出したのだ。父が自分の意思で私を襲ったのではなく、母がそうするように言ったのだ。
「風俗に行くのは病気のリスクがあるし、君の父親は気に入った女しか抱かない人だからね。ーーーーこれだけ聞くと、いい男に感じてしまうね。これだけ聞くと」
「あなた、面白い人だね」
「........うわぁ。皮肉じゃなくて心から面白いと思ってるでしょ、その顔」
「うん」
「君も、かなり面白い人だよ、うん」
まぁ、とにかく、母は私を身代わりにした。しかし罪悪感は人並みにあったのだろう。私に見せた今までの彼女の態度は、嘘には見えなかった。もしあれも演技なら、とんだ悪女だ。
私が死ねば、また再び母は父の相手をするのかとは思うが、この表情から察するに恐らくそれも長くは続かないのだろう。父を殺すか、それとも他に身代わり
アテがあるのかも知れない。母には双子の妹がいる。彼女は実家で仕事もせず引きこもっているらしいが、母と顔が同じなので、きっと父は満足するだろう。
そして弟は、長男として可愛がられ、そして姉が「ベランダから落ちて死んだ」から、周囲に哀れまれて優しくされながら、生きていくのだろう。
諸悪の根源は母で、そして父はその傀儡と言ったところか。私は母にとっては産みたくなかった子供で、父への生贄として育てただけの娘だった。自分の母親は、悪意に満ちた願望や策略で生きている、とんでもない女だったということが、よくわかった。
.
彼女は本当は息子が欲しかった。だが最初に産まれたのは君だった。君のことが疎ましい感情はあったけど、世間に“良い母親”の自分を見せたい気持ちからそれを抑圧してた。そして5年前、君の弟が産まれた。
君の父親の遺伝子と、元モデルである自分の遺伝子を合わせた、イケメンな息子を作るために仕方なく性を受け入れていたが、息子が産まれた以上もうそれは必要なくなったわけだ。
何より、君の父親は乱暴だからね。君もよくわかってる通り、ね」
かなり皮肉な口調で付け加えられた最後に、私も思わず鼻で笑った。確かに、父のそれは乱暴で、人を物のように扱う、独りよがりな行為だった。
少年の言おうとしていたことは、薄々分かった。つまり、母は父の相手をしたくないので、代わりに私を差し出したのだ。父が自分の意思で私を襲ったのではなく、母がそうするように言ったのだ。
「風俗に行くのは病気のリスクがあるし、君の父親は気に入った女しか抱かない人だからね。ーーーーこれだけ聞くと、いい男に感じてしまうね。これだけ聞くと」
「あなた、面白い人だね」
「........うわぁ。皮肉じゃなくて心から面白いと思ってるでしょ、その顔」
「うん」
「君も、かなり面白い人だよ、うん」
まぁ、とにかく、母は私を身代わりにした。しかし罪悪感は人並みにあったのだろう。私に見せた今までの彼女の態度は、嘘には見えなかった。もしあれも演技なら、とんだ悪女だ。
私が死ねば、また再び母は父の相手をするのかとは思うが、この表情から察するに恐らくそれも長くは続かないのだろう。父を殺すか、それとも他に身代わり
アテがあるのかも知れない。母には双子の妹がいる。彼女は実家で仕事もせず引きこもっているらしいが、母と顔が同じなので、きっと父は満足するだろう。
そして弟は、長男として可愛がられ、そして姉が「ベランダから落ちて死んだ」から、周囲に哀れまれて優しくされながら、生きていくのだろう。
諸悪の根源は母で、そして父はその傀儡と言ったところか。私は母にとっては産みたくなかった子供で、父への生贄として育てただけの娘だった。自分の母親は、悪意に満ちた願望や策略で生きている、とんでもない女だったということが、よくわかった。
.
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
侯爵夫人は子育て要員でした。
シンさん
ファンタジー
継母にいじめられる伯爵令嬢ルーナは、初恋のトーマ・ラッセンにプロポーズされて結婚した。
楽しい暮らしがまっていると思ったのに、結婚した理由は愛人の妊娠と出産を私でごまかすため。
初恋も一瞬でさめたわ。
まぁ、伯爵邸にいるよりましだし、そのうち離縁すればすむ事だからいいけどね。
離縁するために子育てを頑張る夫人と、その夫との恋愛ストーリー。
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
外れスキルで始める、田舎で垂れ流しスローライフ!
Mr.Six
ファンタジー
「外れスキル」と嘲笑され、故郷を追放された青年リクト。彼の唯一のスキル「垂れ流し」は、使うと勝手に物が溢れ出すという奇妙な能力だった。辿り着いたのは、人里離れた小さな村。荒れた畑、壊れかけの家々、そしてどこか元気のない村人たち。
役立たずと思われていたスキルが、いつしか村を救う奇跡を起こす。流れ出る謎の作物や道具が村を潤し、彼の不器用ながらも心優しい行動が人々の心を繋いでいく。畑を耕し、収穫を喜び、仲間と笑い合う日々の中で、リクトは「無価値なスキル」の本当の価値に気付いていく。
笑いと癒し、そして小さな奇跡が詰まった、異世界スローライフ物語!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる