43 / 44
終章
1
しおりを挟むあの騒動から3日後、マスコミの関係者だという女性が私を訪ねてきた。
学校が終わった後、一人で電車に乗って自宅のある区域の駅に降りたら、出入口の所でとある女性に呼び止められたのだ。 彼女は近くにある喫茶店で話がしたいと言って、私を誘った。
知らない人についていくなと幼少より教えられてきたが、この歳になってまでそれを守る気はない。 それに、なんとなくこの女性と話をしてみたかった。
「大変だったね」
喫茶店の窓際のテーブルに向かい合って座り、飲み物を注文した。 女性はミルクティーで、私はオレンジジュース。
「でも、お手柄だったじゃない。
聞いたわよ、家に忍び込んでまで証拠を探したんだって?」
と、いたずらっぽく笑う女性。 とても美人だった。
「あの…………、話はなんですか?」
「もちろん、今回の事件の話よ」
「全て警察に話しました。 マスコミなら知ってるでしょ?」
土日の二日間、警察署に行って事件の一部始終を話していた。 何回も。 当然そのことはマスコミにも通じてるのだろう、全国ニュースでも取り上げられていた。 名前こそ出されなかったが「一人の少女の大活躍」と賞され、誇らしくもあったが面倒だった。
「いいえ、あなたの話じゃなくて、あたしの話を聞いて欲しいのよ」
「あなたの?」
「ええ。
結局、奴がどこの誰なのか、知りたいんじゃない?」
女性の笑顔に、少し危険なものを感じ取った。 殺意や憎しみではないが、修羅場を潜り抜けてきた人間独特の、闇と色気を感じさせる笑みだ。
「…………本当にマスコミなんですか?」
「どうしてそう思うの?」
「マスコミの人よりも刑事とかの方が似合いそうだから」
私の言葉に、女性は少し驚いた顔をした。 そして「へーぇ」面白そうに笑う。 というよりにやついた。
しかし私の質問は無視することにしたらしい。
「“脳下垂体小人症”って知ってる?」
「脳下垂体………?」
「小人症。 まあ早い話が、身体の異常で身長が伸びないって病気」
「はぁ………」
「あの犯人はその脳下垂体小人症の人間だったの」
なるほど。 どうりでやたら小さいと思ったのだ。
そこで丁度店員が飲み物を持ってきて、私達の前に置いた。 オレンジジュースを一口飲んで、私は女性に向き直る。
.
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
心霊捜査官の事件簿 依頼者と怪異たちの狂騒曲
幽刻ネオン
ホラー
心理心霊課、通称【サイキック・ファンタズマ】。
様々な心霊絡みの事件や出来事を解決してくれる特殊公務員。
主人公、黄昏リリカは、今日も依頼者の【怪談・怪異譚】を代償に捜査に明け暮れていた。
サポートしてくれる、ヴァンパイアロードの男、リベリオン・ファントム。
彼女のライバルでビジネス仲間である【影の心霊捜査官】と呼ばれる青年、白夜亨(ビャクヤ・リョウ)。
現在は、三人で仕事を引き受けている。
果たして依頼者たちの問題を無事に解決することができるのか?
「聞かせてほしいの、あなたの【怪談】を」
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
僕の性体験
蒼江 雨
恋愛
僕は世間ではZ世代と呼ばれている。
時代の流れとともに、性に関する価値観や考えた方も変わっているのだと僕は思う。
僕自身、性体験が多い訳では無いが、その時感じたこと、心境などをここに残したいと思う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる