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3章
3-4
しおりを挟む放課後になるまで、百合は一体何を企んでいるのかを教えてくれなかった。尋ねても、意味ありげにニコニコとするだけで、何も言わないのだ。
就業のチャイムが鳴り、帰り支度を済ませたあと、百合に腕を掴まれた。あんなに怖がっていたというのに、今ではなんだか、ウキウキしているように見える。腕を引かれながら、私は百合に言った。
「そろそろ教えてよ。 何なの」
「ふふふ、それはねえ」
ツコし吊目がちな目を細め、猫のような可愛らしい笑顔を浮かべて、百合は私の耳元に顔を近づけ、こう言った。
「うちの学校にはね、霊能力者がいるの」
「……はぁ?」
あまりにも突飛なことを言われたので、思わず眉間にシワを寄せて百合の顔を見返した。幽霊が見えると言っている私の話も相当なのだが、彼女は一体何を言っているのだろうか。
「そういう反応すると思った!」
百合は不満そうに唇を尖らせて、そんなことを言ってみせた。サエの幽霊の話は真面目に聞いたじゃん、と言うが、いくらなんでも話がおかしい方向に向いているのだもの。それに、百合もなかなか怖がって冷静に聞いているようにも見えなかったが。
「幽霊見たくせに。 サエ、いまさら何いってんの」
「…………」
まあ、そのとおりだ。何も言い返せない。「ごめん」あまりもバツが悪くて、そう謝罪した。百合はニッコリと笑って、気にしていないからと答えてくれた。
「とにかく、行こ! その子は一年生なの。 話だけでもしてみようよ」
止まった空気を切り裂くような、快活ではっきりとした声で、百合が言った。私としては別に断る理由もないし、単純にその霊能力者という人に興味があるので、そのままついていくことにした。
百合に手を引かれるままに、私たちの教室のある三階から降りる階段を降りていく。途中、二階の踊り場で数人の女子生徒が集まっていた。そしてその中心に、浜本先生が困ったような笑みを浮かべながら立っていた。
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