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壱
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しおりを挟む西王母、と聞いてまず思い出したのは「西遊記」である。
西王母の治める国にある、食べると不老不死になるという桃を、孫悟空が盗み食いしたため、孫悟空は石の牢に入れられたという。 ――――何故こんなに詳しく思い出せたのかというと、つい最近漫画で読んだからだ。
「西王母っていうのは、“西遊記”の西王母?」
「そうそう。 やっぱり解ると思っていたよ。 この間学校の図書館で“西遊記”の漫画を読んでたのを見たから」
『漫画……それって高校生向けなの?』
「いや、文章にひらがなが多かったから、もっと年齢層は低いと思う」
小学生向けですよ悪かったな。
「私の家は代々事件や事故、水道管破裂や屋根が抜け落ちる被害、体に正体不明の吹き出物が出来た―――――等々、
そういったあやかしに関するものや、人知をはるかに超えた現象などで及ぶ問題を解決する、便利屋みたいな稼業をしている」
「いきなり本題に入ったね」
羽生さんは座布団の上に胡座(あぐら)をかき、物憂げに卓袱台に肘をついた。
「これが、意外と忙しいんだわ。 昨今じゃあやかしが視える人がグッと少なくなったから、人手も足りないし」
「あー…………、お察しします」
長い溜め息を吐きながら、羽生さんは意味ありげにこちらに視線を投げた。
はにゅうさんが こちらを見ている
なかま が ほしいようだ
「…………」
しかし俺は気付かないフリをした。
「一人でやるのは大変なんだよなー!」
羽生さんが半ば叫ぶけど、俺は聞こえないふりをして、「そういや、さっきあのデカい奴を一瞬で消したのは何?」話題を少し変えてみた。
「ああ、あれ」
白けた顔をされた。 ちょっと傷付いた。
「文字通り、“斬った”のさ」
「確かにそう見えた」
「まあ見ろ。 コレは――――」
と言って、腰のコルセットに挟んでいた匕首(あいくち)を取り出し、卓袱台に置いた。
「草薙の剣という。
斬ったあやかしの存在を、この世から完全に掻き消してしまう剣だよ」
「じゃあ、それでこの猫を―――」
冗談のつもりで言ったら、それまで黙って卓袱台の上に座っていた子猫らが、『にゃー!!』と興奮した様子で俺に襲い掛かってきた。
襲い掛かる、といっても、小さなフワフワした塊が二つ、腕に纏わりついてきただけだが。
『コジローのハゲ!』
『うんこ!!』
「ハゲてないし、うんこはお下品だからやめなさい」
『うるさいハゲ!』
「だからハゲてない! よく見ろ、黒々として艶やかな髪の毛がビッシリと生えてるじゃないか」
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