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伏織

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なんやかんやであのあと、白兎は俺の家に上がり込み、母親にお目通しをした。
 
そして想像通り白兎に萌え壊れた母親に、「コーちゃん!飼っていい!?」と懇願された。
 
 
「猫二匹で充分だろ!」
 
 
白兎を大事そうに胸に抱え、泣きそうな顔をする母親。 あなたまで泣き落としですか。
 
 
「お~ね~が~い~!」
 
『『コーちゃん!コーちゃん!』』
 
『主さん!お願いでありんす!』
 
 
うるせぇ…………!
 
 
「あー!もう!
 わかったよ!どんとこいや!」
 
 
 
 
 
 
 
はい、そういう結果です。
神様俺はマゾなんでしょうか。
 
 
翌日の朝に俺を見た飛鳥は無表情で「フン」と鼻を鳴らすだけだった。 足元に鞄から子猫二匹、肩にウサギ一匹という姿なんだが、少しぐらい笑ってくれた方が気が楽になりますわ。
高校一年生ですよボクは。 不思議の国にでも迷いこんだんじゃあるまいし。
 
 
「猫は見付からないようにしろよ」
 
「……登場キャラに動物多すぎませんかね」
 
「それは私に言っても無駄だ」
 
 
そうだね無駄だね。
おい、いい加減にしろよ。 ―――――――誰とは言わないけど。
 
 
 
「ところでどうだい、成果のほどは」
 
 
ここのところ俺が飛鳥を家まで迎えに行き、一緒に登校するのがデフォルトになりつつあり、当然ながら俺達が付き合ってるという噂も出てきた。 嬉しくもあり煩わしくもあり…………いや、やっぱウザいわ。
 
 
「ねーよ」
 
 
俺、どれくらいあの蔵で宝探ししてるとおもいます?
 
三週間ですよ。 三週間。
 
 
こんだけ探しても、見付かる書物は歴史がなんたら書いてあったり、生活の知識だったり、呪いの「の」の字もありゃしない。 ふざけてんのか。
 
 
「そりゃそうだよ。あんな所に有益な情報なんて無いさ。
 ただね、金目の物でもないかなぁと」
 
「お前もか」
 
 
皆して金のことばっかだわ。
 
 
つーか、飛鳥、死ねばいいのに。
 
 
「そんな目で見ないでよ……怖いよぉ……」
 
 
変わり身の早いことったらもう。
俺が睨んだ途端に表情が変わり、怯えた演技をして見せる。 これがまた可愛いもんだから、ピュアな思春期ボーイな俺は怒るに怒れない。
 
 
  
 
 
「まあいい、冗談はこれからだ」
 
「そうだねそろそろ冗談は控え……………いま『これから』って言いました?まだあんの?」
 
「…………」
 
「無視とか止めて下さい」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
さて、登校した後は学生らしく授業を受け、半日で学校は終わる。
 
 
すいませんが下校まで時間進めちまうよごめんね。
今日最後の水泳の授業で飛鳥の水着姿とかもありましたが、俺的に貧乳の需要はないのです。
 
 
「死ね」
 
「ぼへぁ!!
 ―――い、今何をしたの!?一瞬視界が真っ赤になったよ!」
 
「今、私のこと貧乳とか思ってただろ」
 
「…………いえ、そんな、滅相もございません」
 
「次そんなこと考えたら、お前の目玉に直接油性ペンで落書きするからな」
 
 
ひえぇ……。
 
校門を出てしばらく歩いた所で、立ち止まって鞄を開ける。 すると待ちかねていた様子で保食と月読が顔を出す。
 
 
『おなかすいた!』
 
『ほんと!空腹すぎてお兄たまを食べちゃおうかと思った!』
 
「え……」『え……』
 
 
弟君の異常な発言に、兄貴と俺とがドン引きする。 飛鳥は自分の鞄から昼に売店で買ったカニカマを出して、ビニールを剥いて二匹に差し出した。 「知ってるか、保食ってのは日本神話における食物の神様の名前だ」あら博識じゃないの。
 
 
「そして月読は天照大御神(あまてらすおおみかみ)の弟」
 
『因縁の二人でおだんすね』
 
 
俺の母親の蜂蜜石鹸で身体を洗った白兎に死角はなかった。 もう臭いなんて言わせない。
 
俺の肩から飛鳥の肩に飛び移り、白兎は飛鳥の頬に擦り寄った。 
 
 
「美味しそうな匂いになった。そろそろ鍋にしようぜ」
 
 
やめとけ。 いじめんな。
また切腹騒ぎでもするかという俺の心配は杞憂(きゆう)に終わった。 どうやら大分心に余裕が出来たようで、白兎は『いやーん!』とか言いながら飛鳥の頬をつついてる。 女子か。
 
 
「“因縁”て、どういうこと?」
 
「まあ、月読の命が保食の命を刀でぶった切ったわけよ。
 それに怒った天照大御神とは絶縁、お互い遠く離れた土地に住み二度と会えなくなり、そうして昼と夜が生まれた。
 
 天照大御神は太陽、月読の命は月を神格化したものだから、結局は神話なんて人の想像の話だわ」
 
「ほうほう。また一つ勉強した」
 
「賢くなったな。感謝しろよ」
 
 
いや、しませんけど。
 
 
 

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