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3章
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私もかつてはこの学校の1年生で、校舎の1階の教室に毎日通っていた時期があった。あの頃は真新しい制服を見に纏い、毎日ワクワクした気持ちで過ごしていた。
1年2組の教室は、私達が降りてきた階段のすぐ近くにあった。階段を降りて左手に、1年1組と2組が並び、3組以降は階段を挟んで右に並んでいる。この配置は2年、3年も同様だ。帰り支度を終えて教室から出てくる生徒たちの顔つきは、つい数ヶ月前まで中学生というだけあってまだ幼く、なんだかそんな子達の中に自分たちがいることが、いたたまれなく感じた。
「ユリ、居心地悪いから早く帰りたいんだけど」
「まあまあ、落ち着いて」
なだめる様にそう言いながら、ユリは後ろから私の両肩を揉んだ。そのまま前に押し出すようにして、1年2組の教室のドアまで私を押していった。ちょうどドアを開けて出てきた男子を呼び止めると、ユリは「ハニュウって子はいる?」と訪ねた。
三年生に話しかけられたことに少々緊張しつつ、男子はあそこです、と教室の一角を指差した。男子に例を言ったあと、なにか期待を込めたような弾んだ声で、
「あの子らしいよ。きっと助けてくれる」
と囁いた。なんだか少し照れくさくなるので、あんまり耳元で囁かないで欲しいものだ。まるで恋人のようだもの。
「あの子」
さっき男子が指差した先には、一人の女子生徒の後ろ姿があった。毛先が方につかない程度の長さの茶色の髪の毛で、キレイに切りそろえられていていわゆる「おかっぱ」と呼ばれるものに近かった。どんな顔をしているかは、後ろ姿なので見えない。体つきは小柄で、繊細な人形の様に華奢だ。それだけでも、彼女は美しいと感じる。
周りの生徒が友人らと語らいながら帰り支度をしている中、彼女は熱心に文庫本を読んでいる様子だった。
教室の後方のドアから覗いている私達からも、教室前方の席の彼女の本が見えるほどに分厚い本だ。生徒たちが次々と教室から出ていくが、彼女は気にもとめずに読書に集中しているようだった。なんだか声をかけるのも申し訳ないほど張り詰めた雰囲気なので、私達は黙って彼女の読書が終わるまで待っていた。
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