君の声が聞きたくて

誠奈

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第26章  番外編☆dolce

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 予定通り駅に到着した電車に乗り込み、二人がけの座席に並んで座る。

 「荷物、棚に上げようか?」

 自分の荷物を頭上の棚に上げ、翔真さんが手を差し出して来る。

 そんな大した荷物でもないし、手元に置いておいても邪魔にはならないけど、俺は迷った挙句、リュックを翔真さんに向かって差し出した。

 「じゃあ、これお願い」
 「OK……つか、荷物これだけ?」
 「え、何で?」
 「いや、泊まり……だよ?」
 「うん、分かってる……けど?」

 シレッと答える俺に、翔真さんが呆れたとばかりに口をポカンと開けた。

 「あの……さ、着替えは? 下着とかさ、必要だろ?」
 「下着はちゃんと入れたし、着替えは別にこれ着れば良くない?」


 この季節だから、どうせ汗もかかないことだし、替えのパンツさえあれば事足りると思うんだけど……
 必要なら買えば良いしね?


 「つか、翔真さんが荷物多すぎるんだよ。たかだか一泊するだけなのに……」


 ただでさえでっかいボストンバッグを更にパンパンにしちゃってさ……
 一体何日分だよ。


 「俺は、替えのシャツが二枚だろ、それから替えのスーツと、あと寝巻きと、下着と靴下は……」


 あは、ははは……、そんだけ入ってりゃパンパンにもなるか。


 「あ、翔真さんこれ……」

 俺はポケットの中に入れていた缶コーヒーを取り出し、一本を翔真さんに差し出した。

「ちょっと冷めちゃったけど、ごめんね?」

 もう少し待ってから買えば良かった、と後悔したって仕方ない。

 「別に構わないよ。それに智樹には少しくらい冷めてた方が良いだろ?」
 「まあね……」


 ……って、流石に缶コーヒーで舌火傷したことはないけどね?


 「よし、じゃあ一応乾杯でもしとく?」

 俺の分の缶を開け、続けて自分の分を開けた翔真さんが、軽く缶を持ち上げる。
 そして、何に乾杯するのかは……正直分からないけど、俺達はカツンと二つの缶をぶつけ合った。
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