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=1巻= 寝取られ女子、性悪ドクターと出会う ~ 永遠の愛はどこに消えた? ~==
2-2.このドクター、口は悪いが顔はいい
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そもそも最初からワケありな空気が漂っていたし、課長だってワケありだとはっきり口にしていた。にもかかわらず、またまた妹に彼氏を寝取られた挙げ句、なぜか親からは自分が怒られるといった状況にうんざりし、遠くへ行きたいという気持ちに従い飛びついた千秋が悪い。
悪いのだが――、さすがにこれはと口ごもりたくもなる。
「案内してくれた人が、うちの会社の人じゃなくて空港の管理会社の人だったってのもなあ」
事務所とは名ばかりな、客先の資料室にある一角に戻り第一声にぼやく。
今まで同様にチームがあり、上司がいて、先輩がいて――なんてことを考え緊張していたが、蓋を開けてみればなんのことはない、千秋が沖縄支局長で沖縄支局平社員。
つまり、誰もいない開放感を得るかわりに、なにが起きても自己責任ということだ。
(駄目押しに、客先のメインは空港ビルのシステムだけど、市内の病院のシステム保守も担当だし)
遠隔地勤務手当という人件費を抑えるために、二つの業務をひとまとめにしているのだろう。
「課長が頭を抱えるわけだわ。……規模は小さいけれど週ごとにトラブルが発生しているし、まったく違う業界のシステムを両方ってなると、頭の切り替えが大変だもんね」
基礎が同じでも、専門が違えばまるでお手上げな例は世にいくらでもある。
同じ営業でも、昨日までお菓子を売っていた人に、いきなり武器を売れと命令してもすぐに結果が出ないのと同じだ。
千秋は与えられたデスクに座りつつ、たよりない資料が入ったUSBをパソコンに差し込みウィルスチェックする。
その待ち時間に顔を真上に向け、我慢していた溜息を吐く。
「これは、人間として試されていますよ千秋さん」
少し色がくすみかかった天井を睨んで、弱気になりかけている自分自身へ活を入れる。
家族と離れて生きて行く。自分だけの人生を生きていく。それが絵空事や夢ではなく、現実として目の前にあり、考えていたより厳しいかもしれないからとひるんではいられない。
(逆に考えるんだ。ここで生き抜いて帰れれば、きっとどこでも生きていける)
――すくなくとも、仕事だけはそうだ。
ふんっ、と鼻息も荒く顔を正面に向け、パソコンのデスクトップに付箋アプリを貼り付けて、やることを思いつく端から書きだす。
資料を読み込む。本当か確認して最新を残して整理する。過去の障害事例を読む。
「あと……できるだけ、人のつながりを作ったほうがいいな」
資料が数値で管理されていないような客先は、人同士のつながりが密で長老的な人が情報を握っていることがままある。
それでなくとも本当に資料通りの設定がされているのか、機器が置かれているのかさえも怪しい。
つまり、今までのようにデスクワークだけではやがて行き詰まるということだ。
「今日の障害は、業務用Wi-Fiが繋がったり切れたりが頻繁で、地上組から仕事にならないって声が上がって来ているんだっけ」
最初は一日に一回か二回だったのが、今では一、二時間に一回と頻繁になって来ているらしい。
使っているのは手荷物受付の連絡や勤怠管理など、飛行機の運航には大きく影響がないものではあるが、少し気になる。
「これは、直接行ってから資料の場所に機器があるか、電源が通ってるかを確認するのが先だよね」
幸い、着任初日の午後に滑走路へ降りる資格試験を受けて合格している。
飛行機の真下は無理だが、屋根があるエリアまでは立ち入り許可が出ているのを幸いに、千秋は昼休みの間で資料を頭に叩き込み、午後一杯を使って〝ハブ(蛇じゃないよ)〟を探す旅にでることにした。
悪いのだが――、さすがにこれはと口ごもりたくもなる。
「案内してくれた人が、うちの会社の人じゃなくて空港の管理会社の人だったってのもなあ」
事務所とは名ばかりな、客先の資料室にある一角に戻り第一声にぼやく。
今まで同様にチームがあり、上司がいて、先輩がいて――なんてことを考え緊張していたが、蓋を開けてみればなんのことはない、千秋が沖縄支局長で沖縄支局平社員。
つまり、誰もいない開放感を得るかわりに、なにが起きても自己責任ということだ。
(駄目押しに、客先のメインは空港ビルのシステムだけど、市内の病院のシステム保守も担当だし)
遠隔地勤務手当という人件費を抑えるために、二つの業務をひとまとめにしているのだろう。
「課長が頭を抱えるわけだわ。……規模は小さいけれど週ごとにトラブルが発生しているし、まったく違う業界のシステムを両方ってなると、頭の切り替えが大変だもんね」
基礎が同じでも、専門が違えばまるでお手上げな例は世にいくらでもある。
同じ営業でも、昨日までお菓子を売っていた人に、いきなり武器を売れと命令してもすぐに結果が出ないのと同じだ。
千秋は与えられたデスクに座りつつ、たよりない資料が入ったUSBをパソコンに差し込みウィルスチェックする。
その待ち時間に顔を真上に向け、我慢していた溜息を吐く。
「これは、人間として試されていますよ千秋さん」
少し色がくすみかかった天井を睨んで、弱気になりかけている自分自身へ活を入れる。
家族と離れて生きて行く。自分だけの人生を生きていく。それが絵空事や夢ではなく、現実として目の前にあり、考えていたより厳しいかもしれないからとひるんではいられない。
(逆に考えるんだ。ここで生き抜いて帰れれば、きっとどこでも生きていける)
――すくなくとも、仕事だけはそうだ。
ふんっ、と鼻息も荒く顔を正面に向け、パソコンのデスクトップに付箋アプリを貼り付けて、やることを思いつく端から書きだす。
資料を読み込む。本当か確認して最新を残して整理する。過去の障害事例を読む。
「あと……できるだけ、人のつながりを作ったほうがいいな」
資料が数値で管理されていないような客先は、人同士のつながりが密で長老的な人が情報を握っていることがままある。
それでなくとも本当に資料通りの設定がされているのか、機器が置かれているのかさえも怪しい。
つまり、今までのようにデスクワークだけではやがて行き詰まるということだ。
「今日の障害は、業務用Wi-Fiが繋がったり切れたりが頻繁で、地上組から仕事にならないって声が上がって来ているんだっけ」
最初は一日に一回か二回だったのが、今では一、二時間に一回と頻繁になって来ているらしい。
使っているのは手荷物受付の連絡や勤怠管理など、飛行機の運航には大きく影響がないものではあるが、少し気になる。
「これは、直接行ってから資料の場所に機器があるか、電源が通ってるかを確認するのが先だよね」
幸い、着任初日の午後に滑走路へ降りる資格試験を受けて合格している。
飛行機の真下は無理だが、屋根があるエリアまでは立ち入り許可が出ているのを幸いに、千秋は昼休みの間で資料を頭に叩き込み、午後一杯を使って〝ハブ(蛇じゃないよ)〟を探す旅にでることにした。
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