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序章
序章5
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序章5
高一の少女が持つには、物理的にも感性も大分尖りすぎている刀を片手に、羽生さんはいかにも私が主人公です、とばかりに格好良く立っていた。
その傍らには、死装束とは違う、白い着物に身を包んだ女性が、........宙に浮いてる。うん、そっちの人だ。眼帯で右目を隠したその女性は、俺が今まで見てきた並の幽霊の類とは全く異なった存在感があった。
初詣なんかで神社に行くと、本殿の社の屋根にやたら神々しい奴が座って人混みを満足気に見下ろしてるのを見ることがある。羽生さんのスタンドのような立ち位置に居るあの女性も、恐らくその類いだろう。
「えっと、色々と聞きたいことはあるんだけど、とりあえずソレは銃刀法違反では........」
「知るか。私が法律だ」
そうだったのか。それなら仕方ないな........。多分何言っても無駄だ。
羽生さんは己の肩に掛けていたカバンから、どう見ても小刀用のサイズの木製の鞘を取り出した。
イヤ入らんやろ、と思わず関西弁でツッコミそうになった俺の目の前で、羽生さんは身長の3分の2くらいはありそうな刀身を、躊躇いなく鞘の中に差し込んだ。どういうカラクリかは分からないが、刀はいとも簡単に、スルスルとその中に飲み込まれていった。
「〇〇えもんを知ってるか、大国くん」
「そりゃぁ、もちろん」
「あれは私が作った」
今目撃したものを考えると、ちょっと信じたくなるセリフを真顔で言い、遊具の天辺から下りようと、羽生さんは格好良くジャンプする姿勢をとった。「................」が、やはり怖かったのか、彼女は体の向きを変えて後ろ向きにズリズリと這い下りてきた。
「さて、大国くんよ」
「ずり上がってるよ」
這い下りたせいで、セーラー服がずり上がっていた。ラクダ色のインナーが丸見えだ。うちの母親が使ってるのと似たような色のインナー着やがって。
高校に入学して1ヶ月少々、俺は今日、初めて羽生さんが喋る姿を見た。ついでに恥ずかしがる姿も。
無表情のまま、顔を真っ赤にして固まる羽生さんのセーラー服をサッと直してやり、俺はなるべく彼女を見ないようにして近くのベンチに腰掛けた。視界の端で、彼女がじわじわと方向転換して、じわじわとこちらに近付いてくる羽生さんを確認しながら、まるで野良猫の相手をしている気分だった。
「大国くんよ」
「はい」
彼女が目の前に立ってから、その声を出すまでも5分はかかった。なんて手のかかる子だろう。
何事も無かったかのようなすました顔で、格好良く腕を組んだ羽生さんは、まるでどこかの国の王様のような、とにかく偉そうな目で俺を見下ろしていた。
「おそらく、私に色々と質問したいことがあるだろう」
「うん、そうね。羽生さんも俺に質問したいことある?」
「多分ある」
けど、今は何も思い浮かばん........と、いじけた口調で続けた。じゃあ思い付いた時に何でも訊いて下さい。
「とりあえず、ついて来たまえ。場所を変えて話そうではないか」
高一の少女が持つには、物理的にも感性も大分尖りすぎている刀を片手に、羽生さんはいかにも私が主人公です、とばかりに格好良く立っていた。
その傍らには、死装束とは違う、白い着物に身を包んだ女性が、........宙に浮いてる。うん、そっちの人だ。眼帯で右目を隠したその女性は、俺が今まで見てきた並の幽霊の類とは全く異なった存在感があった。
初詣なんかで神社に行くと、本殿の社の屋根にやたら神々しい奴が座って人混みを満足気に見下ろしてるのを見ることがある。羽生さんのスタンドのような立ち位置に居るあの女性も、恐らくその類いだろう。
「えっと、色々と聞きたいことはあるんだけど、とりあえずソレは銃刀法違反では........」
「知るか。私が法律だ」
そうだったのか。それなら仕方ないな........。多分何言っても無駄だ。
羽生さんは己の肩に掛けていたカバンから、どう見ても小刀用のサイズの木製の鞘を取り出した。
イヤ入らんやろ、と思わず関西弁でツッコミそうになった俺の目の前で、羽生さんは身長の3分の2くらいはありそうな刀身を、躊躇いなく鞘の中に差し込んだ。どういうカラクリかは分からないが、刀はいとも簡単に、スルスルとその中に飲み込まれていった。
「〇〇えもんを知ってるか、大国くん」
「そりゃぁ、もちろん」
「あれは私が作った」
今目撃したものを考えると、ちょっと信じたくなるセリフを真顔で言い、遊具の天辺から下りようと、羽生さんは格好良くジャンプする姿勢をとった。「................」が、やはり怖かったのか、彼女は体の向きを変えて後ろ向きにズリズリと這い下りてきた。
「さて、大国くんよ」
「ずり上がってるよ」
這い下りたせいで、セーラー服がずり上がっていた。ラクダ色のインナーが丸見えだ。うちの母親が使ってるのと似たような色のインナー着やがって。
高校に入学して1ヶ月少々、俺は今日、初めて羽生さんが喋る姿を見た。ついでに恥ずかしがる姿も。
無表情のまま、顔を真っ赤にして固まる羽生さんのセーラー服をサッと直してやり、俺はなるべく彼女を見ないようにして近くのベンチに腰掛けた。視界の端で、彼女がじわじわと方向転換して、じわじわとこちらに近付いてくる羽生さんを確認しながら、まるで野良猫の相手をしている気分だった。
「大国くんよ」
「はい」
彼女が目の前に立ってから、その声を出すまでも5分はかかった。なんて手のかかる子だろう。
何事も無かったかのようなすました顔で、格好良く腕を組んだ羽生さんは、まるでどこかの国の王様のような、とにかく偉そうな目で俺を見下ろしていた。
「おそらく、私に色々と質問したいことがあるだろう」
「うん、そうね。羽生さんも俺に質問したいことある?」
「多分ある」
けど、今は何も思い浮かばん........と、いじけた口調で続けた。じゃあ思い付いた時に何でも訊いて下さい。
「とりあえず、ついて来たまえ。場所を変えて話そうではないか」
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