20 / 23
3章
3-5
しおりを挟む「浜本先生! 日村先生のこと、大丈夫ですか?」
「元気だしてください!私達にできることがあったら、なんでも言ってください!」
と、甲高い、作ったような甘い声で、女子生徒たちは口々に浜本先生を励ましている。その中には、始業式にコソコソと「日村先生ってなんかうざかった」などと、さなえ先生の悪口を言っていた子も居た。
浜本先生はなんとも頼りない笑顔で、「はは……、ありがとね」とだけ返していた。
「犯人は久保田だったんでしょ! あいつまじでキモかったし、日村先生のストーカーだったみたいだし」
「新聞でも犯人は同僚って書いてあったし、間違いなく久保田でしょ。 二学期になって急に来なくなったじゃん」
「でも、あの顔で人の婚約者に手を出そうなんて、サイテー」
なんともひどい言い草だが、久保田先生はそこまで悪い人ではなかったし、ストーカーなんて、さなえ先生も悩んでいる様子はなかった。ただ、久保田先生は見た目がとても不細工なのは事実だ。思春期の女の子の大半が、人の見た目だけで明らかに態度を変えるのは、火を見るより明らかだ。
しかし彼女たちの久保田先生への雑言は理不尽だった。彼の醜い容姿だけで気持ち悪がり、勝手にさなえ先生のストーカーと決めつけ、ひどい言葉で貶める。何様のつもりだろうか。
「お門違いな奴らだねえ」
通り過ぎたあと、階段を降りながら、百合がボソッと呟いた。低くて、どこか火カイそうな響きのある声だった。
「まあ、でも彼女たちなりに心配してるんでしょ。 婚約者が殺されたんだし、浜本先生は」
「うん」
うなずきながらも、百合には気に入らない何かがあるらしい。暗い表情でまっすぐに前を見つめている。なんだか、私まで気持ちが落ちてしまう。
つないでいた手をぎゅっと握ると、それに気づいた百合がハッとした表情でこちらを見た。
「ごめん。考え込んじゃった」
「そっか」
・
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
AstiMaitrise
椎奈ゆい
ホラー
少女が立ち向かうのは呪いか、大衆か、支配者か______
”学校の西門を通った者は祟りに遭う”
20年前の事件をきっかけに始まった祟りの噂。壇ノ浦学園では西門を通るのを固く禁じる”掟”の元、生徒会が厳しく取り締まっていた。
そんな中、転校生の平等院霊否は偶然にも掟を破ってしまう。
祟りの真相と学園の謎を解き明かすべく、霊否たちの戦いが始まる———!
追っかけ
山吹
ホラー
小説を書いてみよう!という流れになって友達にどんなジャンルにしたらいいか聞いたらホラーがいいと言われたので生まれた作品です。ご愛読ありがとうございました。先生の次回作にご期待ください。
飢餓
すなみ やかり
ホラー
幼い頃、少年はすべてを耐えた。両親は借金の重圧に耐え切れず命をとうとしたが、医師に絶命された少年にはその後苦難が待っていた。盗みに手を染めてもなお、生きることの代償は重すぎた。
追い詰められた彼が選んだ最後の手段とは――「食べること」。 飢えと孤独がもたらした行為の果てに、少年は何を見出すのか___…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる