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=1巻= 寝取られ女子、性悪ドクターと出会う ~ 永遠の愛はどこに消えた? ~==
1-7 寝取られましたが、それがなにか?
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それにしても、愛とは、いや、恋とはなんだろう。
元彼となった会社の先輩は、最初こそ千秋に恋し、愛していると口走っていたが、結局、今までの彼氏同様に妹の千春に心移りをしてしまった。
だけれど、確かに一度は千秋を望んでいた。元ラグビー部で体育会系らしく、トライしてダメでもめげずに千秋を口説き、断られては笑い、また明日な! などと口にしていた。その笑顔はわりと好きだった。
――やっぱり、可愛げがないのがいけなかったのかな。
親からも今までの彼氏からも、そして寝取られた彼氏も口にされ、だから千春を選ぶのだと暗に主張する。
だけれど、何度いわれても千秋にはわからない。
わからないし、彼らが望む可愛げが妹である千春のような外見の美しさや繊細な所作だとしたら、天地がひっくり返っても千秋には身につけられそうにない。
「…………可愛さなんて、一生、縁がない気がする」
自分自身にか、遠く置き去りにした両親やその他への弁明か、思わずぼやいた刹那。
「そんなことは、ない」
どこかふてくされた、けれど意地悪ではなく照れ隠しでそうなったのだとわかる優しい声が、鼓膜を揺らす。
(そうなのかな。いつか、私もまた恋できるようになるのかな)
愛と男に覚めている上、自己肯定感も地を這う低さだが、それでも、がんばっていればいつかは永遠の愛とやらを手にできるのだろうか。
(恋愛……が上手くいくとは思えないけれど、一丁前に結婚はしてみたいって思うしなあ)
大学時代から付き合っていた彼氏と、この春見事に授かり結婚した友人を思う。
とても幸せそうに微笑み、白いウエディングドレス姿で信頼しきった眼差しを新郎へ向けていた彼女は、月並みな表現ではあるが、本当におとぎ話のお姫様みたいだった。
――そして、幸せに暮らしましたとさ。
その一言を添えられるような出会いが、千秋にもいつかあるのだろうか。
無理だ。いやでも。わからない。だけど。
そんな風に、内心で自己否定と期待を繰り返していると、突然、ぐうっと胃が押し上げられる気持ち悪さを覚え、あれっ? と思っているうちにドスンと下から突き上げるような振動が来た。
驚いて目を開けた千秋は、考えに耽るうち、自分が寝てしまっていたことに気がついた。
「当機は那覇空港に着陸いたしました。気温は20度。肌寒く、小雨が降るあいにくの天気ですが翌朝にかけて晴れていくとの予報がございます。一足早い梅雨の気配ですが、明日の太陽を心待ちに那覇の夜をお過ごしください。また、ベルト着用サインが消えるまで、お座りのままお待ちください。上の物入れを開けた際に手荷物がすべり落ちるおそれがありますので……」
滑らかな機内アナウンスが続くに従って意識が現実へと浮上してくる。
そうか、雨が降っているのかと外を見れば、銀糸のように細かい雨の中、ヘルメットを被ったグランドスタッフが誘導したり、貨物コンテナを載せるための連結した車を機体へと寄せていたりした。
――ああ、空の上での夕日を見逃しちゃったな。
(調子に乗ってスパークリングワインを三杯も飲んだから)
それにしても、20度で肌寒いとはさすが南国だなと思っていると、隣で人が動く気配がした。
横目で見やれば、超絶美形のイケメンがつまらなさそうな顔でシートベルトに手をやっていた。
(あー……)
気まずさに目を逸らす。
今思えば、彼に対しても可愛げない態度を取っていたと思う。
ハッキリ言って思い出すのも恥ずかしい黒歴史ではあるが、やらかしたのは千秋が先で、彼は被害者だ。
トラブルで頭が混乱していた上、触っていた場所が場所だったために思考停止している中、痴女呼ばわりされてカッときたが、彼の立場からすれば、そう口走り怒るのも無理がないと気付く。
後悔と反省がない交ぜになった感情が、じわじわと胸の奥から湧いてきた。
元彼となった会社の先輩は、最初こそ千秋に恋し、愛していると口走っていたが、結局、今までの彼氏同様に妹の千春に心移りをしてしまった。
だけれど、確かに一度は千秋を望んでいた。元ラグビー部で体育会系らしく、トライしてダメでもめげずに千秋を口説き、断られては笑い、また明日な! などと口にしていた。その笑顔はわりと好きだった。
――やっぱり、可愛げがないのがいけなかったのかな。
親からも今までの彼氏からも、そして寝取られた彼氏も口にされ、だから千春を選ぶのだと暗に主張する。
だけれど、何度いわれても千秋にはわからない。
わからないし、彼らが望む可愛げが妹である千春のような外見の美しさや繊細な所作だとしたら、天地がひっくり返っても千秋には身につけられそうにない。
「…………可愛さなんて、一生、縁がない気がする」
自分自身にか、遠く置き去りにした両親やその他への弁明か、思わずぼやいた刹那。
「そんなことは、ない」
どこかふてくされた、けれど意地悪ではなく照れ隠しでそうなったのだとわかる優しい声が、鼓膜を揺らす。
(そうなのかな。いつか、私もまた恋できるようになるのかな)
愛と男に覚めている上、自己肯定感も地を這う低さだが、それでも、がんばっていればいつかは永遠の愛とやらを手にできるのだろうか。
(恋愛……が上手くいくとは思えないけれど、一丁前に結婚はしてみたいって思うしなあ)
大学時代から付き合っていた彼氏と、この春見事に授かり結婚した友人を思う。
とても幸せそうに微笑み、白いウエディングドレス姿で信頼しきった眼差しを新郎へ向けていた彼女は、月並みな表現ではあるが、本当におとぎ話のお姫様みたいだった。
――そして、幸せに暮らしましたとさ。
その一言を添えられるような出会いが、千秋にもいつかあるのだろうか。
無理だ。いやでも。わからない。だけど。
そんな風に、内心で自己否定と期待を繰り返していると、突然、ぐうっと胃が押し上げられる気持ち悪さを覚え、あれっ? と思っているうちにドスンと下から突き上げるような振動が来た。
驚いて目を開けた千秋は、考えに耽るうち、自分が寝てしまっていたことに気がついた。
「当機は那覇空港に着陸いたしました。気温は20度。肌寒く、小雨が降るあいにくの天気ですが翌朝にかけて晴れていくとの予報がございます。一足早い梅雨の気配ですが、明日の太陽を心待ちに那覇の夜をお過ごしください。また、ベルト着用サインが消えるまで、お座りのままお待ちください。上の物入れを開けた際に手荷物がすべり落ちるおそれがありますので……」
滑らかな機内アナウンスが続くに従って意識が現実へと浮上してくる。
そうか、雨が降っているのかと外を見れば、銀糸のように細かい雨の中、ヘルメットを被ったグランドスタッフが誘導したり、貨物コンテナを載せるための連結した車を機体へと寄せていたりした。
――ああ、空の上での夕日を見逃しちゃったな。
(調子に乗ってスパークリングワインを三杯も飲んだから)
それにしても、20度で肌寒いとはさすが南国だなと思っていると、隣で人が動く気配がした。
横目で見やれば、超絶美形のイケメンがつまらなさそうな顔でシートベルトに手をやっていた。
(あー……)
気まずさに目を逸らす。
今思えば、彼に対しても可愛げない態度を取っていたと思う。
ハッキリ言って思い出すのも恥ずかしい黒歴史ではあるが、やらかしたのは千秋が先で、彼は被害者だ。
トラブルで頭が混乱していた上、触っていた場所が場所だったために思考停止している中、痴女呼ばわりされてカッときたが、彼の立場からすれば、そう口走り怒るのも無理がないと気付く。
後悔と反省がない交ぜになった感情が、じわじわと胸の奥から湧いてきた。
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