Cuore

2章

2-2

居間の片隅に、うちで購読している地方の新聞紙が積み上げられている。せめて二週間に一度くらいの頻度でまとめて捨てたいのだが、ものぐさなのもあって毎回半年くらい溜めてしまう。
最後に捨てたのは七月の始め頃なので、さなえ先生の事件の事を書かれた新聞もあるはずだ。

何だか気になって、私はその山に手を伸ばした。
さなえ先生の事件が本当に皆が噂している通りなのか、気になった。

一番上から取ればいいのに、私は何も考えずに真ん中の新聞をつかんで、一気に引っ張り出した。
当然、新聞の山は崩れた。バサバサと紙の束が落ちて、足元を埋め尽くす。後で片づけなくてはならない。というか、いい加減捨てなきゃ。


「あーあ」


大きくため息を吐きながら、さっき引っ張り出した新聞紙に目を落とした。

偶然、なのかそれとも必然か、その新聞紙は目的のものだった。


『地元高校の女性教師、同僚に刺殺される』


センセーショナルな見出しとともに、目線を入れてはいるが、さなえ先生の顔写真が掲載されている。小さな文字で『今年の春に同級生と旅行に行ったときの写真』と注釈が付いている。提供したのも同級生だと書かれている。

その上同級生とやらはインタビューにも応じており、さなえ先生が昔どんな人だったかとか、思い出とか、根掘り葉掘り書かれていた。

犯人も被害者の名前も伏せてあるのだが、解る人には解る内容だ。あまりにもデリカシーがないので、思わず顔をしかめてしまった。他人のプライバシーを記事にしてお金を稼ぐのも気持ち悪いが、死んだ人の情報を簡単に提供した、さなえ先生の同級生はさらに気持ちが悪い。

さなえ先生は体中を滅多刺しにされ、体の原型を留めていなかったという。彼女の親族は遠い土地に住んでおり、取材を申し込んでも拒否されたという。両親もなくなっているとのこと。

一面を飾っている割には、内容は大したものではなかった。クラスメイト達がしていた噂話と、ほとんど同じ内容だ。殺されたのは地元高校の教師、惨殺された、犯人は同僚。
同僚、という言葉と、今現在久保田先生が居ない事から、やはり久保田先生が犯人として捕まったのだろう。

頭が重く感じ、ゆっくりと床に腰を落とした。こうして確認しても尚、私には本当に久保田先生が犯人なのか、信じられなかった。


「うう……っ」


気分が悪い。急に吐き気がして、頭もどんどん重く、視界が暗くなっていく。どうしたんだろう。悪いものでも食べたかな。こんなに頭が痛いのは、昔、インフルエンザのかかった時以来だ。


「……、昔？」


いつ、インフルエンザになったっけ。覚えてないけど、なったような気はする。
今はそんなことはどうでもいい。とにかく、体調が悪いのだ。


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