わたしの愛した世界

伏織

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序章

序章3

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母はもちろん、気付いているはずだ。しかし何も言わない。時々、意味ありげに私を見詰めるが、悪意は感じない。むしろ何だか、私に面倒を押し付けることが出来て安心しているようにも感じることがある。

私が父に純情を散らされたばかりの頃、ショックのあまり体調を崩した私に、母はとある薬を渡してきた。箱には外国の文字が書いてあり、中には小さな錠剤が30錠ほど、銀色のシートに並べられていた。


「これを毎日、決まった時間に順番に飲みなさい」と言われ、私はそれ以来ずっとその薬を飲み続けている。これが何の薬なのかは分からないが、薄々感じているものはある。しかし、敢えてそれは思考することを避けてしまう。


「ちゃんと動け!」


軽く頬を叩かれ、思わず我に返ってしまった。いつもは終わるまで他のことを考えて、逃避しているのだ。自室のドアを確認する。異常はないようだ。母はともかく、弟が覗いていたらどうしよう。弟は5歳だ。私を慕ってくれている可愛い弟に、こんな汚い私を見られたくない。


「お前、やる気あるのか?養われてる身で逆らうんじゃねぇぞ」

「........ごめんなさい」


うるさいなぁ。この人さえ居なければ、........この人さえ死ねば、こんなに苦しまなくて済むのに。

それとも私が死ねばいいのだ。私が死ねば、父に犯されることも無くなる。解放されるのだ。


「おい、いい加減にしろよ。手を抜くな」

「........るさいな」

「........あ?」


長年犯され続けて麻痺していたはずの心が、どうしてか、この時は急に動き出したのだ。胃の中が焼け付くような感覚が広がり、それはやがて明確な「怒り」となった。



「うるさい!もうやめて!全部お父さんのせいで私の人生はめちゃくちゃだよ!」


そう絶叫した直後、私の視界が真っ白になった。一発目の衝撃で視界が白くなり、二発目で今度は暗くなった。徐々に意識が遠のいてる間も、己の頭部に何度も衝撃が加えられているのは分かった。どうせ殴られてるんだろう。


殴るなら好きなだけ、殴ってくれ。そして私を殺してくれ。


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